大野side
仕事だって言う翔ちゃんを見送りに着いてく後ろ姿にだって、なんか少しもやっとして。
さっきから、だるだるの部屋着から見えてる首もとだとか、やけに短い短パンから見えてる太ももだとか。
なぁ、この家には一体何人出入りさせてんだよ。
お前のその格好、何人に見せたんだ?
ばったんって翔ちゃんが出ていったらしいでっかい玄関の音のあとも、全然あいつの足音が聞こえてこねぇ。
なんだ?まだ翔ちゃんと話し込んでんのかよ。
しょうがねぇし、焦れったいから玄関まで行くと。
いや、お前…玄関のドア見つめて、何してんだ。
……そんなに、俺に話すのいやなんか?
さっきからニノのこと、分かんねぇけど。
でもなんか、俺には言いたくねぇことなんだってのだけはすげぇ分かるよ。
ニノが無意識かどうかは分かんねぇけど。
俺から、なんか隠してるよなぁ、お前。
かずなりって、あの時みたいにそう呼びたいんだけど。
なんか今、これ以上お前に嫌がられたら俺、立ち直れないかもしれない。
あんなにイライラしてたのに、なんか分かんないけど、だんだん怒りじゃなくて、腹がひゅってするみたいな冷たさに変わってきた。
「にの。」
とりあえず、ちゃんとこっち見て笑ってくれよ。
なぁ、かず。
いつもみたいに笑って。
なんか、俺怖いんだよ。
でも
「リーダーも、帰ります?」
やっと振り返ったと思ったら。
固い笑顔は、明らかにこれ以上話すつもりはないのサインで。いや、帰んねぇよ。
…でもさ、今はそんな風になっちゃってるお前に話聞くの、辛いかもしんねぇわ。
だってお前ちょっと声震えてるし。
変な顔してるもん。
自分じゃ気付いてねぇの?
もう、さ。
わかったよ。
確認だけさせてよ。
なんか、俺、だって、何聞いたらいいかも分かんねぇんだもん。
だってさ、お前が言わないってことは。
俺たちにとって良くないことなんだろ?
あんなに、俺が好きだって、泣いてたのにな、お前。
掴んだ手もなんか冷たくて、想像より細くて。
振り払われなかったのはよかったけど。
正直に俺に従うこいつも、なんか違うんだよ。
いつもみたいに笑って避けたり、ぎゅって握り返すこともしないでさ。
俺の後ついてくることなんてねぇじゃん。
だからさ。
「なにも、聞かねぇ。」
そっちのが、いいんだろ。
だっておまえ今。あからさまに安心した顔したからな?
「わかんねぇけど。違うんだろ?」
なにが、違う、とかもうそんなこと聞かねぇから。
どう捉えてもいいからさ。
お前さ、違うって言ってよ。
そしたら俺のこの、足元グラグラするの、なおるから。
なぁ、
「違うな?」
掠れた声だって、最近元気ねぇことだって、全部気付いてんだよ。
お前が馬鹿なことしてんのだって、わかんだけど。
お前はさ、絶対俺にはウソつくだろ?
ホントじゃなくていいから、ウソでいいから、言い訳しろよ。
「…どう、違うんですか?」
聞こえたのは、やけにはっきりしたニノの声で。
お前、そっちをとんの?
お前には、俺たちの方が大事なんじゃねぇの?
でも、歯を食いしばって顔を上げると眉毛下げたなっさけねぇ顔してるから。
そんな顔された次の瞬間にはさ、
どうやったら、お前のこと楽にできんだろ、とか。
ニノが本当はどうして欲しいんだろ、とか。
そんな気持ちが、ばーって頭いっぱいになって。
んで、俺、いつもこうやって誤魔化すけど。
これしかお前が元気になる方法知らねぇんだもん。
何言っても悲しそうな顔するお前が、腕の中でだけは、全部の力抜けることも知ってる。
肩を押すぎゅっと握った拳だって、握るのばっかり力が入ってて、何にも押せてないよ。
それでも。
ニノの顔は見れなくて、ずっとテーブル見てたけど。
でもだからさ、ニノの携帯の画面が見えたのは、俺のせいじゃねぇし。
机の上で震えてる携帯とか。
なんで、全部うまくいかねぇんだろうな。
狭山たくまさんって。平仮名でさん付けて登録してるとことか、またなんか少しイライラする。
なぁ、少し離れて座ってるお前だって、ちゃんと着信わかってんだろ?
「出ろよ。」
「いや、でも。」
「ほら。」
携帯を机から取り上げてニノに向ける。
ちょっと困ったみたいに目が泳いでるニノ。
…俺ってほんとやなやつだわ。
