私の誕生日よりも、ちょうど1週間前の話。


その日は、朝から憂鬱だった。


今日から、旅行に行くというのに、

好きな人からの連絡が

イマイチきちんとされておらず、

曖昧な予定の立て方にイライラしていた。


朝は、きちんと会社に行った。

午後からは休暇。


朝のとても憂鬱なミィーテイングを終え、

一端、自宅に帰宅した。


段取りは悪かったが、

好きな人が車で自宅まで迎えに来てくれ、

旅行先である港町に向って、車は、走り出した。


宿泊先のホテルに着く前に、

「当たり前のところ」に行って、

広い公園をお散歩したり、

歴史のお勉強をしたり。


夕方まで、時間を過ごした。


ホテルはエレベーターからは遠かったが、

角部屋で、素晴らしい港町の夜景を

思う存分楽しむことが出来る、

窓の大きなお部屋だった。


好きな人に会ってから、

ケイタイの電源は切っていた。


恐らくメールが来ても、

そうちゃんぐらいである。


相手がそうちゃんであろうと、

好きな人はケイタイをチェックしている

私のことは気に入らないであろう。


そう言われた訳ではないが、

私は、そう思っている。


腕時計をしない私は、

ふと、ケイタイで時間を見ようと思い、

ケイタイに電源を入れた。


電源を入れた途端に、

数件のメールが届き、

ケイタイが光っていた。


私のケイタイは、受信する人によって、

受信中のケイタイの光る色が違う。


しかし、受信してしまえば、

誰からのメールも同じ。


「受信してるよ~メール」という意思表示を

ブルー光の点滅が表す。


どれもこれも、ブルーに光る。


電源を入れた途端にメールが届き、

メールを受信する瞬間を見た。


誰からのメールなのかは、

定かではなかったが、

そうちゃんからのメール受信を

知らせる色ではなかった。


そうちゃんじゃないなら、

F子かさとみっちかな・・・。


しかし、メールの相手は、

意外な人だった。


二度とメールの来るはずのない人だった。


少なくとも1年前に、

その人は、私には、

「メールを送ってくるな」そう言った。


「死ねばいい」そうとも言った気がする。


私をちょうど一年前に

捨てたオトコからのメールだった。


詳しく読まなくても、

字面を見て、何が言いたいメールなのかは、

瞬時に分った。


メールを開いて、2秒、

削除した。


沢山の宛先の中の1つが私なのだが、

他の宛先の人達は、みんな私の嫌いな人

ばかりだった。


そして、その中の一人が、

そのメールに対して、

全員に対してメールを返信していた。


好きな人と一緒の時でよかった。


そう思わずには、いられなかった。


そうでなけれれば、

きっと泣いてしまっていた。


こんな下らないことに。


そう思って、好きな人に、

ぎゅ~とくっついた。


そして、夜景を見て、観覧車に乗って、

手をつないで港町をお散歩した。


ずっと、ひっついていた。


怖かったから、

そして、今、この人が好きだから。



それから、3日間、

変なメールは続いた。


2日目からは、返信をしない私への

名指しのメールが届いたが、

ずっと無視した。


色んなことを思い出そうとしている自分がいたが、

結局、何も思い出せなかった。


今、自分の築いてきたものに自信と誇りを持っているし、

あれから、私は何一つ恥じることはしていない。


私の一番大切なものは、

今、この手の中にある。


何も失ってはいけない。

この手の中から。


そう思って、記憶が薄れていくことを、

喜んだ。