大掃除今年も終わりません。
それはそれとしてとても落ち込んでいます…まだ77歳ですよ、若すぎますって。
あの時無理にでも「御存鈴ヶ森」観に行けたら良かったのに。
子供の頃は週の半分くらいは祖父の横に座って何かしら時代劇やら大河観る生活していたので。大河で言うなら丁度「秀吉」とか「元禄繚乱」とかそんな昔の話です。
もうその祖父もとうに故人、色々思い出されるなぁ。
子供にも優しくて分かりやすいライトなポップ路線だと水戸黄門や暴れん坊将軍、遠山の金さん、銭形平次、本格派というかあんまり子供に配慮がない路線だと大岡越前や鬼平犯科帳、と当時観ていたあたりだとそんな感じかな。大人になった今改めて見るとまた感じ方も違うんだろうけど。雲切仁左衛門とか剣客商売に触れたのは大人になってからだったっけな。
長谷川平蔵こと鬼平が、火付盗賊改方として同心や目明し使って江戸の町を跳梁跋扈する盗賊を捕縛する悲喜交々の時代劇です。
「盗賊団に一人いる善人寄りの心を持った下っ端は通報を決断、したかと思ったら次の朝には浮いてるor引き上げられて菰被せられた遺体で発見」、とか「大店に最近入った雇人は盗賊団の下っ端で引き込み役、裕福な商人一家は運よく押入れの中なんかで難を逃れた幼子一人残して皆殺しの憂き目に」、とか「献身的な娘と細々暮らす老人は実は元盗賊の大親分、今は引退して久しいけれど娘が誘拐されて脅迫され、最後の仕事を決意」、とかこの辺りのあるあるだなぁ~の時代劇の様式美は大体鬼平だってイメージが。
盗賊団はエグいし、捕まれば大体打首獄門、そんな連中を取り締まる鬼平の顔がまことに優しいのが良いですよね。あと平和な日常パートだとちょっとコミカル。そして蕎麦屋がやたらと美味しそう。寒い時に湯気出てるといつ見ても良いなァ~って思います。エンディングの音楽に江戸の情景がまた良い。毎回蕎麦屋見てる気がしたけどあれエンディングのせいですかね。映画の蕎麦屋は道場六三郎でした。
盗賊や関係者でも何かしら汲むべき事情がある者には、鬼平が救いの道を用意してくれる人情味もまた良い。
シリーズの中で特に好きな話は、コミカル色つよめな「密偵達の宴」です。目明し主人公回。
先々代松本幸四郎版、丹波哲郎版、萬屋錦之助版の鬼平を知らない私には、吉右衛門さんの鬼平だけが鬼平でした。この先どんなリメイクが現れても変わらないだろうなぁ。
「鬼平犯科帳 劇場版」(1995)
・長谷川平蔵
鬼の平蔵略して鬼平。
(生育環境が複雑すぎてグレ、)昔はヤンチャしてた。
自分の品行方正とは程遠い若い頃があるからか、嫡男はやや放任ぎみ。本当に悪い事はしないからマァ…と様子見している息子は、平蔵の元カノの厄介に巻き込まれかけてた。
流石に放任しすぎでは。
ドラマ版でも妻にぢっと見つめられてタジタジになったりなかなか可愛らしいおひと。
・久栄
平蔵の妻。
息子の素行不良が気になってこの度やって来た。
息子の部屋に入ってエロ本発見、母上様、やめてあげて…!
・辰蔵
平蔵の嫡男。最近素行の悪さが目立つ。目白台の辰。
美人なオバ…おねぇさんに声かけられてホイホイされた。その人は親父殿の元カノだ!
盗人宿への出入りが父にバレ、結局美熟女にはサイナラの手紙を出した。
歳の差を考えるのをやめた私。
・おまさ(社会への恨みでギン萬事件に息子を巻き込んだ)
元は盗賊団狐火の下っ端、から更生して目明しとして平蔵の下で活動中。
平蔵も単なる雇い主以上に好きだけど勇五郎も愛して庇うのがちょっと客観視できなくなってて鬼平的にはなぁ。と言う事で結婚退職を認められ上方で仏具師の女房として、三ヶ月だったけど幸せに過ごしたそう。
夫と死別して江戸にもどって元の職場に再就職。
敬愛する上司(なんなら子供の頃から顔馴染みのお兄ちゃん)に「もう嫁にはやらん」って言われてちょっと嬉しい。
・荒神のお豊(兄と息子の間に居座ったお東、日本看護師連合会名誉会長)
美熟女。ヤンチャ時代の平蔵の元カノで色々あって別れたけど複雑な気持ちを拗らせたまま30年超?位?経った模様。
表向きは見世物小屋の女主人。正体は盗賊団のお頭。
・小房の粂八(福島正則、志穂ちゃんの相棒、京都地検の刑事部長)
旅籠鶴やを拠点にする目明し。
・相模の彦十
・大滝の五郎蔵
同じく目明し。
彦十さんは気の良いじいちゃん、五郎蔵さんは渋いイケメン。
・佐嶋
・天野
与力。同心より格上。
・酒井(テキサス)
・木村(幼馴染が時を駆けてた吾郎、MRIの磁力で左目撃ち抜いて自殺した北山審議官)
・沢田
・秋本(浪人生達に遊びで誘拐された副総監殿)
・原田
・岡村
鬼平配下の同心達。ドラマ版からほぼ続投。
・勇五郎(歌手だと思ってました…あんたのバラードとか親が聴いてたもんで)
狐火二代目で足を洗う前のおまさの元カレ。
盗賊だけど押し込み強盗とか皆殺しとかそういう非人道的な事は先代同様しないタイプだそう。
利き腕一本と引き換えに鬼平から更生を認められ、おまさと結婚して上方へ旅立った。
・瀬戸川の源助
盗賊団狐火の顔の知れた右腕。源助と言えば狐火が!とピーンとくる程度には知名度ある模様。
表の顔としては茶店を開いていて、地下に勇五郎をかくまっていた。
・文吉(長靴に万札隠してるあさひ屋のマスター、サラリーマンの悲哀漂う海老名先生)
勇五郎の異母弟。
跡取りになれなかったことを怒って勝手に分派。一門の名を騙って皆殺しの押し込み強盗を働いた。
勿論とっ捕まって市中引き回し&よくあるアレ。
・白子の菊右衛門(主水さん)
大阪では手広くやってる香具師の元締め。ヤーさんみたいなもんだね。
荒事系で、今回はお豊と業務提携。
・沖源蔵
菊右衛門の下にいる凄腕の剣客(の筈)。
平蔵に割と一瞬で斬られてたけど。
・吉五郎(「うーん」しか言わない旧家の当主、連続殺人に妻を紛れ込ませた遺族の三島)
お豊の手下。
・百蔵(のぼうの父上)
お豊の手下。
話は繋がってるけど二部構成みたいな感じ。
前編はヒロインおまさの愛、後編はお豊のこれもまた一つの愛、みたいな。
おまさが狐火の勇五郎の右腕源助を目撃してても平蔵にご注進しないのは元カレへの愛故、でも今の仕事は盗賊を見張る立場の情報屋…と言う事で、恩ある平蔵への忠義に悩むおまさ。
粂八はおまさの背中を押しつつまぁ当然だけどしっかり平蔵には報告済み。
おまさは勇五郎(まだ独身)と再会して元鞘…元鞘か?うん、元鞘に。
その晩、大店の薬種問屋で狐火の手荒な強盗事件が発生して、鬼平あるあるの大店一家従業員皆殺しに。
平蔵が同心らに狐火の表に出てる有名人関係者源助のヤサに向かわせるけど、おまさが中にいるの知ってるから、敢えて「探るために中に入れてる」事にしておまさに関しては保護を要請するのが素敵ですね。機転が利く流石お頭。
火付盗賊改方の同心が来た事察知していきなり自爆する源助。
今は盗賊働きしてない狐火の二代目かくまってたくらいで何も死なんでも…とは思ったけど、とっ捕まったらそれなりの詮議で過去の働きのせいで下手したら源助ごと死罪なんだろうし頭を逃がしたい故の忠義だと思えばまぁこれもありなのかな。
粂八の鶴やに様子見にやって来たらやっぱり待ってる平蔵。
狐火の勇五郎じゃなくて、その弟のやった悪事だからと勇五郎をかばいつつ、文吉一味の捕縛をお願いするけど、まぁ当然指示を仰がない単独行動と勝手な判断なんかをド叱られ、失せろとまで言われるおまさ。
勇五郎に繋がる情報を握りつぶしたりしてこれまできちんと働いてた信頼を先に壊したのはおまさだからなぁ。肝心な時に勝手な動きする目明しは、いかに事情や思い入れがあってもまず叱り飛ばさないと規律が緩んで目明しのシステムが崩壊しかねないからなぁ。
勇五郎とおまさが文吉の根城に突撃してもそりゃ二人VSいっぱいじゃ勝ち目も無く。
って時に私服で駆けつける鬼平と同心たち。
ごろつきはまぁザシュっとさよならして、ボスの文吉は(無傷じゃないけど)生け捕り。
おまさと勇五郎は平蔵のお情けで堅気になる事を約束させて内々に江戸所払い。激甘!
証文として右手を貰ったけどそれでも助命して目明しの任務からも解いて、やっぱり激甘!
江戸から立ちされだの二度と顔を出すなだの言いつつも平蔵の態度がまた優しい。
彼の手首が切り落とされてもお釣りがくるくらいのお頭の恩情に感じ入るおまさは勇五郎と上方へ旅立っていきました…。
…と場面は変わって、婀娜っぽい姐さんが平蔵への恨みつらみを呟きながらお化粧中。平蔵ってお豊の元カレなんですね。
平蔵への憎しみを募らせて、平蔵絶対殺すマンの白子屋と業務提携するお豊。
菊右衛門は直接分かりやすい刺客を送り込んで来てさくっと平蔵に返り討ち。
お豊の方は平蔵の息子辰蔵をロックオン、恨みを晴らすって息子の闇討ちか!?と思ったら普通に誘惑してて、辰蔵の方もクラクラっと誘われてて、いや相当な美熟女だし、わかるけど、わかるけれども!
昔平蔵に囁かれた言葉を辰蔵に喋らせてうっとりするお豊は…愛憎って言葉以外見当たらない、難しい女性だなぁ。
辰蔵でささくれた心をほんのちょっと慰め(になってないけど)たお豊は、同心岡村の妻女を殺害して、平蔵の役宅の門番も惨殺、おまけに町に放火、と平蔵への嫌がらせムーブ開始。賊徒を鎮圧できないようなら平蔵が失脚するに違いないって結構遠いところから狙って来るなぁ。
それにしてもこの犯罪者の暴れっぷりはまさに鬼平。
次から次へと忙しい平蔵の所に、流行り病で新婚たった三ヶ月で勇五郎を亡くしたおまさが再就職願いにやって来たもんだから、おまさの不幸に同情しつつもそらもう嬉しそうに快諾する平蔵。
おまさから菊右衛門ーお豊の情報もらって、あぁ~!あいつかぁ!!な心当たりバリバリな平蔵。むかし綺麗に別れなかったからか、それともそもそも愛が重すぎる女性に手を出したのが運のツキだったのか、アチャー!じゃ済まない惨事になってるんだけど。門番はまぁお役目での殉職だけども、岡村さんの奥さんの件はマジで気の毒。
そしてお豊はダメ押しで、配下に平蔵の妻子を襲撃させようとするけれど、邸はもぬけの殻で、屋根の上に潜んだ笛を持った目明したちに逆に来たぞ来たぞと平蔵まで連絡される始末。あちこちでピィピィ鳴ってるけど特にお豊の手下は呼子についてはノーコメント。同心たちがワラワラ湧いてやっと万事休すを悟るけど、遅いんだよなぁ。
同心たちに交じって不肖の息子目白台の辰も参戦してたわ。父親は火付盗賊改のトップだし、母と姉妹を守るためだし役も無い嫡男だけどその辺は融通きくのかも。
手練れ手練れと有名らしい剣客の方の源蔵(同心にも源蔵さんがおる)は相対した平蔵にバッサリ切り捨てられてた。父親の能力と威厳を息子に叩き付けられて良かったなぁ。
お豊の見世物小屋も同心が駆け付けて、どう転んでも捕縛か切り捨てかって感じに。
一人で入って来た平蔵に切りかかるも、結局はあの、辰藏に何度も言わせた懐かしい言葉をかけられて、スン…と憑き物が落ちたようにおとなしく投降するお豊。
身代わりじゃなくて平蔵本人に言われることで諦めがついたというか、納得したというか、思い残すことも無くなったようで、同じ捕まるにしてもこれは良いけじめのつけ方。
堂々と投降ってのがその辺の三下どもとの格の違いを見せつけてくるなぁ。
尺の為か二部構成みたいにになってたのが、少しだけ残念かなと、ケチ付けるなら本当そこだけ。二つの話を突っ込むには時間が足りないというかギッチギチに詰め込まれてるなという感じがどうしてもしてしまう。
前半のおまさ勇五郎のエピソードは調べたら1989年放送の第一シーズンのエピソード「狐火」のリライトそのものではあるみたいなんですけど、他にもドラマで映画サイズに膨らませそうな鬼平らしい良い話が沢山あるので、そちら下敷きにしたりリライトでもよかったなとは思いはします。二話分ギュッと詰め込まんでも、みたいな。二人の美しい女性の性格や立場の違いの描き方の対比は素敵でした。
何も知らない子が観ると多分、徐に勇五郎の手を切り落とした鬼平にドン引きするんだろうなと思うんですけど、ある程度シリーズ嗜んでると、手ひとつで内々に済ませて不問にした挙句、結婚まで認めてくれるなんて、なんてお優しい!となるんで、これは本当にファンには分かる良いシーン。
はじめて見たのが子供の頃だったので、お豊の(当時はそんな言葉も無かったけど)ヤンデレっぷりは理解不能だったけど、大人になっても、理解はしても共感までは出来なかったな…それでも、思い残すことのなくなったふっとした顔つきが素晴らしかったと思います。
時代劇はフィルム時代が一番良かったな。仄かに画面が薄暗くて解像度もほどほどで。
デジタル時代になったら、画面がくっきり明るすぎるんですよね。そもそも最近は時代劇自体殆どつくられなくなりましたし、こういった見方にも是非あるでしょうけど、なんか単なる懐古じゃなく何か良い物も失われちゃってるなと。