私が父と暮らした時間より
離れて過ごした時間が長くなり
私も大人になり、妻になり、母になった。
絶対に許せないと思っていた相手の気持ちが
少しはわかるようになったのだ。
父は母を愛していた。
だから淋しくて、不安でたまらなかった。
短気で、不器用ではあるけれど
彼なりに家族を守ろうとはしていたのだ。
私は今は寧ろ
あのときの母より
父に同情できるのだ。
そう思った私は、父にカナデの誕生を知らせた。
すると退院後…ケーキを届けてくれた。
その数日後父から電話があったのだが
乳腺炎の高熱で病院にいるときだったので
電話に出られなかった。
すると彼は携帯も家の電話も解約してしまった…
かわいそうな人。
だから私は、チャンスを与えることにした。
敬老の日、幼稚園で祖父母にハガキを送ることになった。
私は3枚ずつ、子供らに持たせた。
夫側の両親、それから私の父と母の名前を書いて。
そしてこちらの住所を添えて。
それから約2ヶ月後。父が来た。
今まで私がドコにいるのかも知らなかった父。
絶対に許せないと思っていた父。
でも本当は絶対なんてない。
絶対に続くものは、愛であれ、憎悪であれ、ないのだ…。
お菓子と野菜とタオルが入ったバックに添えられた、
「畑でできました。よかったら味見してください」
と書いた、見覚えのある下手な字のメモを見て、
なんだか涙が止まらない。