日本の外傷(けが)治療は、アメリカ、ドイツなどと比べると一歩遅れをとっています。がん治療や心臓の治療と比較して、いまだに重要視されていないのが現状です。その証拠にがんセンター、循環器センターはあるのですが、外傷センターというのは存在しません。

海外では外傷センターが存在し、重症外傷はすべてそこに集められます。ヘリコプターなどを利用し、半径300kmくらいの範囲から患者さんがあつめられるそうです。治療レベルも高く、日本と比較して数多くの外傷専門医がおり、症例数も桁違いです。日本ではこの外傷センターの役割を救命センターがしていますが、救命センターでは外傷だけでなく、脳卒中や中毒などすべての救急疾患をみるため、外傷だけに特化しているわけではありません。そのため外傷センターと比べると、どうしても治療成績や入院期間に差が出てしまいます。

しかし最近になり、外傷治療の質を向上させようと様々なとりくみがなされています。その1つに 『JATEC』というものがあります。JATECとは外傷初期治療のガイドライン、およびそのための講習会で、初期の外傷治療の標準化、すなわち外傷の見逃しをなくしたり、どこの地域でも同じような初期治療を受けられるように開発されました。現在とても人気があり、なかなか受講できないくらいです。

日本の外傷治療は日々進歩しています。欧米レベルに近ずく日も、もうすぐではないかと思います。