『課長試験は辞退させて下さい。』


直属の部長に言いました。。。この一件で相当動揺しているようでしたが、案外すんなり聞いてもらえました。


『課長試験の件はわかった。けど辞退するってことはお前の評価も次の対象者に割り振られるんだから、その辺理解しとけよ。』


『はあ。。。』


評価が割り振られるっていう表現もわかるようでよくわかりませんが、まあどちらでも構わないことです。

でもわざわざそれを俺に言う必要があるのだろうか??


『あっでも課長試験辞退と退職っていうのはリンクしないから。。。』


なんか都合の良いことですが、どうでもいいので頷いておきました。

その夜は早速支社長に呼ばれて居酒屋で状況ヒヤリングと引き止めのお話が。。。


今回退職するにあたってはまさか本当の事を言うといろいろと面倒臭いことになるので、とりあえず家業を継ぎますってことにしました。

母親が介護アドバイザーをやってるってぐらいで特に家業って呼ぶようなものはうちにはないんですが、ま・その辺は適当に説明しました。


『経営コンサルをやるんだったら、うちの会社で課長やって経営サイドからの仕事ってのを経験しておくのも損じゃないだろう。』


ってなことを言われました。

うちの会社のようなところで課長やったって経営ビジョンなんて養われる筈ありません。随分笑える話です。

何の権限も許されない課長職なんて給料下がるは、部長の便所掃除みたいなことばかりやらされるは意味ありません。

部長にならずに万年課長なんてことになるとほぼ遺伝子的死亡の状態になっちゃいます。


とはいうもののどうやって自分の辞意の固さを伝えるのか??


そういえば今日の営業会議で支社長が配った資料があったな。。。


その資料にあったのは、、、

『松下幸之助語録から”道”』

でした。


道・・・松下幸之助

自分には自分に与えられた道がある

広い時もある せまい時もある

のぼりもあれば くだりもある

思案にあまるときもあろう

しかし心を定め 希望をもって歩むならば

かならず道はひらけてくる

深い喜びもそこからうまれてくる


概略はこうした内容です。実はこの言葉にとっても勇気づけられたのも事実なのですが、支社長に言いました。


『まさにあの言葉が僕の心です。本当に素晴らしい言葉に出会わせて頂きました。ありがとうございます。』


『そうか。。。そこまで決心したのなら止めようがないな。』


ということに。。。。

男38歳。家族持ち。

歴史的不景気。。。


なのに会社辞めちゃいます。決めたんです。

もう少し後に言おうと思ってたのに、早まってしまいました。


『累積評価点数』溜まって、もこのままいくと来年度は課長試験でした。


『お前を課長試験にノミネートしようと思うんだけど、この間会社を辞めたいとか言ってたよな。あれどうなったんだっけ。このご時世だから、そんな直ぐにどうこうじゃないんだろ。課長っていう肩書も邪魔にはならんし、とりあえずここにいるんだろ。』


うちの部長に会議フロアーに連れて行かれて問い詰められました。


『考えてみます。』


『は!?考えるってお前。。。』


かなり動揺している様子。。。


『支社長にも回答しなきゃならんし、一両日中に答えてくれよな。』


『少し時間もらえますか。』


『。。。。。。。。』


その日から出張だったので、明日正式に言わなければ。。。


うちの会社は大手コンピュータメーカーの子会社です。従業員も○千人を抱え、売上は毎年順調に右肩上がり。

この決算期も親会社の赤字を横目にしっかり黒字でしょうかシラー


僕は入社15年目。医療システム営業部に所属しています。医療なんてうちの会社では亜流の仕事だと言えます。いわゆる『システム機器販売』と言われるモノ売り営業ですから、利益率は低いし『仕損じ』なんて言われる状況に陥る可能性も高い業種です。うちのメインビジネスから見れば売上額、利益も相当低い訳ですし、あんまりやりたくないところかもしれませんね。


この不景気で少し見直されはしてますが。。。


そんな中僕のいるところは私の尊敬・崇拝する上司が1世代で築き上げた見上げるような実績があって、そこで医療システムの王道を学ばせてもらいました。

なのでこの仕事に誇りを持っていますし、本当にやりがいのある仕事だと思っています。


しかしこの2年の間に僕ら営業の置かれる立場は厳しいものになりました。


『コンプライアンス』という錦の御旗のもと、膨大に増える手続き、、、事務処理、、、管理部門からの締め付けは営業マン一人一人の『やる気』『情熱』『挑戦』。。。といったポジティブなものを一切排除してしまいました。


『ポイントゲッターなんて必要ないんだよ。』


隣の部署の営業部長が平気でこんな言葉を口にします。

数字を達成しない営業なんて。。。疑問ばかりが頭をめぐります。工夫も挑戦もしない人間が増え、歯車になることを選ばざるを得ない現在。。。萎える気持ちを奮い立たせますが、いつしか自分の気持ちに限界が見え隠れし始めました。


『仕事がちっとも楽しくない。』


いつしかそう思い始めました。そんな中一生懸命に受注した商談も、、

『うちのSEを使わないなんて、いわゆる商社販売だよな。不正取引になる可能性もあるから、受注意義を社内で説明しないと駄目だ。』

と言われました。


決めてもらう為にどれだけ営業が勉強し、汗を流したか。。。全く理解しない会社。

そんな会社に居続ける意味がわからなくなった時、厳しくとも精一杯働ける場所へという気持ちが固まりました。




『この時期に??』

『危ないよ。。。。。』

『今の会社は大手で安心じゃない。。。』

『家族は反対しないの?』

『収入は大丈夫?』


いろいろな心配の声が。。。。。耳の後ろから聞こえてきます。


確かに怖い。。。マンションの借金はまだ30年残っているし。。。車だって3年リースで去年買ったばかりドクロ

収入は特に気に掛かります。

みんな会社辞める時ってどんな準備をしているんだろ?俺って考えが足らないのかな?ぬるい、、甘い考えなんだろうか?


時に不安になります。


けれど決めたんです。信じるのは自分の腕一つビックリマーク一度しかない人生。。。もっと仕事をできるはず。もっと仕事を楽しめるはず。。。


明日『辞意』を表明します。