ヴェルが、この仕事を始めて
一番最初に驚いたのが、自分と会員様との違い

学生時代、社会人になってからも
いろんな人が周りにいると思っていたけど
それが、井の中の蛙だったと思った一年目


『お付き合いしたことがないんです…』
正直それは、想像の範囲内だった

でも『誰のことも好きになったことがないんです』
それは、範囲外だった


それからは、こうも人によって違うのか…
その連続で、先輩たちには、共感できないことが
サポートにもなると言われるも
なかなか心穏やかにとはいかない


交際中止の連絡も、気を遣った
何度か会えていた方だし、
『きっと落ち込むだろうな…』

だけど、ヴェルの心配など、どこ吹く風で
電話にも、メールの返信すらない


『そりゃ、一喜一憂しないでとは言ったけど…』

心配になって、また連絡するも
私の心配に、気づく感じもなく
明るく応えたその方に
何故にそんなに笑うのか 私にはわからなかった


あんなに、この活動について辛いと言ってたのに
また、この頑張る道しかないのに
私は心苦しさで、気持ちがしんどいのに 


『これ以上会うと、答えを出さないといけなかった』

あぁ そうだ 婚活なのだから
お見合いして、デートを重ね、答えを出す当たり前だ
そんなことは、百も承知なはずなのに

*******

そんな彼女を、すぐに好きなってくれた彼が現れる
三度目のデート、彼は、真剣交際を提案した

前もって彼の気持ちを聞いていたヴェルは、
彼女をフォローするも、彼女は頑なな気持ち。

嫌じゃない けど、まだ好きじゃない

好きとは、なんなんだろう…

一緒にいてて、どう思えば好きなのか…

自分の感情がわからないという 
実感の湧かない話だ

そんなこと、誰かに教わらずとも
感じてきた感情だと思っていた 

だけど、彼女は、以前の交際で
好きになれないまま交際して、相手を傷つけた
その経験から、この気持ちに、答えを出したいそう

ふとした疑問は、解決すると、ふたたび胸が痛んだ 

本心は、この方にしかわからない
だけど、今までの笑顔に、いろんな気持ちを隠してる

それを紐とかないと、好きはわからないだろう
痛みを伴う 隠している気持ちを認めるまで


*******  

都会の片隅にある店舗 窓に映る夜景を眺めてる 

その横顔は、憂いを帯びて美しい

『ここの夜景、眺めているとなんだか落ち着く。
こういうのなんて言えばいいのかな。』

私に向けて言ってるのか それとも独り言か 

きっと正解はない 
この方の心が穏やかになるのなら 
いつでも観てほしい

******* 

あなたに向かう私の心
どんどん大きくなっていく 

笑顔が嬉しくて 興味を持って欲しくて 
ついつい とりとめのない話をしてしまう… 

もう誰も 好きにはならない 心を開かない
そう思っていたのに…  

本当は気づいているの
私を気遣ってくれていることを 

いつからか、不器用な心が愛おしい
どうしようもなく、惹かれている 

そんな自分の気持ちを理解するまで
気がついたら、だいぶあなたを待たせていた

大切な想いほど なかなか口に出来ない… 

デートでもふざけたふりして
心を落ち着かせている 

そろそろ伝えないと…

*******

ヴェルさんといろんな話をしながら
昔の彼の話もした 

学生の時 好きだった言われて 
好きがわからなかったから 
好きになろうと、思い込もうとしていたあの頃

過去の汚点のこと 手放してやっと楽になった 

そして彼のことは 本当は好きじゃなくて 
なんとも思っていないと 気づいたこと 

手痛い失恋をしてからは 
男の人と付き合うことが怖くなったこと 

話ながら自分自身の頭の中が 整理されていく

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彼女の話を聞きながら
気持ちが決まったのだと思った

だとしたら、私が出来ることは、背中を押すこと

『よく頑張りましたね。
大切な言葉を口にするには
本当に勇気が必要ですよね…』

彼女は、うなづいた。

『彼、口にはしないけど、きっと待ってますよ。』

『…ですよね。彼いつも優しくて、頼りになって
気がついたら、ずいぶん待たせてしまったけど…
ちゃんと言います。』

今度は、ヴェルがうなづいた。

好きになるまでの時間
それは、自分を好きになれるかどうか