小説「雲の墓標」や評伝「山本五十六」など
数々の戦争文学で知られる作家で、文化勲章受章者の
阿川弘之(あがわ・ひろゆき)氏が3日、老衰のため死去した。
94歳。葬儀・告別式は近親者で行う。後日、しのぶ会を開く。
(産経新聞)
大正9年、広島市生まれ。
昭和17年、東大国文科を卒業後、海軍予備学生に。
海軍中尉として中国に渡った。
21年に復員し、尊敬する作家の志賀直哉を紹介され、文筆の道に。
27年、戦時下の日々を自伝風に書いた長編「春の城」で読売文学賞を受賞。
同時期にデビューした吉行淳之介さんらとともに「第三の新人」と称された。
以後、「雲の墓標」「暗い波濤(はとう)」「軍艦長門の生涯」といった
リアリティーあふれる戦争小説を発表し続け、作家としての地位を固めた。
「米内光政」など海軍軍人を題材にした重厚な評伝を著す一方、
紀行文や私小説的な短編小説も多数発表。
35年に産経児童出版文化賞を受けた「なかよし特急」など、児童書も手がけた。
他の主な作品に「井上成美」「志賀直哉」がある。
平成11年、文化勲章受章。日本芸術院会員。
本紙「正論」執筆メンバーとしても活躍した。
法学者の阿川尚之さんは長男、エッセイストの阿川佐和子さんは長女。