木製の机の上にその“手”はあった。
かつてそこにあったはずの肌色も消えうせた、
まるでこれも木製なんじゃないかと目を疑う茶色の“手”
人の部品とは水分がなくなるとこうなるのか、といった程度に
残念ながら私は、驚くことも悲しみにくれることも恐怖に怯えることもなかった。
「それ、佐賀野さんが探していたものじゃないですか」
と尋ねてみると、これ?と言って彼はその“手”を指差した。
「そうだね、こいつも主人のところへ帰りたがってるかな」
その“手”の甲には垂直にナイフが刺さっていて
その“手”はきっと自分の意思でその机から身を離すことはできないだろう。
「佐賀野さんは、今も自分の手を捜しています」
彼は私を楽しそうに見ていた。
そう、だから化学準備室の
年季に負けないどっしり佇む木製の教卓を見たときに
その上にパソコンのキーボードを置けば彼の机が完成して
“手”の残像も見えるような気がした。