写真(↓):福音書的な静物Ⅰ(1916年)

 

 

形而上的室内画シリーズの中の一つ

 

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1915年、第一次世界大戦が勃発すると、27歳のデ・キリコはフィレンツェの連隊に入隊し、北イタリアのフェッラーラの病院に配属される。

 

そこで何らかの図面を引く仕事に就かされ、行動範囲はかなり狭められた生活を送ることとなった。

 

夜は自室にこもって、数少ない絵の素材を用い、独特な小宇宙を作りだした。

 

「福音書的な静物Ⅰ」には、図面引きに使う定規などの文具、近くのユダヤ人街の菓子店で売られていたビスケット、立体的な地図、青と緑のパネルなどが、不思議な配置で描かれている。

 

青いパネルには、イタリア広場に出てきそうな神殿の柱の影が並ぶ。

 

このようなこれまでにない不思議な絵を、デ・キリコは「形而上絵画」と呼び、哲学者ニーチェの影響を次のように語っている(一昨日紹介した「予言者」の中のイーゼルに架けられたパネルには、神殿のイラストとニーチェが発狂した都市Torinoの文字が記されている)

 

この新しさとは、情調にもとづく奇怪な、奥深い、神秘的で、限りなく孤独な詩情なのである」(粟津則雄『思考する眼』による)

 

デ・キリコの「形而上絵画」は、後のシュルレアリスムに多大な影響を与えた・・・びっくり

 

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続く・・・走る人

 

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