寒山百得の最終作品(102番目)は再出発の絵となっています・・・
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写真(↓):寒山百得最終作品(102番)
NHK『横尾忠則 聖者を描く「寒山拾得」の世界』の中で、カメラはアトリエに入り、インタビューを交えながら、この作品の制作過程を追っていました。
絵の構図は、画伯が初めて寒山拾得を描いた時と同じものだそうです。
死相の現れたゴールインの絵とはうってかわり、のびやかさと明るさに満ちています。
寒山拾得は極楽浄土に引っ越して、そこでまたトイレットペーパーと掃除機で遊び始めたようです。
「絵は描けば描くほど面白くなくなるね」
「あえて仕上げない方が、見る側がイマジネイティブになるんだ」
「本当は、白いキャンバスのままが一番いいんだ」
「寒山拾得は自由で、約束事なんかない、芸術そのものだよ」
「ほら、こうやって赤いドットを入れたら、より絵らしくなって、面白くなくなったでしょ」
「だからこの辺でやめることにする」
そう言いながら、汚れた布に沁み込ませたシンナーでドットの一部をふき取り、102番目の制作を終えた(製作時間は1時間25分)。
画伯はキャンバスから少し離れ、改めて絵を見直し、「これは僕の新たな出発点なんだ」と晴れやかに宣言した。
87歳の再出発、画伯の目は澄んでいて、その奥に寒山拾得と同じ狂気の色が見えた・・・
「横尾忠則・寒山百得展」を見て、寒山拾得はこれからも一定数の人たちにとって、アイドルであり続けるに違いないと思った次第です・・・