企業再生・起業支援~終わりは はじまり?~ -2ページ目

イノベーションへの解(その7)

おはようございます。


第8章 戦略策定プロセスのマネジメント


前章では、破壊的イノベーションの新事業を成功させるには、安定的事業で成功した文化とは違う文化を持つ新しい(または別の)組織を作り、新しいことに取り組んだ経験をもったマネージャーに任せることが良い、安定的事業で成功している組織とマネージャーでは、破壊的イノベーションの新事業は失敗するという結論が提示された。


この章では、戦略という観点から、「正しい戦略は何か」ということよりずっと重要な「どうやって戦略を導き出すか」という戦略策定プロセスのマネジメントについて、クリステンセン教授の研究成果が紹介されています。


まず、「正しい戦略は何か」ということより「どうやって戦略を導き出すか」がずっと重要な理由は、破壊的イノベーションの初期段階は、将来を予見することが難しく、何が正しい戦略かはっきりしないからだ。


この解説にはドキッとしました。言われたらその通りですが、多くの新規事業の現場で「正しい戦略は何か」を見つけるため延々と議論している印象があります。私もそういう議論の会議に出ていた記憶がありますね。


そういう時は、現場における問題解決策を重視すると良いと。教授はこれを「創発的戦略」と名付けています。


勿論、いきなり現場ベースで新規事業が始まることはまれで、意識的で分析的なトップダウンの戦略、これは「意図的戦略」と名付けられていますが、ここがスタートになることが普通です。


教授は、この2つの戦略を状況に応じて使い分けることが大事であるという点と、もう1つ、戦略が実行に移されるときに通る、各企業独自の「資源配分プロセス」のコントロールも非常に重要であると主張しています。「資源配分プロセス」はフィルターのようなもので、良いアイデアでも、ここで「やっても意味がないという結論」や「的外れな具体策」というアウトプットが出てしまっては、新事業はうまくいかない。


さらに教授は、経営者は漫然と「創発的戦略」が出てくるのを待つのではなく、「発見志向計画法」という手法を使えば、非常に効率よく戦略を生み出すことができると主張します。「発見志向計画法」とは、

1.財務計画を作る

2.どのような仮定(複数)が正しいと証明されたら、1の計画が実現するかを考える。

3.2の仮定(複数)の中で重要なものを実験(実行)する。

4.3の実験をもとに戦略を手直しながら本格的に投資する。

というプロセスになります。
ちなみに持続的イノベーションの場合は(「創発的戦略」「発見志向計画法」ではなく)「意図的戦略」「意図的計画法」が有効で、これは多くの企業で一般的に行われているやり方です。


また、この戦略策定プロセスのマネジメントが順調に進みだしても、経営者は自動操縦モードにしてはいけないと警告しています。


破壊的イノベーションの開始・・・「意図的戦略」

試行錯誤の時期・・・「創発的戦略」

有効な戦略が確立・・・「意図的戦略」

と事業の状況にあわせてモードを切り替えることが成功するために重要だと。


最後に教授は、成功した経営者は、成功した戦略を見出した創発的戦略プロセスに関する記憶を失い「成功した戦略を意図的に実行した」という部分だけしか覚えていないことが多いことが、ベンチャーを含め多くの企業で、新事業の立ち上げが失敗する最もありがちな理由だと見切っています。


私もそうですが、気づかず偶然「創発的戦略」と同じことになって上手くいったケースが多いんでしょうね。



イノベーションへの解(その6)

こんばんは。今日は、


第7章 破壊的成長能力を持つ組織とは


を読んでいきます。この章では、新事業の経営チームを選び、新成長事業を成功させる組織構造を構築しようとする経営者が指針にできる理論が紹介されています。
非常に素晴らしい(と私が思う)理論が、たくさん解説されているので、量は多いですが順に紹介していきます。


1.新事業の成功には、成功に導く「能力」が必要。
この能力という概念は「資源」「プロセス」「価値基準」という3つの要素に分解できる。


2.資源とは、いわゆる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「ブランド」などのことですが、クリステンセン教授の無数の研究によると、新事業がつまずく最も多い原因(約半数)が、マネージャーの選択ミス=不適切な人材が新事業のリーダーに選ばれたこと。
「コミュニケーション能力が高い」「結果を出してきた」といった「正しい資質を持っているか」を基準にして人材を選ぶと失敗につながるので、教授は、新事業を遂行するに適した「経験」のある人材を選択しなさいと。
安定した事業部門で成功してきたマネージャーには、そこで成功するために必要な能力やスキルを獲得している可能性が高いが、その能力やスキルは、新事業を立ち上げるときに直面する問題には役に立たないことが多い。


3.プロセスとは、現場の業務フローから、事業計画を決めたり、予算配分を行ったりする側面的なプロセスまでを含みますが、既に企業内に存在しているプロセスは、今の事業を成功させるためのプロセスなので、そのプロセスは、新事業を立ち上げるときに能力を発揮しないことが多い。


4.企業が存続するためには、社員が企業の収益モデルに沿って収益をあげるのに役立つ物事を優先させないといけないが、その企業がもつ「価値基準」によって優先順位が決まっていく。例えば年商5億円の企業であれば、年商5千万円の事業に魅力を感じやすいが、年商1,000億円の企業では年商5千万円の事業に興味を持ちにくいだろうと。
しかし、大企業でも、小規模な事業部門を持つことができたら、新しいビジネスチャンスにも一生懸命になれる意思決定者を失わずにいられると。


5.新事業の組織が、設立間もない頃にあげる成果は、その資源、特に人材に負うところが大きいが、やがて組織の能力は「プロセス」や「価値基準」へと移動する。ヒット商品やサービスのお蔭で成功し、株式公開後燃え尽きてしまうことが多い理由の1つは、創業メンバーが次の人気商品を開発するための「プロセス」や「価値基準」を打ち立てることができなかったため。


6.成功を収めた企業が成熟するにつれて、社員は、それまでの仕事のやり方や意思決定手法が正しいやり方だと思い込むようになる。組織のメンバーが、仕事のやり方や意思決定の基準の、意識的に判断するのではなく当たり前のこととして受け入れるようになるとき、これらのプロセスや価値基準が「企業文化」となっていく。


7.破壊的イノベーションは、きわめて不定期に生まれるので、これに対応するための慣例的なプロセスをもっている企業はない。また、最初から大きな収益があがることもないことから、実績ある企業は興味をもてない。
一方、規模の小さな企業や事業部門であれば、資源は乏しいが、プロセスや価値基準を破壊的イノベーションに適合したものに変えることが比較的容易になる。つまり総合的に判断すると素晴らしいチャンスになる。


8.新成長事業を構築する経営者の仕事は、
・任務にふさわしい経験をもったマネージャーを配置し、
・必要な活動を支援するプロセスを持ち、そうした活動を優先させる価値基準を持つ組織に、新事業を任せるように心を砕かないといけない。


9.新事業を成功させるには、任務にふさわしい経験をもったマネージャーを配置することが1番ではあるが、将来のマネージャーを育成するには、前途有望なマネージャーを、まだ
荷が重い責務や状況のなかに放り込んで経験を積ませることが重要。これが、必要な能力やスキルを学ばせる唯一の方法。


第7章は私が経験してきたこと、考えていたことが、こと細かく解説されていて、気持ちよく読めました。


イノベーションへの解(その5)

こんばんは。


忙しさにかまけてブログをサボっていたらあっと言う間にもう月末ですね。やばい、ヤバイ。


第6章 コモディティ化をいかにして回避するか



この章は、なぜこの本の中に入っているのか良く分からない内容の章です。と、そこを批判しても意味がないので、ちゃちゃっとまとめてしまいましょう。



クリステンセン教授の研究によれば、どんな驚異的なイノベーションでも、いつかは必ず「コモディティ化」される運命にあり、この運命に逆らうことはできない。では経営者はこの運命に対して、どう対処すれば良いのか?

に対する答えは「これから金が向かう場所へ=脱コモディティ化の場所へ」立地を移動しなさいと。

これも教授の研究によれば、コモディティ化がバリューチェーンのどこかで発生している時、「脱コモディティ化」がバリューチェーンの別の場所で発生している。そして「脱コモディティ化」はバリューチェーンの中で、まだ性能が十分でないところで起こる、と。


なぜ、こういうプロセスが発生するのかという説明は曖昧ですが、事例を使って解説が進みます。


例えば、デスクトップ・コンピュータ産業の初期、製品の機能性が十分でなかった時期は、独自アーキテクチャと統合型ビジネスモデルを持つアップル・コンピュータが最も成功し、魅力的な利益を上げていました。


しかし1990年代、性能が十分な状況になり、コンピュータのコモディティ化が進んだとき、立地場所を移動しなかった(できなかった)メーカー各社は収益性の悪化に悩まされました。


その時、デスクトップ・コンピュータ産業のバリューチェーンの中で、「脱コモディティ化」が発生した場所は、顧客との小売インターフェース(デル)と、サブシステムの中のインターフェース(インテルとマイクロソフト)だった、と。



言われてみれば、なるほどと納得の事例ですが、しかし、企業にとって、事業の立地場所を変えることは非常に難しい挑戦だと思います。

私も、前職で社長になった時、コモディティ化を回避するという流れではなく、やむにやまれず事業の立地場所を変えることに取り組みましたが、余り思い出したくないくらい苦しい仕事でした。

社長の私だけでなく、きっと周りの人たちも苦しかったと思います。その痛みをうまく捌くのが社長の腕になりますが、大きな会社になるほど簡単な話ではないと思います。



すみません。

第6章と同じように、最後は私も脱線してしまいました。


イノベーションへの解(その4)

今日の東京は雨は降っていない割りに妙にじめじめした一日でした。

エアコンを切っていたせいでしょうか。スーパークールビズの必要性を

少し感じてしまいました。前置きはこれくらいにして、本題に戻りましょう。


第5章 事業範囲を適切に定める


新成長事業をできるだけ速く、大きく成功させるためには、製品の設計、生産、販売、流通といった業務のなかで、どれを社内で行い、どれを提携先や下請け業者に任せるべきか、というテーマで、結論は「状況に基づく確かな理論が欠かせない」と、至極当たり前の話でした。


じゃあどんな理論を理解しておくべきか、ということで「コア・コンピタンス」が登場します。クリステンセン教授は、「今日はコア・コンピタンスでないと思われる業務が、将来、独自の方法で習得していなくてはならない、非常に重要な能力になるかもしれない」と、単に得意な活動分野に特化することの誤りを指摘します。


では「今日何を習得し、将来何を習得する必要があるのか?」

答えは「顧客の片付けるべき用事」をベースに考えたら良いと。つまり、「製品が十分良い状況」では外部委託を活用して専門化を進めることが正しいが、「製品が十分でない状況」では、できるだけ内製化して、独自のアーキテクチャを進化させるべきだと説きます。設計と製造の間にあるインターフェース、製造と流通の間にあるインターフェース、これらが相互依存的で、結果、独自のアーキテクチャになっているほうが性能の最適化には焼くに立つと。


さらに教授は

1.独自のアーキテクチャの進化により、技術改良のペースは上がり、やがては顧客の利用能力を上回る。

2.その結果、性能より、欲しいときにすぐ顧客に与えることができる供給能力が顧客に喜ばれる。

3.つまりスピードと応答性を高める必要が生じ、独自のアーキテクチャを捨て、モジュール型に進化させる。

4.モジュール方式の普及により、業界を支配していた統合型企業が解体されていく。

という構造変化も解説します。

しかし4の段階までいく頃には、顧客のニーズも変わり、また独自のアーキテクチャをもつ企業が優位に立つとも付け加えています。


結論の繰り返しになりますが、要は「状況に応じて、適切な戦略をとること」がポイントですね。


イノベーションへの解(その3)

今日は、

第三章 顧客が求める製品とは

第四章 自社製品にとって最高の顧客とは

を読んでいきます。


第二章で「新規参入者は破壊的イノベーションで勝負せよ」と説いたクリステンセン教授は、第三章では「どのような製品を開発すべきか」というテーマで、その破壊の足がかりについての考察します。

私が読んだところ、第三章のポイントは次の2点です。
1.消費者が片付けようとしている用事を見抜き、その用事をこなすために「雇用する」(役立つ)ものを開発すべき。
2.新製品の事業計画を策定するプロセスのなかで、捉えた機会(チャンス)を定量化する作業が発生してくるが、定量化のために利用できるデータは、一般に、製品の属性や潜在顧客の人口統計的、心理的要因に基づく特徴に沿って体系化されているので、それに引きづられてしまうと、結果的に逆効果を招く方法で市場を細分化してしまうことになる。

企業は、誤った分析(細分化の枠組み)で顧客が欲しがらない製品を市場に出すことが多い。

そうならないためには、顧客ではなく「状況」を分析し、消費者が片付けようとしている用事を見抜きなないという話ですね。

言われると「なるほど」ですが、実際にやるとなると難易度は高いです。例えば、個々人の能力の問題。ターゲットを見抜くセンスやモチベーションを持った人が必要です。また、経験に乏しい(現場を知らない)人が、消費者が片付けようとしている用事(困っていること)をイメージすることも、普通は難しいですし。


続いて第四章。

テーマは「顧客」です。


ローエンド型破壊では「現在使っている主流製品なみの性能で、価格の安い製品を欲しがっている人々」なので、顧客の発掘は容易で、企業側がローコストオペレーションのモデルを考案すれば済む話。勿論、いわゆる価格革命を起こすための技術開発は非常に困難なプロジェクトになるので、ローエンド型破壊も楽な話ではないです。



一方、新市場型破壊で顧客を見つけることは、ローエンド型破壊に比べると非常に困難です。

まず(第三章でも出ていたように)ターゲットを見抜くこと自体が難しい。

また、非常に高度な技術を使う必要があっても、「誰でも使える」ように提供しないとダメ。

さらに、今までに市場がないものだから、顧客に届けるチャネルも作らないといけない。


しかし、ローエンド型破壊でも、新市場型破壊でも、既存企業や競合企業がまったく脅威を感じないうちに、売上をかなりの水準にまで伸ばすことができたソニーやバルーン血管形成術の事例は非常に興味深い話ですね。既存企業にとってローエンド市場は一般的に利益率の悪い市場なので、そこでシェアを失い始めても脅威を感じないし、新市場が誕生しても最初は小さな規模なので脅威を感じないと。


これも言われると「なるほど」という話です。

少し本題から外れますが、大企業は高級品だけでなく、新興国向けのローエンド製品市場にも打って出ておかないと、下からの追い上げに気がつかないまま規模縮小に追い込まれるリスクがありますね。