6 シナプス 生理学2 | ナチュラルメディカル カレッジ コラム

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ナチュラルメディカル カレッジでの講義で使う基礎知識や補足や理解してほしい事の各資料よりの臨床の幅と深さを深め広める為に引用も含めて書いていきます。

本当に一つ一つを読み解いていくとおもしろいです。

シナプス一つとっても様々な事がわかってきます。

交感神経、副交感神経もシナプスレベルで理解すると良いですし、食事のアドバイス一つでも違ってきます。

 神経細胞は隣接する細胞にシナプスを介し情報を伝達します。シナプス前末端からは伝達物質が放出され、シナプス後電位を発生させます。シナプスには興奮性シナプスと抑制性シナプスがあり、興奮性シナプスでは興奮性シナプス後電位(EPSP)を、抑制性シナプスは抑制性シナプス後電位(IPSP)を発生させます。


 運動神経線維(α運動ニューロン)は骨格筋に接合し、刺激を伝達することによって筋収縮をもたらします。その接合部分を神経側は神経終末(シナプス前末端)といい骨格筋側は終板膜といいます。神経終末はひだ状になり伝達物質であるアセチルコリンを含んでいます。この部分をシナプス小胞といいます。神経終末と終板膜の間には隙間がありシナプス間隙といいます。終板膜にはアセチルコリン受容体やアセチルコリンエステラーゼがあります。

 神経線維を伝導してきた活動電位は神経終末にあるCaチャネルを開口させ、神経終末内のCa濃度を増加させます。その結果、シナプス小胞からアセチルコリンがシナプス間隙に放出されます。アセチルコリンは伝達物質であり、終板膜にあるアセチルコリン受容体に結合します。結合後にはアセチルコリンエステラーゼによりコリンと酢酸に分解され、神経終末に取り込まれてアセチルコリンに再合成されます。

 アセチルコリンがアセチルコリン受容体に作用するとチャネルが開口しNa、K、Caがシナプス電流として流れ終板電位が発生します。終板電位は大きな脱分極であり、筋線維に対し活動電位を発生させます。神経終末に活動電位が到達してから終板電位が発生するまでには約0.5msの遅延があり、これをシナプス遅延といいます。


 クラーレはアメリカ原住民の矢毒として使われていた蛙の毒ですが、これはアセチルコリンがアセチルコリン受容体への結合はゆるすが、受容体チャネルの開口をさせないため、力が入らなくなってしまう。

 α-ブンガロトキシンは蛇の毒ですが、これはアセチルコリン受容体に先に結合してしまいアセチルコリンの結合を遮断するため力が入らなくなってしまう。

 サリンはアセチルコリンエステラーゼの働きを妨げるためアセチルコリンの分解をさせなくする。そのため、持続的にアセチルコリンが受容体に働き、終板電位が持続的に起こるため筋の痙攣、強直性の麻痺が起こる。

 アルツハイマー病患者は海馬でアセチルコリンレベルが低くなっているためアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル、リバスチグミンを使用する場合があります。

 重症筋無力症患者は筋の収縮を行えば行うほど収縮力が減少してきます。この疾患は終板膜にあるアセチルコリン受容体が自己抗体により破壊され減少することにより終板膜電位が減少し発症するため、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるワゴスチグミンやメスチノンを使用する場合がある。

 ランバート・イートン症候群は重症筋無力症に似ており筋の収縮力の減少が起きますが、原因は神経線維にあるCaチャネルが自己抗体によりCaの流入が減少してしまうためアセチルコリンの放出が減少し発症します。

 ボツリヌス中毒は食中毒の一つですが、これもアセチルコリンの放出を抑制し弛緩性の麻痺が生じます。これは、ボツリヌス毒素が神経終末のシナプス小胞に入り込むためアセチルコリンを放出できなくなり麻痺が起こります。

 喘息患者は発作時、副交感神経優位になり、気管支が収縮しています。副交感神経の伝達物質はアセチルコリンであるため、抗コリン薬によりアセチルコリンの働きを抑制し、症状を緩和します。薬としてはイプラトロピウム、チオトロピウムが使用される場合があります。

だから臨床の時は~考えてみてください。


 平滑筋は自律神経により支配されていますが、自律神経は分岐し筋線維に沿って走行(アンパサン)しています。骨格筋を支配していたα運動ニューロンは神経終末が筋と接しているため神経終末にしかシナプス小胞はありませんでしたが、自律神経は平滑筋の中を進み神経の途中にいくつもの膨隆を形成し、そこにシナプス小胞はあります。またシナプス間隙が骨格筋より広いためシナプス遅延が大きくなります。一般的に自律神経の副交感神経は平滑筋に対し脱分極(興奮性接合部電位)を起こし興奮させます。交感神経は過分極(抑制性接合部電位)を起こし抑制的に働きます。


 心筋も平滑筋と同様に自律神経により支配されているためアンパサン(通りすがり)に制御されています。前項目で話した平滑筋と違うのは自律神経の副交感神経は心筋に対し抑制性に働き、交感神経は興奮性に働き制御します。


 中枢神経でのニューロン1つは数100~数万のシナプスを持っています。シナプス結合する部位は細胞体や樹状突起、樹状突起基部です。ここではシナプス間隙が狭い(骨格筋の半分以下)ためシナプス遅延が少なくなります。しかし、1つの興奮性シナプス後電位(EPSP)では閾値に届かないため、多くの興奮性シナプス後電位(EPSP)による荷重が必要となります。抑制性シナプス後電位(IPSP)は興奮性シナプス後電位(EPSP)の効果を打ち消します。


筋の中には筋紡錘があります。筋紡錘からは筋紡錘が伸ばされると、その情報がⅠa線維を通し脊髄に伝えられます(求心性線維)。脊髄の中に入ったⅠa線維は筋紡錘のあった筋のα運動ニューロンに単シナプス結合し興奮性シナプス後電位(EPSP)を発生させます。中枢神経では多くの伝達物質はグルタミン酸です。打腱器で腱を叩くと筋が伸ばされ、それと同時に筋紡錘も伸ばされるのでⅠa線維を通してα運動ニューロンが興奮し、同じ筋が収縮するという流れで腱反射は起こります。

 前文で筋紡錘からⅠa線維が出て同じ筋のα運動ニューロンにシナプス結合すると言いましたが、それと同時に拮抗筋側にもいきます。まずⅠa線維からゴルジビン型ニューロン(介在ニューロン)という抑制性のニューロンを通して拮抗筋に対し抑制性シナプス後電位(IPSP)を発生し筋の興奮を弛緩させます。ゴルジビン型ニューロンはIPSPによって興奮伝達(EPSP)の抑制を起こすことができシナプス後抑制を起こします。脊髄での抑制性の伝達物質はグリシンです。脳ではγ-アミノ酪酸です(GABA)。チョコレートのやつ・・・リラックスできる?


だから、痛みや症状によって臨床では手順やアドバイスを変えていきます。 


シナプス後抑制はシナプスから抑制性の伝達物質を放出します。シナプス後抑制があればシナプス前抑制もあります。ゴルジビン型ニューロンはα運動ニューロンに対して直接的な抑制効果はなく、Ⅰa線維に対して抑制をかけ、結果的にα運動ニューロンの興奮性を抑制します。これをシナプス前抑制といいます。ちょっと分からなくなってきたと思いますので例をあげます。

 大腿四頭筋(Q)とハムストリングス(H)で考えると、QのⅠa線維はQのα運動ニューロンに興奮性シナプス後電位を発生、HのⅠa線維はゴルジビン型ニューロンに興奮性シナプス後電位を発生、ゴルジビン型ニューロンはQのⅠa線維にシナプス後抑制を発動、QのⅠa線維の興奮が抑えられるためQのα運動ニューロンの興奮性も抑えられる。Qのα運動ニューロンにとってみればシナプス前抑制が働いている。


 また脊髄内にはレンショウ細胞というものが存在しています。α運動ニューロンは筋に興奮を伝えますが、その前にレンショウ細胞にシナプス結合し、レンショウ細胞は同α運動ニューロンの細胞体にシナプス結合し抑制をかけます。α運動ニューロンは興奮すればするほど、レンショウ細胞を通し抑制をかけます。これを反回抑制といいます。

 神経伝達物質は神経末端で生成されるが、生成に必要な酵素は細胞体で生成されて、末端まで運ばれます。ちなみに膜に包まれた細胞内小器官(ミトコンドリア等)は細胞体から末端に1日に40cm程度運ばれます。細胞質に溶けているたんぱく質等は1日1mm程度です。どうやって運ばれるかというと軸索輸送によって運ばれます。軸索輸送にはATPが必要で軸索に沿ってある微小管に沿って運ばれます。神経末端に運ぶ(順行性輸送)時にはキネシンという物質がくっついて運びます。細胞体に戻るときにはダイニンという物質がくっついて運びます。ちなみに帯状疱疹のウィルス(ヘルペスゾスター)も免疫が弱っているときには細胞体から順行性輸送により運ばれ、神経の走行に沿って疱疹ができます。破傷風菌は神経末梢から侵入し細胞体に逆向性輸送により運ばれ脊髄に到達し抑制性物質を放出するため痙性麻痺が出現します。

 神経伝達物質生成に必要な酵素等が神経末端に運ばれると、伝達物質を生成しシナプス小胞に蓄えられます。  


神経伝達物質の存在箇所と生産箇所は違うのでですが、まず存在箇所を理解しておくことが必要です。


アセチルコリン ・・・神経筋接合部、副交感神経の節前・節後線維、交感神経の節前線維、脳の神経の             一部に存在。

グルタミン酸  ・・・中枢神経系の多くの興奮性伝達物質

γ-アミノ酪酸 ・・・脳における多くの抑制性物質

(GABA)

グリシン     ・・・脊髄と脳幹におけるシナプス後抑制の伝達物質

ノルアドレナリン・・・交感神経の節後線維に存在

(ノルエピネフリン)

ドーパミン    ・・・脳の黒質と被蓋に存在

セロトニン    ・・・脳幹に多く存在 食道、腸

ペプチド     ・・・P物質は脊髄後角に多く存在し、痛みの伝達物質。オピオイドは脳や消化管に存在し、脳では疼痛を伝える神経を抑制する。呼吸抑圧、便秘、利尿、鎮静、縮瞳の作用あり。

プリン作動性伝達物質・・・アデノシン、ATP、一酸化窒素がある


全て臨床では大切なものですね。


 中枢神経系では1つのシナプスの興奮性シナプス後電位(EPSP)では閾値よりも下であるため、興奮は発生しない。多数のシナプスからの興奮性シナプス後電位(EPSP)が一つに集まることによって興奮が発生する。これを加重といいます。抑制性シナプス後電位(IPSP)はEPSPを抑制するため、これらを統合することによって興奮が発生するかが決まります。


 シナプス電位の加重には時間的加重と空間的加重があります。まず時間的加重ですが、1つのシナプス電位は一定の間隔で刺激を加えると、どんどん興奮性が高まります。その間隔は5~10msecでの刺激が必要となります。空間的荷重は1つのニューロンに対して数百~数万のシナプス結合を受けているため、同時に多数の刺激が加わると興奮性が高まります。

 また、ニューロン間のシナプス結合には発散と収束があります。発散とは1つのニューロンから多数のニューロンに対してシナプス結合をしている状態です。収束とは多数のニューロンが1つのニューロンに対してシナプス結合している状態です。

 シナプス結合の種類には多数あります。①興奮②シナプス後抑制③シナプス前抑制④脱促通⑤脱抑制⑥反回抑制(フィードバック抑制)⑦フィードフォワード抑制⑧反響回路

 シナプス伝達の効率が変わることがあります。まず第一に先行刺激を与えておくと2回目の刺激で伝達物質の放出量が増加します。先行刺激のために伝達物質の蓄積が起こっているために生じます。これを促進といいます。逆に減少することを抑圧といいます。同じ刺激を反復的に与えておくと刺激を止めた後、数10秒~数分程度、シナプス伝達の増強が起こります。これを反復刺激後増強といいます。この反復刺激後増強が数時間~数日続くときには長期増強といいます。