何年か前、某刑務所で全受刑者に向けて講演をしたことがある。
B級の刑務所で、累犯者(2回以上の受刑経験者)の多い施設なのね。
組織関係の受刑者も多いと聞いた。
講演が決まってから当日までは毎日が不安と恐怖の日々。
すごいプレッシャーで仕事を受けてしまったことを後悔するばかり。
いわゆる慰問とはわけが違うわけよ。
一人のヤク中として自分の体験と回復の話をするのだし。
講演日が近づいてくるとただ逃げたい気持ちでいっぱいだった。
いよいよ当日がやってきた。
大きな講堂の舞台の上に立つ。
800名くらいの男性受刑者が隅から隅まで
ごましお頭が多い。
一斉にわたしの方を注視している。
足がすくむかと思っていた。
声も震えるかもと。
だが意外とわたしは平気だった。
いざとなると妙にキモが座る。
そんなところあったっけ。
いや、なかったはず。
話始めると、あちこちで瞬きの合図が起きる。
わかりやすいウィンクもある。
彼らが自由に動かせるのは「目」だけなのだ。
30分かそこら無事に話終わって
舞台の袖に引っ込んだ。
あれから私はもうどんな処に
呼ばれて話をするのもこわくない。