アンリ・ファヨールと言えば、
経営学を学んだ者なら、
一度は聞いたことのある名前であろう。
管理の創始者と目されている
高名な実業家、思想家である。
その主著は、
『産業ならびに一般の管理』
永い間、いつかは読みたい
と思っていた書籍である。
この度、時宜を得て
私にとっての幻の名著を
手に入れて拝読した。
とてもわかりやすく読みやすい。
期待に背かない
素晴らしい内容であった。
独創的、体系的で、経験に即して深い。
さっそくにワード文書にまとめて
スタッフと共有した。
弊社のスタッフには、
リーダーまたは
コンサルティングをめざす人は
必読だとメッセージした。
どこがすごいのか?
なによりも、
今、私たちが生きている
現代のテーマかと目を疑うくらい
ビビッドな問題の提起と
本質を洞察した透徹したその思考である。
彼はまず、経営の機能を
技術、商業、財務、保全、会計の5機能と、
それを統べる管理機能に分ける。
その上で有名な管理の原則を挙げる。
①分業、②権威・責任、③規律、
④命令一元化、⑤指揮統一、
⑥個人的利害の一般的利害への従属、
⑦報酬公正、⑧集中、⑨階層組織、
⑩秩序、⑪公正、⑫従業員安定、
⑬創意力、⑭従業員団結
である。
そうして、管理職能を
①計画、②組織、③命令、④調整、⑤統制
の5つに分けて
それぞれの
目的、意義、内容を詳説している。
その記述がなるほどとうならせるのである。
こんにち、
ドラッカーやクーンツなどの思想家も
おおむねこの原則にしたがって
マネジメントの仕事を分類している。
一世紀以上も前の思索だが、
眼前で書かれたように妥当性がある。
古典たるゆえんである。
彼は、フランス人であったがゆえに
経営学のメッカ、アメリカから離れており、
アメリカで再発見されたとする。
ずいぶん無礼な話である。
個人的には、
本職の会議のことや
目下、関心のある組織図のことなど
自分の考え方を確認でき
すこぶる刺激を受けた。
それらの内容については
機をあらためてご紹介したい。
今日は、管理の5つの職能について
彼が記しているところで
さすがと思ったところを記しておこう。
(1) 計画
・ 計画するとは、
将来を予測して同時に将来に備える
ことを意味している。
・ 計画の主要な表現、
その感度の鋭敏な標識、
最も有効な手段は、活動計画である。
・ 優秀な活動計画の一般的特質
① 計画の統一性
② 継続性
③十分な弾力性に富む
④正確性
・ 優れた活動計画の作成に必要な条件と資質
① 人の扱い方
② 活力
③ 道徳的勇気
④ 経営首脳者の安定性
⑤ 事業経営についての専門職業的能力
⑥ 事業経営についての一般的知識
(2) 組織
・ 企業を組織するとは、
原材料、設備、資金、従業員など、
事業の運営に有用なあらゆるものを
企業に備えつけることである。
・ 組織の管理任務
① 活動計画が熟慮を重ねて作成され、
確実に実施されるように注意すること
② 社会的有機体と物的有機体とが
事業の目的、資源、要求と
適合しているかどうか監視する
③ ただ一つの有能で強力な
経営指導を確立すること
④ 諸活動の集中を図り、
諸努力の調整に努めること
⑤ 明瞭簡潔で適確な決定を下すこと
⑥ 適切公平な採用人事に力を用いること
すなわち、各部課は
有能で活動的な人を長に戴き、
また各任務担当者は
最も効果的に働きうる地位に
配置されねばならないこと
⑦ 権限を明確に規定すること
⑧ 創意力と責任感の気風を鼓舞すること
⑨ 成績に対して
公正にして適切な報酬を与えること
⑩ 過失や間違いに対しては
制裁を加えること
⑪ 規律を遵守させること
⑫ 個人的利害が
企業全体の利害に従属するように
注意すること
⑬ 命令一元化の原理に特に注意すること
⑭ 物的秩序と社会的秩序の
維持を監視すること
⑮ すべてを統制下におくこと
⑯ 規則主義、官僚的形式主義、
繁文縟礼を克服すること
・ 事業の経営者と従業員の価値の要素
① 健康と体力
② 知性と精神力
③ 道徳的資質
④ 一般的教養
⑤ 管理的知識
これらの知識は学校では教えられない。
経験から与えられた
既得の知識を体系化し、
手に届けるようにするべきである
⑥ その他の職能についての知識
(3) 命令
・ 命令の使命は、構成された組織体を
機能させることである。
・ 命令の目的は、
全体利益のために、従業員に、
できるだけ有利な働きを
させることである。
・ 命令を担当する管理者に必要なこと
① 従業員について深い認識をもつこと
② 無能力者を排除すること
③ 企業と従業員との間で結ばれる
いろいろな協約をよく認識すること
④ 自らよい手本を示すこと
⑤ 社会体を定期的に検討すること
それに当たっては一覧表を使用すること
⑥ 指揮の統一と
努力の集中を準備する会議に
部下の主要な協働者を参加させること
⑦ 些事末梢にこだわらないこと
⑧ 従業員の間に
活力、創意工夫、献身の気風を
みなぎらせるよう注意すること
(4) 調整
・ 調整とは、
企業活動と成功とを
容易ならしめるように、
すべての事業活動間に
調和をもたらすことである。
・ 毎週定例部長会議
従業員にやる気を起こさせ、
その義務の達成を容易にさせる
最良の方法の一つは部長会議である。
(5) 統制
・ 統制の機能は、採用された活動計画、
与えられた命令、承認された原則に従い、
これに一致して推移しているかどうかを
検証することにある。
・ その目的は、過失や誤謬を修正して、
これを繰り返すことを避けるように
警告することである。
思うのだが、ここに挙げられた事項を
表面的にさらっと読むのではなく、
各項目が実践では何を意味するのか、
それらを全うするには
どのようにすればよいのか、
何を習慣化していけばよいのか、
真剣におのが仕事に照らして
思考することこそ、
真摯な姿勢ではなかろうか。
経営コンサルティングと
会計事務所の融合
組織デザイン研究所&
御堂筋税理士法人
小笠原でした。