肩関節脱臼 〜整復方法について〜 | 理学療法士~physical therapist~HIROのブログ

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日々臨床現場に立ち、大学院で研究活動に励む理学療法士(physical therapist)が関節外科やスポーツ医学、リハビリテーションについて最新の技術や報告などを紹介していきます。このBlogからソーシャルネットワークが広がれば良いなと思っています。

久しぶりの更新になってしまいすみません。

今回は肩関節脱臼後の整復に関して少し書きたいと思います。
その前に、、、少しだけ。。。肩関節は人間の関節の中で一番自由度が大きい関節です。そのため脱臼を起こしやすいというリスクを抱えています。

脱臼後は正しい方法で整復しないと関節内骨折を起こしたり、関節唇損傷が増悪しそれが反復性脱臼の原因となります。関節唇とは肩関節内にある土手のようなもので関節脱臼を起こさない為には非常に重要な関節内構造物です。

今から4年前(2007年)の日本肩関節学会での報告を紹介いたします。
今から紹介する報告は医師に対してのアンケート結果からの報告です。

Q1:外傷性肩関節脱臼について第一選択にしている徒手整復法はどれですか?

A1:挙上整復法(61.1%)(99人)、Stimson法(18.5%)(30人)、Hippocrates法(5.6%)(9人)、
  Kocher法(6.8%)(11人)、その他(6.8%)(11人)

最も多くの肩関節専門医が使用している挙上整復法とはMilch’s techniqueと言われています。

その方法は、、、

① 患者を仰向けに寝かせて、術者(整復する人)は患側(脱臼している方)に立ちます。

② 患側の上肢(腕)を前方挙上位で軽度外転位としていきます。(図1)

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③ その状態から完全挙上位または90°屈曲位になったら、徐々に外転していき、頭外方に牽引する。(図2)

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④ ①~③の手技でほとんどの場合整復されると言われている。しかし、もし整復されない場合は術者の母指で骨頭(腕の付け根)を関節窩(肩の受け皿)に押し込みながら肩を内旋(内側へ回旋)させます。(図3)

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この挙上整復法およびMilch’s techniqueは上腕(腕)に付着する腱板(インナーマッスル)や三角筋、広背筋などの走行がほぼ一方向に牽引される事で安全に整復できる点がポイントです!


次にStimson法(スティムソン法)です。

① 患者さんを診察台にうつ伏せに寝かせ、患側上肢を診察台の端から下ろさせてフリーにします。

② 患側上肢の手関節に2.5~5.0kgの重錘バンドをつけて15~20分そのままにします。(図4)

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③ 肩関節周囲筋が疲労してきて緊張が解かれたときに整復されます。

Stimson法のポイントは15~20分の待っている間、決して急がずに自然に整復されるのを待つ事です!!



次にHippocrates法(ヒポクラテス法)です。

① 術者は患者の手および手関節をつかみ、足部を患者の腋窩(脇の下)にカウンターをかけるようにして当てます。

② その状態でゆっくりと上肢(腕)を牽引します。(図5)

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Hippocrates法のポイントは牽引する際に軽度内旋・外旋動作を加えると整復されやすいと言われています。


次にKocher法(コッヘル法)です。

① 患者を仰向けに寝かせて、術者(整復する人)は患側(脱臼している方)に立ちます。

② 肘関節を90°屈曲させた状態で牽引します。(図6)

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③ その状態からゆっくり60°程度まで外旋していきます。(図7)

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④ その状態で徐々に内転させ肘関節を胸部前面まで動かします。(図8)

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⑤ さらにゆっくりと内旋させていくことで整復がされていきます。(図9)

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総括をさせて頂きます。
挙上整復法、Stimson法、Hippocrates法は上肢(腕)を牽引して三角筋や腱板などの肩関節周囲筋の緊張を解いて整復するのが特徴です。
しかし牽引方向が違います!牽引が内転方向はHippocrates法、外転方向は挙上整復法、前方はStimson法です。
Kocher法はてこの作用を利用して整復する方法です。

このように肩関節脱臼の整復といっても多くの整復法が存在します。
大切なのは術者のテクニックありきではなく解剖学知識に裏打ちされたテクニックだと考えます。また、患者の状態や体格や性別、関節の弛緩度などを総合的にその場で判断して実行できる術者の医療従事者としての柔軟度が重要と考えます。
また、整復後の固定方法やその期間、固定後のリハビリテーションなど反復性脱臼に移行させない為に大切な事はまだまだ山ほどあります。
次回は整復後の固定方法について紹介させて頂きます。

今回の整復の撮影において明大前整形外科クリニックの松崎忠将柔道整復師、遠山桃子柔道整復師にご協力頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。


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