長崎市立市民病院は31日、分娩中の胎児の心音検査を怠ったため、胎児が死亡する医療ミスがあったと発表した。病院側は遺族に賠償する方針。
 同病院によると、母親は長崎市に住む30代女性で、出産のため昨年5月31日に入院。同6月2日午後9時20分ごろ、胎児が一時的に脈拍数が低下する症状を起こしたため、病院側は同日午後11時45分まで継続的に胎児の心音をチェック、異常はなかったという。
 しかし、その後85分間検査せず、翌3日午前1時10分ごろに助産師が胎児の心音異常を確認。帝王切開したが胎児は重度の仮死状態で、昨年11月23日に死亡した。
 病院によると、最後の検査から心音異常に気付くまで医師が不在で、検査を続けるよう明確な指示がなかったという。
 大垣市は30日、市民病院で09年10月に起きた医療ミスのため県内の男性(31)に116万2000円の損害賠償金を支払うことで和解に合意したと発表した。

 市民病院によると、男性は09年10月7日に外科で受診。急性虫垂炎と診断され、虫垂切除手術をうけた。この際に腰椎麻酔がうまくできずに全身麻酔を受けた。男性は術後に右ふともものしびれや腰の痛み、右ひざの脱力感を訴えたが、症状が軽く、13日に退院。22日に職場で右足の力が抜けたようになって倒れ、翌23日に再入院、11月6日に退院した。現在は腰の痛みはなくなったが、しびれは残っているという。

 病院側は「原因は特定できないが、腰椎麻酔を行った際に麻酔針か麻酔薬が脊髄の神経に触れた可能性がある」としている。
 県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)で昨年4月、高齢男性の入院患者がベッドから転落し、頭部を強打したことが原因で死亡していたことが分かった。県病院事業課は医療事故と認定したが、1年以上たった30日に事実を公表。家族への配慮を重視した「公表基準(ガイドライン)」にのっとった適切な対応だと説明している。


 同課によると、男性は呼吸器系の疾患で昨年4月に入院。直後に夜間にベッド上に立ち上がって誤って転倒し、数日後に死亡した。病院側は入院の際、高齢だったことから家族からも話を聞いて転倒のリスクを検討。4段階のうち最も安全な基準から2番目に相当すると判断し、特別な看護態勢は取らなかった。


 同課や地方独立行政法人・神奈川県立病院機構は当初から結果を重くみて、最も深刻な医療事故の「レベル5」相当と判断。県は2008年にガイドラインを見直し、レベル5の際には「県立病院の責務」として医療の透明性を確保するためにも直ちに公表すると決めていた。


 ただ、「患者または家族の同意」を条件にしており、同意がない場合は軽微な事故と一緒に年度明けの5月に事実だけを公表する決まりだった。


 08年のガイドライン見直しは県立病院幹部と県の担当者の間で進め、県議会に承認を求めていなかったが、松沢成文前知事は当時、直ちに公表しないことを認めたという。


 事故から1年以上経った30日、同課は初めて事実を公表したが、詳細への言及は避けた。同課の担当者は「(ガイドラインは)妥当だと考えている」と話している。レベル5の事故は06~08年に9件発生し、中には直ちに公表したものもあったという。