Aria pro ll JETについて。(バリトン話含む) | Honolulu Music Society byなかじー

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出自は日本生まれの日本育ち。
米国籍を取得してハワイに在住する音楽家であり実業家。3児の父。

今までの日本人には発想出来なかった独自の視点と解釈を元に展開されるちょっとだけ凄いブログ。
更新不定期。

Aloha!



ハワイもようやく落ち着いて来たのかな?って思える雰囲気に、上辺的にはなって来ました。うわべは、ね。



僕ら一般市民の目からしたらまだまだなんですけどね。



さて、今回は以前からわりと取り上げなきゃなぁって思っていたギターについて語ります。



Aria pro IIのJETシリーズ。


『シリーズ』と書いたのは、実はコレ


日本では未発売のモデルがいくつかあるからです。



基本的なスペックは、ポプラボディにミディアムスケールのメイプルネックを24フレット構成にしてボルトオンしたもの。


ピックアップとブリッジの違いがJET1と2を分けている。


日本で販売されているJETというのはアメリカではJET2という事。



なんか『アリアプロツーのジェットツー』ってツー、ツー、同音が重なってて鬱陶しいんでアレなんですが、その辺どうなんでしょうね(笑)


ネーミングのセンスってところからするとα(alpha)とβ(beta)とかの方がカッコ良かったんじゃん?とは思いましたが、まぁそこら辺はなかじー的POVなんでスルーで。


なんか最近はバリトンのモデルも出たみたいですから荒井貿易さん的にはわりとJETに力を入れているのかな、って感じはしますね。


ケチをつけるみたいで申し訳ないんですが、言ってしまうとバリトンギターってのがね、またちょっとセンス的に旧いというか。


無論アメリカでは昔からカントリーやポップスではバリトンが使われて来たので、そこで活かされる可能性を否定するつもりはサラサラなくて。


ただ、現代から未来を繋ぐ世代に向けてのニーズって事を考えるとギタリストが『6弦よりも低い音程』にコミットするのはよりヘヴィでラウドなギターサウンドを必要としている為であったりするわけで。


コレ(バリトン)は7弦とかとは違って専用の金属パーツを充てがう必要は無くて、ギターの木部の造作だけで出来ちゃう範囲内のバリエーションモデルなんで安く作れるメリットを優先したらこうしかならないでしょうねっていうのが僕の印象です。


バリトンギターって結局は弦長が長いだけなわけです。


って事は、フレットとフレットの間隔が長い分押弦する為のストレッチがキツいって事ですよね。


通常バリトンギターで担える音程は普通の6弦ギターのチューニングよりも4度から5度程度下げたものになるわけです。


弦のゲージもだいたい013〜062とかを張るわけですが、バリトンギター自体がマイナーな楽器なんでバリトン用の弦がいつまで安定して供給を受けられるかちょっとわかりません。


おまけに必要とされる弦長というのは普通の6弦ギターのものよりも最低ラインで2.5inch以上は長くないと、ペグに充分な巻きが不足してしまうのでギターの仕様によっては相当に弦のチョイスの幅が狭くなるのは知っておかなきゃならない。


そしてこのJETシリーズバリトンのスケール、30inchなんだそうで(笑)


こうなると、スケール、コードのダイヤグラム、押弦の際の縦方向のストレッチが相当キツくなる事と、当然フロントピックアップのマウント位置の差からサウンドの倍音も大きく変わるので、け現代的なニーズに照らしてみると実は実践的には使いづらいデメリットの方が多いんですよ。


実際、先のYouTubeのインプレッション動画で弾いてる人も持て余してるでしょう?


バリトンでスライド弾くって、あーた(笑)



例えばワンステージ通してバリトンギターで弾くのならまた話は別なんでしょうが、特定の楽曲だけバリトンに持ち替えなきゃいけないようなシチュエーションでは弾く側も卓の側も非常に厄介なものになる、となかじーは思うのです。


ちょっと昔話になりますが、なかじーが昔ハワイにやって来る前に足を運んでいたライブハウスの店員さんが新しくギターを買いたいって話をしていたんです。


その子はジャズマスターが好きで自分のバンドではFender Japanのジャズマスターを使っていたんですよ。


彼が雑誌の新製品情報で見せてくれたのがたしかBacchusのジャズマスタータイプで、それがバリトンだったんですよ。


僕は反対したんですね。


だって彼のバンドはダウンチューニングする必要性がある楽曲は無かった筈だし、バリトンギターをわざわざEADGBEで弾くバカは居ないし、カポタストをつけてレギュラーチューニングの状態で弾く基地外はもっと居ないし、そんなもんに13万も払うのバカバカしいじゃないですか。


彼は『えぇ…』って膨れっ面してましたけど、楽器の話ですからね?楽器の機能面を無視して見た目だけで選んでしまうって、絶対音楽家にはなれないパターンです。


案の定彼はバンドのメンバーから新しいギターを散々扱き下ろされてお蔵入りし、Fender Japanに戻してましたが。


そりゃそうですよ。楽器って音楽のためにあるんですから。バリトンだってなんだって、それを弾かないと成立しないからこそ、その仕様があるんです。


言い換えれば、その音楽が主流からは外れたものならそれを成立させ得る楽器って数は売れないし、


主流たり得る音楽に必要とされる楽器はより多く売れる。


かつて(1950〜1960年代)FenderやDanelectroがやっていたラインナップをニッチとしてやって行こうって事なんでしょうけど、それってお爺ちゃん向けって事じゃないですか。


荒井貿易さんっていうのは、


何故、若い人がこの先何十年後になっても使って貰えるような物を発想しないのか、不思議でならないんですよ。


50代60代下手すりゃ70歳代の人が昔を懐かしんで手慰みにするような物をいくら企画したってその楽器には未来なんかないでしょう?


20年と待たずに遺品になるようなものをわざわざ製品化する意味がわからない。


エレキギターというモノを、エレキギターが活きる音楽ジャンルを未来に遺そうとするのであれば、もっと若い子がギターに胸をときめかせて授業中にセンセの話はそっちのけでノートに落書きするようなギターを発想しないと。



ハナシは戻りますが、先述したようにバリトンはフロントピックアップのマウント位置が相当変わっている為に通常のギターのような音作りは厳しいと言えます。


歪ませたらミックスポジションやフロントでの巻き弦の音程感はかなり失われてアンサンブルで埋もれる可能性を感じます。


よってコンテンポラリーな用途としての重低音を弾くにはバリトンよりも7弦だよねってずっとなかじーは思っているわけですね。




ハナシはかわって、普段からなかじーの記事をご覧の方はご存知かもしれませんが、わりとこのJETシリーズの構成要素って『初心者向けのギターはかくあるべし』って僕が言って来た事やなかじーの好みに近い部分が実現されているように思えるんですね。


ちょっとJETの特徴を纏めてみましょうか。



・ポプラボディ

・無駄な装飾を廃してある

・ミディアムスケール

・24フレット

・トレモロレス

・シンプルな電装系

・2ピックアップ構成

・バランスの良さげなオリジナルデザイン

・極めて安価である

・P-90タイプのピックアップ



こんな感じですよね。


わりと僕が普段からここで言ってるような事が上手く収まっている気がして、気にはなっていたんですね。



荒井貿易担当者『なら、買ってくださいよ!』




そうですよねぇ、


『買って応援』っていう普段からの僕のスタンスからすると、こういうのは是非買ってあげたい。



だからハワイにこのギターが入って来たら買うと思います。ただ、わざわざ本土から取り寄せてまでは買えないかな。


っていうのは、やはりある程度の本数が入って来てくれないとネックの良し悪しを選べないから。


何度も言ってますが、エレキギターで最も重要なのはネックなんです。


中国とかインドネシア製の木材のクオリティコントロールがひどく雑ゆえに、たまにとんでもない良材が紛れていたりする。


僕的にはやはりそういうのを探して買いたいですからね。あと、ぶっちゃけこのJETシリーズ中でも特にJET2は好きではあるんだけど、やはり仕事では使えないと思うからです。



僕は色んなところでギターを弾かなきゃいけないんですが、多くの場合は海のそばなんです。


おまけにそれが船の上だったりするのもわりとあるのでパワーのあるタイプのシングルコイルのピックアップとか、アノダイズドのピックガードは実践では困るんですよ。


シングルコイルのピックアップはノイズの問題もあるんですが、実をいうと無線の電波を拾いやすいんです。


ピックアップにパワーが有ればあるほどその傾向は強くて、船上無線機の電波ってのもまた強力なんで演奏中にスピーカーから無線の音声が流れて来たら台無しじゃないですか(笑)


センターミックスでハムキャンセルが出来るとしてもワンステージ全部それで通せるとは思えないし、元々僕は足元にエフェクターをズラリと並べて弾くタイプじゃない。


演奏中はピックアップを頻繁に変えるしボリュームやトーンもよくいじる『手元で音を作る』タイプですから。


そんな僕の用途からするとピックアップはハムバッカーの方が合っているという事。


ギター単体での音の好みからするとシングルコイルが好きなんですが、ギター単体での音の良し悪しって僕にはわりとどうでもいい事なので。


アノダイズドのピックガード、


コレは単純に潮風に晒されると錆びるのがダメって事なんです。


見た目が華やかだしシールディングの効果もあるし個人的には好きなんですけどね。


ちなみにFenderのギターが昔アノダイズドのピックガードを付けていて、すぐに仕様を変更していますよね。


アレは弾き傷が付いてそこのところから錆びて汚くなるのがアカンかったからです。



普通に汚くなるくらいならなんて事ないんですけど、アルミって潮風や波しぶきに晒されるとホントに錆びるとかじゃなく1年も使うと朽ちてくるレベルなんで、


容易にリプレイスの効かないオリジナルデザインのパーツが付いたギターは過酷な環境下では長く使い続けるのが難儀である事が予想出来るわけです。


僕のSGだって既に金属パーツは3回以上変えていますし、ネジ類は全部ステンレス製です。フレットも2回打ち替えてますが、この前フレットをステンレスに変えました。


海の上に出たら指板だってローズやエボニー系ならほぼ毎回掃除しないといけないし、理想的なのはポリエステル系のクリア塗装で指板も塗っちゃう事かなぁと最近は思っていたりするんですけど、フレット交換の事を考えるとなぁ。


趣味でギターを弾く方なら1日1時間前後くらいの使用頻度かもしれないので、実感される方は少ないかもですけど、毎日何時間も弾くのが日常となるとホントにフレットって消耗品でしかない事に気づかざるを得ないんです。


ただ、JETシリーズ安いんですよね(笑)


だいたい$270くらいなんで、下手すると仕事です使えるレベルまでファインチューンすると倍くらいの額になる。


僕のEpiphoneなんかこれまで修理したり不具合のある部品を交換したりしている金額を合わせたら同じヤツが6本くらいは買えているという。


ただ、僕のヤツはちょうど韓国製から中国製に切り替わった世代のモデルなんで今のとは全く違うんです。


韓国製のEpiphone Specialはボディが合板でネックはメイプル。


中華製のEpiphone Specialはボディもネックもマホガニー。


僕のはボディがベニヤ合板でネックはマホガニー。


今はインドネシア製が主流なのかな?ボディがポプラでネックはマホガニー。


僕のは全然ちがう。


今のやつの方がちゃんと作られているっていう意味ですよ(笑)


僕はギターを弾いてお金をいただくために地味な伴奏屋に徹する事を自分に強いてますから、演奏中に余計な自己顕示欲を起こさないためにもあんまりなんでも出来ちゃう楽器は必要ないんです。




いろいろ書いて後から気づいたんですが、なんとこのJETシリーズ、僕らが買える仕様は全部ピックガードがプラスチック製でした(笑)


となると、唯一のネガティヴはノイズって事か。


荒井貿易さんってなんでこういう所で昔自分とこでやっていた、スレイヴピックアップってやらないの?


それが難しいならP-90じゃなくてP-100みたいなスタックタイプのソープバーを載せればいいのに。


アノダイズドのピックガードを奢るくらいの余コストがあるなら出来たでしょうに。


結局のところ、そういうコスト配分とか楽器としてこの先どんな使われ方をしていくのかっていう部分が目先の部分で終わっているのかな、と思うんですよ。


多分、荒井貿易さんでAria pro llの企画している人って定年退職が近いような方なんじゃないかなと思えるわけで、近年のAria pro Ilのラインナップをみるにつけ彼が『自分がただのおじさんになる前に自分の功績を華々しく遺して花道にしよう』っていう意識が透けて見えてくる気がするんですよ。


40万、50万とかするマグナやPEとか、今さら聖飢魔IIやSHOW-YAのギタリストのシグネチャーモデルをわざわざレギュラーラインとは別に型起こしした物に何十万とか値段付けて売るとか、正気の沙汰じゃなかった中でわりとまともなギター造りをしているじゃん?


そんな風に思えたのが件のJETシリーズだったわけですが、なかじー的な評価では


80点!


マイナス20点分は、初心者向けの価格帯のギターにバリトンを設定したりアノダイズドピックガードを付けたり、自社ノウハウがあるのにハムキャンセル機能を載せなかったところ。


まぁ、ハワイに入って来たら練習機に買いますよ。


あくまで荒井貿易さんの企画担当者さんの定年退職への御祝儀として、ですが(笑)



Mahalo!


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