「マスカレード・ホテル」(2019)

 

原作小説は「~・ホテル」と「~・イブ」のみ読破。新作の「~・ナイト」はまだ読んでません。文庫本化してないし。

 

殺人事件三件が相次いで起こり、Aの現場にはBの座標、Bの現場にはCの座標、Cの現場にはコルテシア東京の座標、とまるで予告してるかのような暗号が残されて、連続殺人だ!今度は防げる!と沢山の警察官が東京の格式ある高級ホテル・コルテシア東京へとドヤドヤやって来ます。

 

・新田(ハウル)

刑事らしくないビジュアルと英語力を買われて潜入捜査に参加する羽目になった。

英語力がモノを言わせるシーンはそこまでなかったけど、自由なチャラいカッコからポマードで撫でつけたようなオールバック、ボタンは一番上までしっかり閉めて、とビシィ!と矯正されるシーンは俳優さん自身のスカしたイメージと相まってなかなか笑えた。

ちょっとまえの検察側の罪人よりは似合ってた…けど、もうちょっとドンピシャな俳優さんでも良かったんではと思わなくもない。及第点以上だからこれ以上望むのは贅沢なんでしょうけども。

ちょっとしたことを気にして後からちゃんと気づけるので、刑事としてはとても有能なところ。

 

・山岸(きり)

フロントクラーク。憧れのホテルに入社してバリバリ仕事をする彼女にとって、チンピラみたいに柄悪な刑事たちがドヤドヤやって来て一流ホテルの訓練された一流スタッフに紛れ込む作戦聞いた時のストレス考えると察して余りあるわぁ。新田さんあんまり言う事聞いてくれなかったしね。

 

・稲垣(張込時の冗談を真に受けて柴田がオムツして来てドン引きな真山さん)

捜査一課長。

新田にめっちゃ当たり厳しい上司。

単独行動が目立つとかそういう説明もなかったし、なぜこうも目の敵にされてたのか。

 

・関根(婚約者の敵を取ろうとした鈴木君)

新田の後輩でベルボーイ。子犬のようなつぶらな瞳。

原作より出番が多い気がするけれど、制服で目立つからかも。

 

・能勢(八つ当たりに耐える末次さん、脳筋勝家に頭が痛い常識人丹羽長秀、絶頂から奈落まで表現できない程すごい秀吉公)

元相棒なのになんでこうも良くしてくれるのか。

品川警察署所属でマイペースなおじさんだから一見侮られがちだけれど、彼と組んだ若手は軒並み手柄を立てるすごい刑事。

娘が彼氏連れてきちゃったよ…!

原作読んだだけだともっとのほほんとしたぽっちゃりさんなイメージがあったけど、いいじゃんコヒさん!

 

・本宮(平宗清、言葉が荒い陪審員7号)

新田に割と友好的な一課の同僚。

お客としてうろうろする潜入の方がホテルマンなりすまし組よりだいぶ楽な気はするけど、服替えたり、居場所を変えたりと考えることは多そう。

 

・藤木(部下とアレな関係になってる氷室社長、司法の良心三雲判事)

現総支配人。高級ホテルプライドの素晴らしい仕事ぷり、仕事への熱意は山岸さんがコルテシアに就職するきっかけになる。

警察の捜査に協力的。潜入捜査にぐちゃぐちゃ不平不満をこぼすスタッフをなだめるカリスマっぷり。こういう人の下で働けたら幸せなんだろうな…。

 

・久我

新田さんがなんかやらかしはしないかヒヤヒヤが止まらないマネージャー。

お疲れ様です。

 

・田倉(情けないし小人物な所も多かったけど死に際がとっても印象的な平宗盛)

総支配人の脇に控えてたりするから、宿泊部ってやっぱりポジション上なのかしら。

 

・尾崎(会議メインだとそら冒頭で本能寺だよね、鼻が目立つ信長公)

管理官。

警視庁の偉い人ってやっぱり同時に沢山の事件を抱えてるからそんなしょっちゅういる訳でもないのね。

 

・片桐/長倉(初登場シーンに割と無理がある茶々、エルサ)

一人二役(ネタバレ)

ターゲットは山岸さん

復讐を決意するに至った事情は同情するけれど、正直仕事を完遂したスタッフへの逆恨みでしかないのがなぁ。自分を捨てたDQNに復讐しちゃったしもう振り上げた拳の下ろしどころもなかったのだろうけれど、ギリギリのところで新田さんに取り押さえられて、これ以上の罪を重ねずに済んで良かったと思う。

 

・安野(商才持ちウェイな乙姫、婚活詐欺業者に土下座させた女王様白鳥さん)

ストーカーにマジで迷惑してるんでー!こいつ近づけないでもらえますー!?とものすごい剣幕と迫力の美女。

実は逆ストーカーというか、逃げ回る夫の不倫の証拠を抑えたかっただけの常識人

彼女の今後に幸あれ。

部屋を教えちゃってあわや!だったけれども、ストーカーじゃなくて本当に良かったね。

 

・館林(モンちゃん)

嫁さんに不倫を抑えられたごっついおっさん。

 

・栗原(赤ん坊の扱いがお上手な夜逃げ屋唐松さん、亀山の友達でシリアルキラーだった朝倉)

新田さんに因縁つけて過剰な要求をしまくるモンスタークレーマー。

正体はかつて高校へ教育実習に来て、帰国子女の新田君に大恥かかされてクラスのさらし者になりトラウマ受けて教員試験すら断念した教育実習生

塾講師も辞して帰郷することにしたらしいけど、今後に幸あれと言いたくなる。トラウマの原因とも向かい合って和解したんだから、もう悩むことなくやりたいことをやり直せればいいと思う。

 

・高山(センターさん)

コルテシア東京で挙式する新婦さん。

元彼がストーカーかしてるくさくて、ホテルに友達を装った送り主からワインが届いたり何かと不穏な気配。

 

・男

女装までしてホテルに潜り込んだ。

実はストーカーでも何でもなく、金で長倉に雇われた陽動の為のミスディレクション

ストーカーに怯える前田敦子のリアル旦那だと思うとなんかキャスティングが面白いw

 

・古橋(重綱/重長の方の小十郎、プロファイラー桐島となんだかんだで協力できる真田班長、実はバツイチ沙村さん)

ちょう厄介なヤカラ。

ホテルの高級な備品をちょろまかす疑い濃厚な前科があり、今回もひと騒ぎ起こしてホテルからの「誠意」を声高に要求しようとしたけども、新田さんの機転で目論見が外れて逃げてった。

…ヤカラにしか見えない、俳優さんてすっごいなぁ…。

 

・大野(勘助の養父勘左衛門さん、お手本みたいな鳥居元忠、天地人でも秀吉公やってたっけ…酷過ぎて脱落したもんであちらはウロ覚え)

声がでかい厄介なお客様。コルテシア東京を定宿にするじいさま。

凄い立派なホテルに何度も泊まってる自分がVIPだとつい思う気持ちはわかるけど、あの横柄さは良くないなぁ。一線を越えない限りはどんなことを言われても、お客様を宥めて要求を受け入れるホテル側のスタンスや懐の深さを視聴者にバーンと分からせるための役柄。

 

 

…よし、これなら問題あるまい笑。スマホからはメモ帳にコピペすれば見えるかな?

ホテルを後にするお客様方すべてに「今後に幸あれ」とコメントしてあげたくなる一癖・二癖が、見た人ならわかってもらえると思います。

人生上手くいってなくてもコルテシア東京にチェックインしたら最後、「いってらっしゃいませ」と送り出されれば憑き物が落ちたように新しい自分が始まる…かもしれないすごいホテルです。

 

ストーリーは良くも悪くも原作通りなので、原作読んで備えてた人にはもしかしたらつまらなかったかも。私自身はストーリーへの驚きはなかったけれど、高級ホテルのバックヤードがものすごく興味深くて、ビジュアル化したことで新たな発見もあって、全体的にはなかなか楽しめました。

実を言うと学生時代某ホテルの宴会スタッフバイトしてたので、業務用エレベーターのあの感じ、式場周辺の裏側や従業員用ロッカーの雰囲気は知ってはいたのですが、宿泊部はああなってるんだ!レセプションの裏ってああいう感じで入れ替わるんだ!客室はああやって管理してるんだ!と社会見学させてもらった気分。…まぁバイトと言ってもホテルが式場スタッフをまるっと別会社(事務所も職場もホテル内)に委託してる形態だったので、高級ホテルの正社員スタッフが行き来する裏側ってのはまた勝手も違っているのでしょうが。

宴会スタッフの身分でも県人会やら結婚式やら○○を囲む会やら割と変わったお客を見聞きしたので、フロントスタッフや客室係ともなるともっとスゴい体験してるんだろうなぁ。

 

面倒な客が次から次へやってくる辺りは真面目な有頂天ホテルという感じ。

 

…原作通りとは言いましたけれど、監督の拘りなのか、ラストの仮面舞踏会シーンはまぁ若干とっ散らかるのでいらないかな…と私は感じました。

解決してあのでっかいコルテシア東京から立ち去ってくところで完、で良かったのに?と思わなくもない。

 

事件のカギはホテル・コルテシア東京のペーパーウェイト。映画グッズとして販売されているどころか、コルテシアのモデルになった実際のホテル、「ロイヤルパークホテル東京」でもコラボメニューやプランは兎も角、公開直後は一時期例のペーパーウェイトを販売していたとか聞いてちょっと微笑ましい感じ。

 

 

私、温泉とか、懐石料理とか、そういう布団文化の旅館の方が好きなので、御三家レベルの超高級ホテルは泊まったことないのですが…それでもむかーしむかし、平城宮遷都1300年の時奈良ホテルに泊まった事があって、あれはとても良かったなぁ…。

当時は無かった「日本クラシックホテルの会」なる企画もあるそうですし、あちこちのホテルにも一度くらいは泊まってみたいところです。三年で四か所泊まるとか結構ギリギリ難しい所突いてくるので、たぶん想定している対象はリタイアして時間もお金にも裕福な中高年なのかなぁ。

東京遠征の折東京ステーションホテルの地下一階でランチしたことはあるんですけれど…そうホイホイあんな贅沢を味わえるような身分じゃないもので。