8300☆GⅠレース回顧〜皐月賞〜 | 九頭馬(万事馬九行久)~Ver.16.6

8300☆GⅠレース回顧〜皐月賞〜

晴れ・良馬場で行われた、第84回「皐月賞」(GⅠ)は、2番人気のジャスティンミラノが優勝。無傷の3連勝で“一冠目”を制した。2着7番人気コスモキュランダ、3着3番人気ジャンタルマンタル。1番人気のレガレイラは6着に終わった。



[ハロンタイム]
12.2―10.5―11.5―11.7―11.6―11.8―12.0―12.1―11.7―12.0 (1:57.1良・レコード)

中山競馬場のコース整備を行う馬場造園課の年間のテーマは「皐月賞を良い馬場で行うこと」だという。中山競馬場は、皐月賞が終わると秋の開催までレースが行われない。その休止期間中で9月から翌年の皐月賞週までの7か月間(開催期間は約5か月間)馬場を維持するための整備をして開催に備える。9月から使い始めて開催期間の最後が皐月賞なので、年間テーマが最終目標ということになる。そんな開催最終週の皐月賞で、とんでもないレコードタイムが出た。2017年アルアインのレースレコードと、15年の中山金杯でラブリーデイが記録したコースレコードを0秒7更新したのだ。皐月賞はおろか、古馬のレースレコードまで更新したのだから「皐月賞を良い馬場で行うこと」という馬場造園課の目標は達成されたと言えよう。この日の4歳上2勝クラスの野島崎特別でも1分58秒2の時計が出ていたので速い時計は予想できたが、それにしても超高速決着である。


レコード決着の立役者はメイショウタバル。前走同様の逃げだったが、5ハロン57秒5のハイペース逃げ。前走の毎日杯が重馬場で59秒6だったから、この馬には平均ラップだったかも知れないが、さすがに距離2000のGⅠで逃げるには厳しいラップだった。

 メイショウタバルは最初の1角までに少し掛かっている。鞍上の浜中騎手も抑えており「ゲート入りに手間取ってテンションが上がってしまった。リズム良く運ぼうと思ったが掛かってしまった」とコメント。しかも、前に行きたいシリウスコルトらも追従して息を入れるタイミングがなかった。浜中騎手と馬にとっては厳しい展開だったのは想像に難くない。


そのハイペースの中、勝ったジャスティンミラノは、先団馬群の5番手に付けた。今までスローからの瞬発力勝負しか経験がなかった馬が、普通に追走力を見せての先行ポジション。ジャスティンミラノよりも前に行くと思われていたシンエンペラーがジャスティンミラノの後ろからの競馬という形になったのは意外だったが、過去2戦でも前で競馬はできていたものの、今回は2戦とは比べものにならない速い流れであり、それを5番手から勝つのだから恐れ入る。残り600あたりでは、上位に入った馬の中では最初に鞍上の手が動いて鞭も入っていたが、これは初めての右回りとコーナー4つの競馬の影響だと思う。直線に入ってからは持ち前の瞬発力を発揮。ジャンタルマンタルの抵抗にはあったが、坂を上がってからも伸びて差し切った。

 予想ではダービーなら本命級と書いたが、どんな流れでも勝てるポテンシャルの高さを見せた今、二冠は限りなく近いという印象を残した。


コスモキュランダは、モレイラの手綱さばきが光った。

 外枠だったが道中は中団の内に潜り込み脚を溜めて距離ロスを防いだ。中山の芝は、まだ内が残っていたので、これも馬場造園課のおかげだろう。勝負どころで外に出した時も不利は受けずに、モレイラも「スムーズに運べた」とコメント。上がり3ハロンは勝ち馬を上回っていたように勝つ可能性はあったが、ずっと外を回っていたジャスティンミラノに勝たれてしまった。着差はクビ差でも現状では完敗だった。何度でも言う。ジャスティンミラノ恐るべし。


ジャンタルマンタルは、瞬発力勝負ではジャスティンミラノに勝てないので、道中3番手から4角2番手の積極策。選択に間違いはなかったが、やはり距離が長かった。早めに動いて直線先頭から3着に粘ったのは馬場の恩恵でもあったが「勝ちにいく競馬をした」という川田騎手のコメントにも納得した。ダービーは厳しいかも知れないが、NHKマイルカップなら勝機はあるだろう。


レガレイラの敗因は、序盤の位置取りが後ろすぎたのと、序盤から11秒台が続く厳しい流れに対応できなかった印象。4角ではバテたのか(?)外にいたサンライズアースを弾き飛ばして、直線も外にヨレた。予想で述べた牡馬との「体力差の逆転」もあったろう。スタート前の輪乗りでテンションが高かったように、久々の影響もあった感じがした。今年も5枠は勝てなかった。

 このあとはオークスかダービーかと言われているが、ラップが落ちる東京2400ならば、オークスなら好走可能。正直、ダービーは厳しいのではないだろうか。


ジャスティンミラノは、亡くなった藤岡康太騎手が調教パートナーだったことも話題になった。戸崎騎手は「最後のこの差は、康太が後押ししてくれたんだなと。康太、ありがとう」とコメントして涙を誘ったが、私はドラマなどで亡くなった人が現れて何かをするようなファンタジーがあまり好きではない。現実では有り得ないからだ。でも今回に限っては、本当に藤岡康太騎手が戸崎騎手とジャスティンミラノの背中を後押ししたのかなと思わずにはいられなかった。