大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(破産手続き中)で肝臓手術を受けた男性患者(当時51歳)が死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元理事長で医師の山本文夫被告(53)=詐欺罪で服役中=の第4回公判が9日、奈良地裁(橋本一裁判長)であった。検察側の証人として県立医科大の古家仁教授(麻酔科)ら3人が出廷。患者の死因と出血の原因を巡って検察側と弁護側が対立する場面もあった。
 検察側の証人尋問に対し、古家教授は麻酔記録を示しながら、出血量は手術中に2500ミリリットル、手術後に800ミリリットルあり、「更に体内で1000~2000ミリリットル出血していただろう」として死因は失血死と考えられると証言した。
 これに対し、弁護側は反対尋問で、手術後の出血は、看護師らの心臓マッサージによる再出血の可能性があると指摘。手術中の血圧や血液は一定程度を維持していたとして、心停止の原因は心筋梗塞や肺塞栓症の可能性もあり、死因は特定できないと反論した。
 橋本裁判長は手術後の800ミリリットルの出血について、「心臓マッサージによる可能性はあるか」と聞くと、古家教授は「はい」と答えた上で、「2500ミリリットルの出血だけで心停止するのは考えにくい」として、大量出血による死亡との考えを改めて示した。さらに「患者の死を防ぐためにどうしたら良かったか」との橋本裁判長の質問に、山本被告が執刀医と麻酔医を兼ねていたことに触れ、「手術を把握して指示を出す麻酔科医がいれば助かっていた」と述べた。
 古家教授の前に証人尋問に立った男性看護師は死亡が確認される前、主治医が山本被告に「死因は心筋梗塞で良いですね」と電話していたことを明らかにした。