第154回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が

19日夕、東京・築地の新喜楽で開かれ、

芥川賞は滝口悠生さん(33)の「死んでいない者」(「文学界」12月号)と、

本谷有希子さん(36)の「異類婚姻譚」(「群像」11月号)に決まった。

 直木賞には、青山文平さん(67)の「つまをめとらば」(文芸春秋)が選ばれた。

1990年に68歳で受賞した故星川清司さんに次ぐ2番目の高齢受賞。(時事通信)


 滝口さんは2回目の候補での受賞。

作品は、

通夜に集まった大勢の親戚それぞれの人生が、「死」を通じ交錯するさまを描く。

視点が自在に移動、年齢や境遇の異なる生者らの不確かさを、

臨場感あふれる語りで浮かび上がらせた。

 劇作など演劇活動も行う本谷さんは4回目の候補での受賞。

作品は、

自分の顔が夫そっくりになっていることに気付いた「私」が、

堕落する夫を横目にさまざまな選択を迫られる物語。

知人夫婦や猫のエピソードを交え、衝撃的な結末までをイメージ豊かに描いた。

 選考委員の奥泉光さんは滝口さんについて

「語りの巧みさが空間と時間の広がりを作り出し、

それぞれの人物像もくっきり描かれている」と評価。

本谷さんについては

「夫婦の不気味さが説話の構造の中で巧みに生かされている」と話した。

 青山さんは2回目の候補だった。

作品は江戸中期が舞台。

女のしたたかさと対照的な男の寄る辺なさを映した短編6作を収めた。

表題作は、

独り身を通してきた56歳の男が妻を得る踏ん切りをつけるまでの葛藤を描く。

 選考委員の宮城谷昌光さんは

「青山さんには知的なユーモアがあり、いずれの作品も読後感が爽やか」

と評価した。

 受賞者には正賞の時計と副賞100万円が贈られる。