当たり前の話ですが、年が明けましたね。
羽生くんは手術の痛みはもう引いたでしょうか。
どうやら手術して3日くらい洒落にならない痛みらしいので、年明けと共にそれが和らいでいるといいなと思っています。
そして退院して、早くお家に帰れるといいねぇ。
気遣い屋の彼はおそらく、他人がいると気が休まらないタイプだと思うので。
家に帰って、のんびりできていたらいいなぁ。
さて、わけわかんない陰謀論だとか銀河点だとか言い出す人たちにうんざりしている昨今ですが、採点に疑問を持つなら、まずルールの勉強を。
しかし、ネット上で声が大きい一部の人たちはただ他人を叩きたいだけの人たちだから、ルールの勉強をする気なんてさらさらないわけです。
そういう人たちは放っておけばいいんですが、新しくフィギュアのファンになった人が、ソチでゆづファンになった人が、それに流されちゃうのは哀しいよね。
そういうわけで、年が明けたので今さらなルールや採点のお話を。
羽生結弦が何故強いかというと、並外れた技術力の高さはもちろんですが、ルールを最大限に活用する賢さだと私は思っています。
それはクリケットに移る前からの話です。
中学生の時から、羽生結弦という少年はルールを熟知し、自分がどのくらい点数を取れるか。その点数を取るためにはどこをどのようにしたらいいのかを考え、実行してきた子です。
フィギュアスケートは 技術と芸術 の総合スポーツです。
それを象徴するように、点数は技術の高さを評価する技術点と芸術性の評価を主とする演技構成点の2つにわかれています。
男子の場合、SPは技術点が50点程度・演技構成点50点満点 のトータル100点くらいがマックスで想定されています。
FP は技術点が100点程度・演技構成点が100点満点 で200点くらいがマックスの想定です。
さて、ここでお気づきの方が多いと思いますが、演技構成点には満点(上限)がありますが、技術点には満点(上限)がありません。
小さなことに思えるかもしれませんが、実はこれが大変大きなことです。
ここがチェックポイント1。 技術点には上限がないです。
どういうことかというと、技術点ならいくらでも上げられるぞってことです。
演技構成点は満点が決まっています。そしてそのすべてで満点を取るのは至難の業です。ほぼ、不可能です。
だとすれば、高得点を狙うにはいかに 技術点を稼ぐかが鍵になります。
どんなプログラムを組んで試合に臨むかで勝負は半分以上、決まります。
そのため、毎年、羽生くんはこれでもかと技術点の基礎点を上げています。
そもそもの構成が高得点を取れるようにプログラムされているのです。
それは今年のユヅのプログラムが、ショートで技術点が50点を越え、フリーで技術点が100点を越える点数を出しているのを見てもわかります。
すでに羽生結弦という男はスケート連盟がマックスでこのくらいだろうと想定したラインを技術点で越えているのです。
言うのは簡単ですが、それはもちろん簡単なことではありません。
出来もしない構成を組んでも、失敗するだけです。
転倒という失敗なら、まだましです。失敗で本当に痛いのは、転倒することでなく、抜けること、回転不足を取られることです。
ここでチェックポイント2。 回りきっての転倒 >>> 回転の抜け(2回転・1回転)・回転不足(アンダーローテーション・ダウングレート)
見た目ではわかりにくい失敗より、わかりやすい失敗の方が実は点数が取れているです。
多くの人に「?」を生み出す、この点。
一見、失敗していないように見えても、回転が不足していたら、転倒するより点数が低いんです。
何故こんなわかりにくいことになっているのか。
もちろん、それには理由があります。
それは簡単なことを完璧に演じるより、難しいことにチャレンジしたそのチャレンジ精神を評価しようというジャッジのメッセージです。
ここで話は今から4年前。
真央ちゃんが銀メダルを取ったオリンピックへと遡ります。
この時、難しい技にチャレジしない選手が優勝し、難しい技にチャレンジしてミスした選手が優勝を逃すという事態が発生しました。
それでいいのか?とスケート界は揺れました。
結果、簡単な技を完璧にこなすより、難しい技にチャレンジすることを評価しようという方向性が生まれました。
私はこれ、個人的に正解だと思っています。
男子は一気に4回転時代が加速しました。
それに引き換え女子は……って感じですが、こちらはロシア女子に頑張ってもらってレベルを上げてもらいたい。
そんなわけで今のルールでは、転倒するより抜けてレベルが下がった方が点数的には痛いんです。
ここで、中国杯の羽生くんの演技を振り返って見ましょう。
ジャンプの要素8つのうち、7つを回りきっています。一つは回転不足を取られていますが、そもそも予定していた基礎点はほぼもらえているということになります。
もちろん、5つの転倒で-15点近くGOEで引かれています。そこに転倒の-5がさらに引かれます。20点くらい引かれちゃう計算になりますが、もともとが高い点数の構成を組んでいるので、それだけ引かれてもまだ点数が残るわけです。
陰謀説や銀河点とかいろいろ言われましたが、プロトコルを見るとむしろ非情なほどがんがん点数が引かれているのがわかります。
さて、ちょうどGEOが出てきたのでここで出来栄え点と言われるGEOについて説明しましょう。
GEOは 技の出来栄えを評価する点数で-3~+3まで7段階に分かれています。
とかく不明だと言われるこのGEOですが、実は明確な定義がちゃんとあります。
念のため、確認したらこう書いてありました。
要素毎にそれぞれ評価の観点(着眼点)が設定されている。(6~8項目あります)
プラス評価の対象についてはやや抽象的な表現がされているが、マイナス評価の対象については具体的に定められている。演技審判は以下の手順でGOEを決める。
1、要素の中でプラスに評価するべき点を探し、0 - +3の評価を与える。
2、要素の中でマイナスに評価するべき点を探し、1で出した数値に0 - -3を加える。
上記の手順から分かるように、要素の中にマイナス評価の対象となるものが見られても、同時にプラス評価の対象となるものがあれば、結果的にプラス評価となることがある。
だそうです。私は8項目のうち、5~6項目にチェックされたなら+3という説明を見たのですが、どうやら少し違うようです。
まず、プラスするべきところを探し出し、そこで点数を出す。そこからマイナスすべきところを探し出し、最初の評価から引くようです。
そんな判断を一瞬で出来るのか?という疑問が生まれるかもしれませんが、それを言ったら始まりません。そんなのは誰に対しても同じ条件なので、それがルールなのだと割り切るしかないのです。
ここでチェックポイント3。
勝ちたければ、とにかくGEOを稼げ! が出てきます。
現在の採点方法ではGEOはとても大切です。点数の中で大きなシェアを占めます。
これは難しい技にチャレンジすることを評価しましょう。その技を完璧に出来たら、もっと評価しましょう ということです。
つまり、フィギュアスケートという競技は 難しい技を 完璧にやった人が勝つ競技なのです。
そういう目で見ると、ややこしいように思えたフィギュアの採点やルールも意外と簡単でしょ?
ここで忘れないで欲しいのは、
まず、難しい技にチャレンジすることが大前提で、その次に完璧さが求められている ということです。
簡単な技を完璧にこなしても、評価はそれほど高くなりません。
それが一見ノーミスの人が転んだ(失敗した)人に負けるという現象を生みます。
なにやらややこしい話ですが、現在の男子のような状況の方が正常だと私は思います。
女子の難しい技にチャレンジするより完璧にしてGEOで勝つぜっていう傾向の方が問題です。このため、女子のレベルはもう何年も横ばい状態。毎年、曲が変わるだけで構成は何も変わらない。誰でも勝てるし、ジャンプが飛べる成長前の選手がポンポン勝ち、成長期を迎えて消えていく。←現在のロシア状態。 トゥクタミシュアが復活して、何か変わるかもしれないですが。
話が横にそれましたが、そんなこんなで今のルール・採点方法では、難しいことが出来て高い技術力を持ち、なおかつそれを完璧にこなすことができる 羽生結弦 が無敵状態になるわけです。
ここまで読んでくれた方はわかると思いますが、 羽生くんは現在の採点方法の申し子のような人です。
難しいジャンプをいかにも簡単そうに軽々と跳んでしまいます。
海外解説はユヅのことを ジャンプを跳ぶために設計されたマシーンと評しました。
まさしく、その通りだと思います。
羽生くんは難しいジャンプを、GOEを付けたくなるような完璧なフォームで跳ぶのです。
もちろん、これは本人の努力です。
なぜなら、羽生くんは採点方法が変わった時、いち早くGOEの重要性に気づき、GEOまで含めての目標得点を設定し、努力してきました。
言葉にするとなんでもないことですが、ジャンプをただ跳ぶのではなく、GOEが貰えるように跳ぶのは大変なことです。意識して何度も繰り返し練習し、完璧なフォームを作り上げなければ出来ないことです。
そしてそれを彼はやってきたのです。
最初に羽生くんの強さは ルールを最大限に活用する賢さ だと評したのは、こういうわけです。
そしてこの賢さはトロントに拠点を移したことでさらに開花しました。
チーム・ブライアンもまた、ルールや採点方法、ジャッジの好みを熟知し、点数を取っていく方針のチームだったからです。
それは幸運な出会いでした。ゆづは自分の方針とまったく同じ方針・考え方を持つチームに加入したのですから。
これはおそらく、偶然だと思います。羽生くんは単純にハビと練習したい、ハビくらい4回転の確率を上げたいと思っただけで、チームの方針が自分と同じだなんて知りもしなかったでしょう。
現在、男子シングルにおいてチーム・ブライアンは無敵です。
何故無敵なのか、それはルール・採点方法に則った点数が取れるプログラムを最初から組んでいるからです。それは技術点だけに留まりません。
演技構成点でも チーム・ブライアンの方針は生きています。
ジャッジが好むスケートはどういうものなのかを徹底的に研究し、実践させています。
それは一般人の好みとは少々、違っています。
あくまで玄人のジャッジが好きなスケートを追及しています。
それは羽生くんにとって、唯一の弱点といえる部分でした。
天才でも、どんなに努力しても、羽生くんはまだまだ年若い日本人です。
ジャッジの好みを把握するには伝もなく、手段もありません。
しかし、チーム・ブライアンにはそれがあります。
だからトロントに渡ったその年、羽生くんの演技構成点は爆発的に上がったのです。
ブライアン・オーサーがコーチに変わったから点数が上がったのではありません。
ブライアン・オーサーがジャッジが好むスケートをゆづに教え込んだので上がったのです。
実際、このたった一年(正確には数ヶ月)でユヅのスケーティングはびっくりするくらい良くなりました。素人の私が見ても、スピードが全然違うのです。そしてその進化はまだ止まっていません。1年目より2年目が、2年目より3年目の今年が、スケーティングが滑らかでスピードが出ています。こうなると、ジャッジは点数を出したくなります。
まさに、ジャッジの好みにどんぴしゃのスケートをゆづはするようになっているのです。
もともと持っていた高い技術力+底上げされたスケーティング技術が演技構成点を飛躍的に上げました。
技術点が上がり、演技構成点も上がったら、当然、無敵です。
現在の羽生無双状態はここからきています。
ゆづに勝つにはまず、同じくらい難しいプログラムを滑るが絶対条件です。
しかし現在、そんな選手はいません。
いるわけがありません。半端なく難しいプログラムを組んでいるのですから。
ショートプログラムなら、ジャンプが3つなので拮抗する選手が出てくる可能性はあります。
例えば、4-3を跳ぶ選手の方が一見、4回転を単独で跳ぶゆづよりも難しいことをしているように見えます。
しかし、一概にそうは言えないのです。
なぜなら、単独でジャンプを跳ぶ場合は直前までステップやターンを踏まなければならないという規定が今年から加わったからです。
わかりやすくいうと、4-3を跳ぶときには構えてもOK。でも、4回転の単独の時は構えちゃダメよって話です。
ジャンプの前、構えるのと構えないのとは難しさが違います。点数が低い選手の演技をよく見てください。飛ぶ前に構えていることが多いです。飛ぶ前に構えるのが長いとGOEが引かれます。
そもそも、4-3を最初に跳ぶより、後半に3-3を跳ぶほうが難しく、点数が高いです。
4-3・3A(前半)3回転(後半)よりも4回転(前半)3A・3-3(後半)の方が基礎点は高くなるのです。
あ、後半にジャンプが1.1倍になるのは、そうしないと最初にジャンプを全部跳び、後半はステップ・スピンだけというプログラムを組んでくる選手ばかりなるからです。後半に跳ぶジャンプは難しいから、点数が高くなっているのです。
こうやって見ていくと、少なくともショートプログラムなら対羽生プログラムを作るのは簡単です。
後半に3Aと3-3を持ってくればいいだけです。
そんなことはもちろん、みんなわかっています。
でも後半に3-3どころか、3Aさえ持ってくる選手がほとんどいません。
なぜなら、それはとても難しいことだから。
実は一緒に競技している人たちが一番、羽生くんの凄さをわかっていると思います。
ちなみに技術において、羽生くんの武器は複数の種類の4回転ではなく、実は3Aの磐石さです。
ショートで3Aを後半に持ってこれること。
フリーで3Aを後半に2本。
しかも、コンビネーションで入れられること。
特に3A-1Lo-3Sなんて、出来る人、誰もいないですよ。
かろうじて、プルシェンコが3Aの3連続やっていますが、それも前半でした。
この後半の3Aの3連続。ものすごい偉業なのに、他にいろいろありすぎてほとんど伝わっていないのは残念。><
そんなこんなで分析すれば分析するほど、羽生くんの強さが見えてきます。
そしてそんなのは競技している人は誰もがわかっていることです。それなのに追いつけないのは、追いつけないような高みに羽生くんがいるからです。
技術力の高さは羽生くんは飛びぬけています。
もはや想定された点数のラインを超えてしまうことが容易に想像できるので、今年の演技構成点は去年より押さえられれている気がします。
それは羽生くんだけ、ではなく全体的に。
去年より点数の出方が渋いです。
あと、ジャンプの判定が厳格になり、回転不足ががんがん取られるようになりました。
そのため、見た目の出来と点数にギャップが出る選手も度々出るようになりました。
私は心密かに、羽生対策かな?と思っています。
ショートで100点・フリーで200点。総合で300点は それを越えないだろうと想定された点数なので、そう簡単に超えられると困るのです。
まあ、去年はオリンピックシーズンなので少し高めに点数が出たという可能性もあるんですが。
フィギュアの採点は決してわかりやすいものではないですが、理解しようと努力すれば、ある程度は納得できます。
ちゃんと採点方法を知っていれば、疑問に思うことも少ないです。
疑問に思ったら、プロトコルを見てください。
意外にシビアにきっちりとつけられています。
回転不足に関しては、取られないように選手が努力するしかないので文句をつけても仕方ないところです。
深く知るとなかなか面白い世界なので、個人的にはプロトコルを見ることを私はお勧めします。
おかしいな?と疑問に思ったら、ネットの意見に流されるのではなく、自分の目でプロトコルをみてみましょう。
羽生くんは手術の痛みはもう引いたでしょうか。
どうやら手術して3日くらい洒落にならない痛みらしいので、年明けと共にそれが和らいでいるといいなと思っています。
そして退院して、早くお家に帰れるといいねぇ。
気遣い屋の彼はおそらく、他人がいると気が休まらないタイプだと思うので。
家に帰って、のんびりできていたらいいなぁ。
さて、わけわかんない陰謀論だとか銀河点だとか言い出す人たちにうんざりしている昨今ですが、採点に疑問を持つなら、まずルールの勉強を。
しかし、ネット上で声が大きい一部の人たちはただ他人を叩きたいだけの人たちだから、ルールの勉強をする気なんてさらさらないわけです。
そういう人たちは放っておけばいいんですが、新しくフィギュアのファンになった人が、ソチでゆづファンになった人が、それに流されちゃうのは哀しいよね。
そういうわけで、年が明けたので今さらなルールや採点のお話を。
羽生結弦が何故強いかというと、並外れた技術力の高さはもちろんですが、ルールを最大限に活用する賢さだと私は思っています。
それはクリケットに移る前からの話です。
中学生の時から、羽生結弦という少年はルールを熟知し、自分がどのくらい点数を取れるか。その点数を取るためにはどこをどのようにしたらいいのかを考え、実行してきた子です。
フィギュアスケートは 技術と芸術 の総合スポーツです。
それを象徴するように、点数は技術の高さを評価する技術点と芸術性の評価を主とする演技構成点の2つにわかれています。
男子の場合、SPは技術点が50点程度・演技構成点50点満点 のトータル100点くらいがマックスで想定されています。
FP は技術点が100点程度・演技構成点が100点満点 で200点くらいがマックスの想定です。
さて、ここでお気づきの方が多いと思いますが、演技構成点には満点(上限)がありますが、技術点には満点(上限)がありません。
小さなことに思えるかもしれませんが、実はこれが大変大きなことです。
ここがチェックポイント1。 技術点には上限がないです。
どういうことかというと、技術点ならいくらでも上げられるぞってことです。
演技構成点は満点が決まっています。そしてそのすべてで満点を取るのは至難の業です。ほぼ、不可能です。
だとすれば、高得点を狙うにはいかに 技術点を稼ぐかが鍵になります。
どんなプログラムを組んで試合に臨むかで勝負は半分以上、決まります。
そのため、毎年、羽生くんはこれでもかと技術点の基礎点を上げています。
そもそもの構成が高得点を取れるようにプログラムされているのです。
それは今年のユヅのプログラムが、ショートで技術点が50点を越え、フリーで技術点が100点を越える点数を出しているのを見てもわかります。
すでに羽生結弦という男はスケート連盟がマックスでこのくらいだろうと想定したラインを技術点で越えているのです。
言うのは簡単ですが、それはもちろん簡単なことではありません。
出来もしない構成を組んでも、失敗するだけです。
転倒という失敗なら、まだましです。失敗で本当に痛いのは、転倒することでなく、抜けること、回転不足を取られることです。
ここでチェックポイント2。 回りきっての転倒 >>> 回転の抜け(2回転・1回転)・回転不足(アンダーローテーション・ダウングレート)
見た目ではわかりにくい失敗より、わかりやすい失敗の方が実は点数が取れているです。
多くの人に「?」を生み出す、この点。
一見、失敗していないように見えても、回転が不足していたら、転倒するより点数が低いんです。
何故こんなわかりにくいことになっているのか。
もちろん、それには理由があります。
それは簡単なことを完璧に演じるより、難しいことにチャレンジしたそのチャレンジ精神を評価しようというジャッジのメッセージです。
ここで話は今から4年前。
真央ちゃんが銀メダルを取ったオリンピックへと遡ります。
この時、難しい技にチャレジしない選手が優勝し、難しい技にチャレンジしてミスした選手が優勝を逃すという事態が発生しました。
それでいいのか?とスケート界は揺れました。
結果、簡単な技を完璧にこなすより、難しい技にチャレンジすることを評価しようという方向性が生まれました。
私はこれ、個人的に正解だと思っています。
男子は一気に4回転時代が加速しました。
それに引き換え女子は……って感じですが、こちらはロシア女子に頑張ってもらってレベルを上げてもらいたい。
そんなわけで今のルールでは、転倒するより抜けてレベルが下がった方が点数的には痛いんです。
ここで、中国杯の羽生くんの演技を振り返って見ましょう。
ジャンプの要素8つのうち、7つを回りきっています。一つは回転不足を取られていますが、そもそも予定していた基礎点はほぼもらえているということになります。
もちろん、5つの転倒で-15点近くGOEで引かれています。そこに転倒の-5がさらに引かれます。20点くらい引かれちゃう計算になりますが、もともとが高い点数の構成を組んでいるので、それだけ引かれてもまだ点数が残るわけです。
陰謀説や銀河点とかいろいろ言われましたが、プロトコルを見るとむしろ非情なほどがんがん点数が引かれているのがわかります。
さて、ちょうどGEOが出てきたのでここで出来栄え点と言われるGEOについて説明しましょう。
GEOは 技の出来栄えを評価する点数で-3~+3まで7段階に分かれています。
とかく不明だと言われるこのGEOですが、実は明確な定義がちゃんとあります。
念のため、確認したらこう書いてありました。
要素毎にそれぞれ評価の観点(着眼点)が設定されている。(6~8項目あります)
プラス評価の対象についてはやや抽象的な表現がされているが、マイナス評価の対象については具体的に定められている。演技審判は以下の手順でGOEを決める。
1、要素の中でプラスに評価するべき点を探し、0 - +3の評価を与える。
2、要素の中でマイナスに評価するべき点を探し、1で出した数値に0 - -3を加える。
上記の手順から分かるように、要素の中にマイナス評価の対象となるものが見られても、同時にプラス評価の対象となるものがあれば、結果的にプラス評価となることがある。
だそうです。私は8項目のうち、5~6項目にチェックされたなら+3という説明を見たのですが、どうやら少し違うようです。
まず、プラスするべきところを探し出し、そこで点数を出す。そこからマイナスすべきところを探し出し、最初の評価から引くようです。
そんな判断を一瞬で出来るのか?という疑問が生まれるかもしれませんが、それを言ったら始まりません。そんなのは誰に対しても同じ条件なので、それがルールなのだと割り切るしかないのです。
ここでチェックポイント3。
勝ちたければ、とにかくGEOを稼げ! が出てきます。
現在の採点方法ではGEOはとても大切です。点数の中で大きなシェアを占めます。
これは難しい技にチャレンジすることを評価しましょう。その技を完璧に出来たら、もっと評価しましょう ということです。
つまり、フィギュアスケートという競技は 難しい技を 完璧にやった人が勝つ競技なのです。
そういう目で見ると、ややこしいように思えたフィギュアの採点やルールも意外と簡単でしょ?
ここで忘れないで欲しいのは、
まず、難しい技にチャレンジすることが大前提で、その次に完璧さが求められている ということです。
簡単な技を完璧にこなしても、評価はそれほど高くなりません。
それが一見ノーミスの人が転んだ(失敗した)人に負けるという現象を生みます。
なにやらややこしい話ですが、現在の男子のような状況の方が正常だと私は思います。
女子の難しい技にチャレンジするより完璧にしてGEOで勝つぜっていう傾向の方が問題です。このため、女子のレベルはもう何年も横ばい状態。毎年、曲が変わるだけで構成は何も変わらない。誰でも勝てるし、ジャンプが飛べる成長前の選手がポンポン勝ち、成長期を迎えて消えていく。←現在のロシア状態。 トゥクタミシュアが復活して、何か変わるかもしれないですが。
話が横にそれましたが、そんなこんなで今のルール・採点方法では、難しいことが出来て高い技術力を持ち、なおかつそれを完璧にこなすことができる 羽生結弦 が無敵状態になるわけです。
ここまで読んでくれた方はわかると思いますが、 羽生くんは現在の採点方法の申し子のような人です。
難しいジャンプをいかにも簡単そうに軽々と跳んでしまいます。
海外解説はユヅのことを ジャンプを跳ぶために設計されたマシーンと評しました。
まさしく、その通りだと思います。
羽生くんは難しいジャンプを、GOEを付けたくなるような完璧なフォームで跳ぶのです。
もちろん、これは本人の努力です。
なぜなら、羽生くんは採点方法が変わった時、いち早くGOEの重要性に気づき、GEOまで含めての目標得点を設定し、努力してきました。
言葉にするとなんでもないことですが、ジャンプをただ跳ぶのではなく、GOEが貰えるように跳ぶのは大変なことです。意識して何度も繰り返し練習し、完璧なフォームを作り上げなければ出来ないことです。
そしてそれを彼はやってきたのです。
最初に羽生くんの強さは ルールを最大限に活用する賢さ だと評したのは、こういうわけです。
そしてこの賢さはトロントに拠点を移したことでさらに開花しました。
チーム・ブライアンもまた、ルールや採点方法、ジャッジの好みを熟知し、点数を取っていく方針のチームだったからです。
それは幸運な出会いでした。ゆづは自分の方針とまったく同じ方針・考え方を持つチームに加入したのですから。
これはおそらく、偶然だと思います。羽生くんは単純にハビと練習したい、ハビくらい4回転の確率を上げたいと思っただけで、チームの方針が自分と同じだなんて知りもしなかったでしょう。
現在、男子シングルにおいてチーム・ブライアンは無敵です。
何故無敵なのか、それはルール・採点方法に則った点数が取れるプログラムを最初から組んでいるからです。それは技術点だけに留まりません。
演技構成点でも チーム・ブライアンの方針は生きています。
ジャッジが好むスケートはどういうものなのかを徹底的に研究し、実践させています。
それは一般人の好みとは少々、違っています。
あくまで玄人のジャッジが好きなスケートを追及しています。
それは羽生くんにとって、唯一の弱点といえる部分でした。
天才でも、どんなに努力しても、羽生くんはまだまだ年若い日本人です。
ジャッジの好みを把握するには伝もなく、手段もありません。
しかし、チーム・ブライアンにはそれがあります。
だからトロントに渡ったその年、羽生くんの演技構成点は爆発的に上がったのです。
ブライアン・オーサーがコーチに変わったから点数が上がったのではありません。
ブライアン・オーサーがジャッジが好むスケートをゆづに教え込んだので上がったのです。
実際、このたった一年(正確には数ヶ月)でユヅのスケーティングはびっくりするくらい良くなりました。素人の私が見ても、スピードが全然違うのです。そしてその進化はまだ止まっていません。1年目より2年目が、2年目より3年目の今年が、スケーティングが滑らかでスピードが出ています。こうなると、ジャッジは点数を出したくなります。
まさに、ジャッジの好みにどんぴしゃのスケートをゆづはするようになっているのです。
もともと持っていた高い技術力+底上げされたスケーティング技術が演技構成点を飛躍的に上げました。
技術点が上がり、演技構成点も上がったら、当然、無敵です。
現在の羽生無双状態はここからきています。
ゆづに勝つにはまず、同じくらい難しいプログラムを滑るが絶対条件です。
しかし現在、そんな選手はいません。
いるわけがありません。半端なく難しいプログラムを組んでいるのですから。
ショートプログラムなら、ジャンプが3つなので拮抗する選手が出てくる可能性はあります。
例えば、4-3を跳ぶ選手の方が一見、4回転を単独で跳ぶゆづよりも難しいことをしているように見えます。
しかし、一概にそうは言えないのです。
なぜなら、単独でジャンプを跳ぶ場合は直前までステップやターンを踏まなければならないという規定が今年から加わったからです。
わかりやすくいうと、4-3を跳ぶときには構えてもOK。でも、4回転の単独の時は構えちゃダメよって話です。
ジャンプの前、構えるのと構えないのとは難しさが違います。点数が低い選手の演技をよく見てください。飛ぶ前に構えていることが多いです。飛ぶ前に構えるのが長いとGOEが引かれます。
そもそも、4-3を最初に跳ぶより、後半に3-3を跳ぶほうが難しく、点数が高いです。
4-3・3A(前半)3回転(後半)よりも4回転(前半)3A・3-3(後半)の方が基礎点は高くなるのです。
あ、後半にジャンプが1.1倍になるのは、そうしないと最初にジャンプを全部跳び、後半はステップ・スピンだけというプログラムを組んでくる選手ばかりなるからです。後半に跳ぶジャンプは難しいから、点数が高くなっているのです。
こうやって見ていくと、少なくともショートプログラムなら対羽生プログラムを作るのは簡単です。
後半に3Aと3-3を持ってくればいいだけです。
そんなことはもちろん、みんなわかっています。
でも後半に3-3どころか、3Aさえ持ってくる選手がほとんどいません。
なぜなら、それはとても難しいことだから。
実は一緒に競技している人たちが一番、羽生くんの凄さをわかっていると思います。
ちなみに技術において、羽生くんの武器は複数の種類の4回転ではなく、実は3Aの磐石さです。
ショートで3Aを後半に持ってこれること。
フリーで3Aを後半に2本。
しかも、コンビネーションで入れられること。
特に3A-1Lo-3Sなんて、出来る人、誰もいないですよ。
かろうじて、プルシェンコが3Aの3連続やっていますが、それも前半でした。
この後半の3Aの3連続。ものすごい偉業なのに、他にいろいろありすぎてほとんど伝わっていないのは残念。><
そんなこんなで分析すれば分析するほど、羽生くんの強さが見えてきます。
そしてそんなのは競技している人は誰もがわかっていることです。それなのに追いつけないのは、追いつけないような高みに羽生くんがいるからです。
技術力の高さは羽生くんは飛びぬけています。
もはや想定された点数のラインを超えてしまうことが容易に想像できるので、今年の演技構成点は去年より押さえられれている気がします。
それは羽生くんだけ、ではなく全体的に。
去年より点数の出方が渋いです。
あと、ジャンプの判定が厳格になり、回転不足ががんがん取られるようになりました。
そのため、見た目の出来と点数にギャップが出る選手も度々出るようになりました。
私は心密かに、羽生対策かな?と思っています。
ショートで100点・フリーで200点。総合で300点は それを越えないだろうと想定された点数なので、そう簡単に超えられると困るのです。
まあ、去年はオリンピックシーズンなので少し高めに点数が出たという可能性もあるんですが。
フィギュアの採点は決してわかりやすいものではないですが、理解しようと努力すれば、ある程度は納得できます。
ちゃんと採点方法を知っていれば、疑問に思うことも少ないです。
疑問に思ったら、プロトコルを見てください。
意外にシビアにきっちりとつけられています。
回転不足に関しては、取られないように選手が努力するしかないので文句をつけても仕方ないところです。
深く知るとなかなか面白い世界なので、個人的にはプロトコルを見ることを私はお勧めします。
おかしいな?と疑問に思ったら、ネットの意見に流されるのではなく、自分の目でプロトコルをみてみましょう。