2024年度からの法定雇用率引き上げを前に、企業における障害者雇用が活発化しています。しかし、依然として課題なのが、障害者と健常者間の賃金格差です。

私自身、下肢に障害を持ちながら、車いすを使用していない者として、この問題には強い関心を持っています。なぜなら、障害の有無に関わらず、誰もが能力を発揮し、対価を得られる社会こそが、真の共生社会だと考えるからです。

厚生労働省の調査によると、身体障害者の平均賃金は月21万5千円、フルタイム労働者でも月24万8千円なのに対し、18年の全労働者の平均賃金は月30万6200円と、大きな差があります。

この格差の原因の一つは、非正規雇用の比率が高いことです。合理的配慮のしやすい身体障害者でも正社員比率は約50%にとどまり、精神障害者や発達障害者になると20%台まで下がります。

また、障害者に与えられる仕事内容が限定されていることも問題です。清掃や書類整理といった単純作業に集中しがちで、スキルアップや賃上げの機会が限られています。

こうした状況を改善するためには、企業側が障害者雇用の質に意識を向けることが重要です。単に雇用数を増やすだけでなく、正社員登用やキャリアパス制度の整備、多様な業務への配置などを通じて、障害者が能力を最大限に発揮できる環境を整える必要があります。

もちろん、合理的配慮には費用がかかります。しかし、それは単なるコストではなく、障害者雇用を通じて得られる多様な視点やアイデアという付加価値を生み出す投資だと捉えるべきです。

日揮パラレルテクノロジーズやSHIFTのような、正社員登用や昇給制度の工夫に取り組む企業が増えています。こうした取り組みは、障害者雇用の質向上だけでなく、企業全体の活性化にもつながるでしょう。



 

下肢障害を持つ者として、私はこうした企業の姿勢を心から応援しています。そして、共生社会の実現に向けて、企業と社会全体が一体となって取り組んでいくことが重要だと強く感じています。

障害者雇用における賃金格差問題は、単なる経済的な問題ではありません。誰もが能力を活かし、誇りを持って働ける社会を実現するためには、企業だけでなく、私たち一人ひとりの意識改革も求められています。

障害者と健常者が互いを尊重し、共に支え合う社会こそが、真の豊かさにつながるのではないでしょうか。

 

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