「十三人の刺客」(1963)

劇場で観たのに、更に二回レンタルした程気に入った2010。
リメイク元の1963を観てみました。

取り敢えず全体的に昔の方がグロさが激減してる感じはする。あと発音の微妙な違い故か映画の古さ故か不思議と台詞が聞き取り辛いので、2010年版みたいに人物初登場の所には名前が出ると分かりやすくてありがたい。……白黒だし役者も昔の方ばかりで顔がイマイチ分からないから、声で判別する他に人物誰が誰かいまいちよく分からないんだもの(´・ω・`)

リメイクってすごい!寸分違わぬシーンが1963版にもあって、なんかちょっと感動しちゃった。これデジタルリマスターなんかしてカラーにするだけでも映画館で払う1800円以上の価値出るよぉ!
「史上最大の作戦」でも軍服の色とか色々ミスがありつつもカラーで再現した位だし、需要さえあれば資金的にも簡単にできちゃうんでしょうね。

1963と2010の目に付いた違い…のつもりで書いてるけど、何度か観た2010も昨日今日ってわけじゃ無いからそこここで記憶違いがあるかもだけど。
2010を観た後の視聴なので、変更点の感想の時系列が逆転してますけども、悪しからず。

間宮図書の大写し自害シーンなし
島田新左衛門ののんびり釣りシーンなし
馬鹿殿による牧野采女の殺害方法があっさり太刀投げつけて刺し抜くだけにチェンジ…基地っぽくざくざくしないのね
舌を抜かれ手足を切断された哀れな名も無い娘が存在ごとカット、なので「みなごろし」の紙も無し
馬鹿殿による間宮一族へのドン引きしたくなる射殺シーンの生中継なし
こいつやべぇ…をさらに印象付けた、御膳をぐっちゃぐっちゃにして手づかみでご飯食べる馬鹿殿のシーンもなし…あれすごいよね、脚本込みでお気に入りのシリーズな金田一を演じてる稲垣さんを改めて再評価だったわ。
襲撃に失敗作して平山に返り討ちにあった出口と千田の死体を鬼頭達が検分するシーン追加…な気がするうろ覚え、ここ2010にあったっけ?
佐原が二百両おくれ!という下りで、『周りの人を喜ばせるのも煎じ詰めれば、生涯に一度金で横っ面を張りたい気持ち』なんてちょっと捻った感ある動機に言及
甥新六郎が三味線を弾き猫を愛でる 、さらに新左衛門まで三味線掻き鳴らす…良いねぇ
新六郎が一行に加入する気になった切っ掛けが微妙に違う気がする、リメイク版じゃ賭けがどーのこーのと言ってた覚えが
落合宿の遥か手前で出発直後に川を渡ろうとする行列を狙うシーンがある
今が出発から何日目か、さらに一行が何処にいるか実況中継付き、分かりやすい…けど雰囲気はぶち壊しかも
三班に別れたそれぞれのチームが山やら街道やらを走りに走るシーンなし
落合宿の手前で本隊が襲撃されるシーンがない
小弥太が山の中で罠に掛かってる訳でも無い
そも、「サンカの」小弥太じゃない
落合宿の庄屋が金でホイホイお願い聞いちゃうシーンもなし
完全にネタに走ったと思われる小弥太と庄屋さんのアッー!はやっぱりないwあれ、何だったんでしょwどこぞの官房長が掘られてて誰得というか、映画館で親と観ててちょっと困った。
木曽上松陣屋詰牧野靱負の切腹シーンなし、切腹には言及されるけど
小弥太は法師もどきなのか?落合宿の住人だった
新六郎が小弥太に反感に近い感情を持ってるような描写も特になし
お艶とウパシは一人二役じゃない
ウパシなどいない、というかサンカでも無い普通の落合宿の娘さん、加代だった
出自の違いからか?鬼頭と決定的に仲悪い明石藩士がいるしやたら目立つし
剣豪九十郎と新左衛門のシーンが増えた(気がする)代わりに、九十郎と庄次郎の師弟シーンは無くなった…リメイク版の師匠「後ろに抜けた奴を斬れ!」ってすごく好きなんだけどな。
大名行列が早朝着いたら取り敢えずいつもの日常平和な落合宿、なシーンはない、すっぽんぽんの子供を見てここでたった一度だけ鬼頭がうっすら微笑むのに。あっいち私人としては悪人じゃないんだ…ってシーンなんだけどな
他藩からの応援(だったっけ?)で無茶な人数に膨れ上がった明石藩などいない
当たり前だけど、火攻めとか大掛かりに動く壁で派手に戦力分断とかそういうのはない、でも罠のバリエーションは無理のない範囲でなかなか豊富
剣の師範まで弓でちまちま射かけてる?えっ?遠景からだと髪型的に槍名人と区別つかないからここは間違ってるかもだけど
木の柵目掛けて抜き身で大量に殺到する御徒や騎馬。危ないなー
初手がちまちま矢を射るか槍で突き殺すの攻撃だから、まー数が減らない減らない
割と混戦になるまで最前線にはでて来ない新左衛門
馬鹿殿は「下郎めー」「ぼくは将軍の弟だぞー」しか言わない何の哲学もないただの馬鹿でがっかり、基地くささもないただの馬鹿でがっかり
馬鹿殿はあっさり背中切られて鬼頭に先立っちゃう……そこは殿守らないと、家臣としてさ
…ので、小弥太が殿の手づから小太刀を賜った?wシーンも無し
…ので、馬鹿殿による鬼頭の首で世紀末サッカーするシーンも当然無し
新左衛門が鬼頭と対峙する際、まずわざと刺させて仲間に背後から射殺させるあたり、武士
の対面立場ってものを押し出してたリメイク版とは、立ち回り含めかなり違う感じかな?
一人一人の戦闘のピックアップがないからか、一行の島田新左衛門・島田新六郎・倉永左平太・平山九十郎以外の9人がほぼ目立ってない
事が成った後も生き残ってたのに刀折られたらあっさり逃げ惑って背中斬られて血を吐いて死んじゃった九十郎、リメイク版の、最期は拳まで使って戦って死んだ彼の方が私は好み
死ぬ時に周りの仲間に名前を叫んでもらえなかった人は、正直何処で死んだかも良く分からな…うん、えっと、仕方ないよね?と思いたい。マジで何時の間にか死んでたなぁ、と。
襲撃の刺客一行も2010以上には生き残ってる、のは確かなんだけども、最後に仲間の死体の大写しなんかが無いからイマイチ誰が死んで誰が生き残ったのか(私には)確実には分からなかった
倉永と…新六郎と…日置は生存、間違いない。小弥太って生きてたっけ?弟子の庄次郎は師匠が斬り殺される直前にあれ?と思った所で斬られて死んだ?生きてる?壁に凭れて立ってるままだし、いまいちよく分からんなー。
多分死んだだろう新左衛門、事切れるシーンは無し
明石藩の唯一?の生き残りが発狂して笑う所でシーンとしてはラスト


結論的には私が現代人だからか、リメイク版のが好みでした。兎に角大量に武士投入して大掛かりにちゃんばらしてれば良いってもんじゃないよね。
新左衛門と鬼頭の対決シーンで語られた武士の哲学というかお互いの立場だってきちんと納得いく理由で頷けるし、十三人いてもきちんとそれぞれに見せ場があるのがとても良かったしなぁ。
家臣である以上たとて弩級の馬鹿殿でも殿であるから仕えなかん!て、立場故に義無くても新左衛門と戦う鬼頭…な描き方されてるリメイク版は鬼頭の微笑みシーンとあいまって、鬼頭に対するある種の好感さえ生まれる。まぁ主人公サイドからしたらやっかいな強敵なんだけども。
馬鹿殿にしたって、基地じみた乱行をこれでもか!と沢山視聴者に見せた上で「人死にがみたい!戦の世カムバック!うひゃひゃ!」なんて事を言わせているから余計この殿に対する底しれない人としての違和感とか気持ち悪さとかをアピールしてて、ただの馬鹿殿じゃない基地殿の厄介さが良くでてるっていうか。更によく仕えてくれた鬼頭の首おもちゃにするしね、リメイク殿。
いざ斬られると、泥水のなか這いながら「痛ぁい!死にたくなぁい!」がまた良い。基地めいた根っからの悪が死の間際に改心して潔く死ぬなんて、美しくないしあってはならない、ストーリーとして駄目すぎると思います。手垢が付くほどベタベタな筋だし。やっぱり最期まで悪は悪のまま、毛ほどの同情心も起こさせない為にはこうじゃないと。素晴らしいね!と絶賛したくなる一つのポイントはここ。
それから一瞬誰おま状態に陥る生き残り明石藩士の高笑いじゃなくて、新六郎がお艶の所に帰ってきた事を匂わせるリメイク版ラストの方がただグロいだけじゃない爽やかな視聴後をくれるんで、ここもすごく良いな。