シャネルツイードのドレスは裾に別布付いてフリンジ始末
これはフロントスリットチュニック?
同素材ツイードに肩に羽根の生えたコート
ざっくりシャネルツイードの金ボタンベストに
ミニタイトの上にラップマキシスカートのスカートアンサンブル
シャネルツイードのロングVカーデ
ついにエクリュ以外のツイードは端から色違い糸のフリンジ
フロントフラワービジュートップス
シャネルがいつもショー会場とするパリの歴史的建造物グランパレだが、今回は入り口も異なりこぢんまりとした空間になっている。中に入ると、まるで邸宅に招かれたようにソファが置かれ、どことなく親密な雰囲気。着席しようとしたソファには黄金色の麦のオブジェが置かれている。この秋冬は麦の穂のモチーフがデザインに取り入れられている。
シャネルのアイコンともいえるファンシーツイードのストレートドレスやセットアップは、いつになく落ち着きのあるナチュラルカラー。色もフォルムもシンプルでナチュラルな中に、ビジュー刺繍がきらめく。足元も同系色のブーツやニーハイブーツで落ち着いたムード。ツイードコートはショルダーから胸元へフェザーを飾り、袖口や裾に麦の穂を揺らす。
手仕事の技を生かしたスタイルであるがゆえ、ふわふわとした風合いに仕上がっている。ツイードに何かの獣毛かフェザーを織り込んでいるのか、その素材の奥に何があるのかがつかみづらい。ふわふわのタッチは布帛なのかニットなのかも分からないくらいの繊細さだ。ビジューを留め付けながら細かなギャザーをたたんでいくようなテクニックなど、ふんだんにクラフトテクニックを取り入れながら、ストレートラインの静かなシルエットに収めていく。
シャネルのオートクチュールの歴史を振り返って思うのは、どんなデザイナーが舵(かじ)を取ろうとも、根底に職人たちの細かな手仕事があるということ。それは同時に、決して絢爛(けんらん)豪華を競うためのデザインではなく、ファッションとはやや距離を置いたようなポジションを取っているように思う。今回のコレクションでも、そのナチュラルな色使いとストレートなカッティング、フラットソールのブーツからそんなスタンスを感じた。
絢爛豪華ではなく、女性たちが自由で自立した美しさを得られること。そこをベースにして手仕事を取り入れているように思う。女性の生き方や気持ちに忠実にという姿勢こそが、シャネルのオートクチュールを他とは違うものにしている。新しいアーティスティックディレクターが何をどう描くのかにも期待したい。