第162回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が

15日夕、東京・築地の新喜楽で開かれ、

芥川賞古川真人さん(31)の「背高泡立草」(すばる10月号)、

直木賞に川越宗一さん(41)の「熱源」(文芸春秋)が

それぞれ選ばれた。(時事通信)

 
 古川さんは候補4度目での受賞。

作品は、20年以上も放置された納屋周辺の草を刈るため、

母と娘、親類も連れ立って九州の離島へ向かう物語。

女性らが言葉を交わす合間に、過去の逸話が挿入され、

島の歴史が浮かび上がる。

 選考委員の島田雅彦さんは

「語り口が読みやすく、

土地に根付く歴史的な重層性を巧みにすくい上げた」

と評価した。

 川越さんは初候補で栄冠を手にした。

受賞作は、

北海道への移住を強制された樺太アイヌの男性と、

同化政策により

ロシア人として生きることを強要された

ポーランド人男性を主軸にした歴史大作。

時代や文明に翻弄(ほんろう)されながら、

北の大地でたくましく生きる人々を活写した。

 選考委員の浅田次郎さんは

「近年まれに見る大きなスケールで小説世界を築き上げた。

人物も生き生きと魅力的に描かれている」と評した。

 贈呈式は2月下旬に東京都内で行われ、

正賞の時計と副賞100万円が贈られる。 

 

 

 候補4度目で芥川賞に決まった古川真人さん(31)は、

黒のスーツと紺のネクタイ姿で会見場に現れ、

「これからどうなっちゃうんだろう」と戸惑いを口にしつつ、

「喜びは2、3日後に感じるのでは」と語った。

 
 受賞作は、

主人公の奈美が母の実家の納屋の草刈りをするため、

母や伯母らと九州の離島へ向かう物語。

 同じ島が舞台の小説を書き続けてきた。

「自分には手札がない。

主人公や語り口を変えられる作家さんもいるが、

自分はそうじゃない。器用さはないので」と控えめだが、

今後については「『島』から出て行きたい。

自分に不慣れなものを書きたい」と意欲をのぞかせた。 

 

 

 白いシャツと紺色のジャケット姿で

会見場に現れた川越宗一さん(41)は、

「現実感がなく、信じられない。

ドッキリが進行しているような感じ」と、

独特の表現で喜びを表した。

 
 自身の長編2作目となる受賞作は、

樺太に生まれたアイヌの男性と、

苦役囚として同地に送られたポーランド人男性の2人を

主人公にした壮大な歴史小説。

「過去の歴史を通して、今生きている現在を書きたい」

と作家としての熱源を語る。

 「代表作は何かと聞かれたときに、

常に『次の作品です』と答えられるような

作家活動を続けていきたい」と力を込めた。