8328☆GⅠレース回顧〜ヴィクトリアマイル〜 | 九頭馬(万事馬九行久)~Ver.16.7

8328☆GⅠレース回顧〜ヴィクトリアマイル〜

曇り・良馬場で行われた、第19回「ヴィクトリアマイル」(GⅠ)は、14番人気の伏兵テンハッピーローズが優勝。鞍上の津村騎手と共にGⅠ初制覇。2着4番人気フィアスプライド、3着1番人気マスクトディーヴァで波乱決着。




強い競走馬の素質の1つに、ゲートが速いことが挙げられる。スタートが巧みで好位に付けることができて、そこから速い脚が使える馬。これが、近代競馬における「強い馬」といえる。今年のヴィクトリアマイルは、そのスタートが明暗を分けたレースになった。


[ハロンタイム]

12.2―10.5―11.1―11.6―11.4―11.6―11.7―11.7(1:31.8良)


スタートで2番人気のナミュールが伸び上がるようにして出遅れ。場内に悲鳴に似た歓声が湧き上がった。ゲート内でサウンドビバーチェが暴れてナミュールも少なからず影響を受けたと思われ、マスクトディーヴァもガタついていた。ナミュールの鞍上の武豊騎手は、出遅れも含めてゲートでの出来事には言及しなかったが、あの出遅れを見ると影響が全くなかったとは言えないだろう。スタートがいかに大事か、ましてやGⅠレースである。「GⅠでの出遅れは致命傷」という事実が、ナミュールの敗因だったのは間違いない。


そんなスタートだったが、サウンドビバーチェの隣枠だったテンハッピーローズは落ち着いていてスタートも決めた。隣の馬が暴れても動じなかった性格が、勝利に結び付いたと言っても過言ではないだろう。

 逃げたのはコンクシェルで、これは想定通り。2番手にフィールシンパシーが付けて、テンハッピーローズは一旦下げて中団後ろの外追走。過去に連対した10回中9回が差してのもので、テンハッピーローズにとってはマイポジションだった。

 テンハッピーローズにとって幸運だったのは、想定以上にレースが流れたこと。レースを二分割した前半4ハロンが45秒4で後半4ハロンが46秒4。前半3ハロン33秒8は、過去10年で3番目に速く、道中の追走力も問われた一戦。芝1400で実績があったテンハッピーローズには、この高速マイルの流れがドンピシャリだった。ラスト3ハロンは加速できていないので距離も大丈夫だったし、道中もストレスなく走れていたので、すべてが理想的なレース運びだったと感じた。


フィアスプライドは五分のスタートから4番手ポジションを取った。先行勢には厳しい展開だったが、直線で一旦は先頭に立つ積極策で勝ち馬には差されたがマスクトディーヴァの追い上げを凌いだ。このあたりは、鞍上の腕もあったと思われる。


マスクトディーヴァは何とかスタートは決めたが、中団馬群の中ポジション。外からドゥアイズにピッタリとマークされて、直線でもドゥアイズに外からブロックされてブレーキを踏む不利。内を突いたが差し届かなかった。敗因は直線の不利だが、不利を受けた時に勝ち馬に出し抜かれた形になり、逆に鞍上のモレイラは無理にドゥアイズを追い抜こうとしたと見なされ戒告を受けた。正に踏んだり蹴ったりだったろう。


話はナミュールに戻るが、この流れで差して来れなかったのを見ると、予想でも触れた中身が伴っていなかった可能性を考えてしまう。春の大目標は、ここを使って安田記念という話もあり、GⅠとはいえ“叩き台”だった可能性は否定できないだろう。


終わってみれば、勝ち馬はともかく、馬券圏内に来たのはルメールとモレイラ。特にマスクトディーヴァは、モレイラじゃなければ3着に来れなかったと感じたし、改めてこの2人の技量には感服するばかりである。