お茶の水女子大学の今井正幸教授と佐久間由香博士研究員は、抗がん剤などを患部に効率良く運ぶための微小な球状カプセルを開発した。脂質の二重膜でできており、温度を下げるとカプセルが変形し、内部の薬物などを放出する。カプセルを患部に届けた後に冷やせば、高い治療効果が期待できる。今後は製薬企業と連携し、薬剤送達システム(DDS)として実用化を目指す。
 開発したのは直径が最大60マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの球状カプセル。油脂の膜が二重になった構造で、水になじむ性質を持つ部分が、抗がん剤などを内包する内側と、外側の両方に出て、カプセルになっている。
 膜には水に溶けにくい性質を持つ部分(疎水基)もあり、この部分は形や融点が異なる2種類の油脂をもとに作った。各油脂の融点はセ氏40度と、同マイナス45度。
 40度超の高温下では、この2つの油脂の疎水基はいずれも溶けた状態にあり、二重膜はカプセルの形を保つ。40度以下にすると、融点が高い油脂は固まるが、融点が低い油脂は円筒状に集まり変形し、カプセルに穴が開く仕組みだ。
 油脂の分子構造を変えれば、穴が開く温度を自由に変えられる。カプセル内部に抗がん剤を入れ、血管に注射した後にがんの患部を外部から冷やせば、患部の近くでカプセルが変形して口が開き、抗がん剤などの薬を放出できる。患部に抗がん剤が集中するので、別の部位で副作用が起こるのを抑えられる。
 細い流路を使い、油脂の二重膜を大量生産する技術は既に開発されている。今回の技術と組み合わせれば、DDS用の微小なカプセルを大量生産できる。カプセルの素材となる油脂は人体内にも存在し、毒性がなく使いやすいという。
 研究チームは抗がん剤以外にも、メラニンの発生を抑える美白化粧品などにも使えるとみている。カプセルの中に蛍光物質を入れて使えば、微小な細胞などの温度を測れる。少量の農薬で植物の病気を抑えられる技術の開発も期待できるという。(2/28 日経産業新聞より)











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