私の中での「オバチャン」という生き物の定義は、
時に「お節介なほどに世話好き」で
「ふてぶてしいくらい図々しい」のだけれど、
どこか「愛嬌があり憎めない」人である。
この要素に合致すると、私にとって「オバチャン」認定である。
ナカラの電話局にも認定オバチャンが1人いる。
いつ行っても、何かしらをもぐもぐ食べながら仕事をしている。
このオバチャンがまさに「お節介なほどに世話好き」で
「ふてぶてしいくらい図々しく」、
だけど「愛嬌があり憎めない」のである。
先月分のインターネット使用料を支払いに行ったところ、
バナナ片手に対応してくれた。
オバチャン:「あらアミーガ~、元気?」
わたし:「はいはい、元気です。ありがとう」
オバチャン:「ところで先月教えてあげた日本人には会えた?」
実は先月の支払い時、ナカラに他の日本人のご家族が
暮らしているので、会いに行ってごらんなさいということで、
そのご家族が住んでいるという宿泊所を教えてもらったのだけれど、
もうここにはいないということで会えなかったのである。
わたし:「いや、なんかもう日本に帰ったらしいですよ」
オバチャン:「そんなことないわよ!まだいるわっ」
わたし:「いや、でもXXX(その場所)でしょ?いなかったですよ」
オバチャン:「本当?ちょっと待って」
と言い、誰かに電話を掛けるオバチャン。
オバチャン:「やっぱりまだいるわよ。今から行きましょう!
時間あるんでしょ?」
わたし:「あー、えーっと、まァ、はい」
二人でその日本人(だとオバチャンが言い張る)方に
会いに行くことになった。私の車で。オバチャンを助手席に乗せて。
車を走らせていると、オバチャンが言う。
オバチャン:「ちょっと銀行寄ってくれる?」
わたし:「えッ、時間かかる?」
オバチャン:「なーに、すぐ済むわ」
ということで、途中オバチャンのためだけに銀行に寄った。
オバチャン:「ところであーた、今週末ナンプラまで行く?」
わたし:「行かないけど、なんで?」
オバチャン:「この書類をナンプラの電話局まで届けないといけないのよ~」
ここでは郵便システムが機能していないため、
書類などを届ける際には長距離シャッパ(バンタイプの
公共ミニバス)の運転手やタクシー運転手に
乗客を運ぶついでに書類などを運んでもらうのが、
郵便の代わりとなっている。
オバチャンは途中で都合のいい知り合いを見つけて、
その書類を運んでもらうよう頼んでいた。
そしてその後、無事にその日本人の方に会うことができた。
その道中、オバチャンが使っていたカプラナ(ろうけつ染めの
伝統的な布、主に腰や頭に巻く)製の小物入れに私が興味を
持ったことから、カプラナの問屋を教えてもらうことになった。
カプラナはナカラでは公設市場でも1枚(だいたい2m×1mほどの
大きさ)を250MT(約750円)で買うことができるのだけれど、
問屋に行ってみると6枚~10枚セットで285MT(約855円)から
750MT(約2,250円)で買うことができ、柄も市場より
豊富にあったのである。
ほぼ毎日通っていた通りにある店だったのだけれど、
入ったことは一度もなかったので、今まで知らなかったのである。
オバチャンに感謝しつつ戻ろうとすると、
オバチャン:「ちょっとお砂糖買いたいから、(隣にある)
スーパーに寄ってもいいかしら?」
と言うので、まァ砂糖ぐらいなら、
ついでに自分の買い物でもするかと承諾した。
ところが案の定オバチャンの買い物は砂糖だけには
とどまらなかった。
わたし:「もう行きますよ~」
オバチャン:「あら、もう済んだの?今行くわ~
これは息子が大好きだからね(チョコシリアルのこと)」
買い物かごいっぱいの買い物を済ませたオバチャンは、
両手に買い物袋をたくさん下げて、車に向かう。
途中、ビニール袋いっぱいのバナナを持った売り子が近づいてくる。
売り子:「バナナどうですか?」
オバチャン:「バナナ?いくら?」
売り子:「75MTです」
オバチャン:「75MT!?あんた何言ってんのよ!バナナが75MTですって?」
売り子:「えっと、じゃあ50MTにしときますんで」
オバチャン:「50MT?買うわけないでしょ!
あんたここモザンビークよ!はい散った散った!」
と、見事にまくしたてられた売り子はたじたじ、
あっさりと引き下がった。
わたし:「オバチャン、いくらだったら買うの?」
オバチャン:「25MTね、まったくナカラは物価が高くてやってらんないわ」
まァ確かにナカラの物価は他の地域に比べての高い。
そして車に乗るなり、
オバチャン:「じゃあこの荷物を家に置いて行きたいから、
うちに寄ってくれる?」
もうこうなると、どうにでもなれと思うのである。
わたし:「はいはい、近いんだよね?」
オバチャン:「近いわよ、市役所のところだから。市役所どこか分かる?」
わたし:「分かりまーす」
市役所のエリアには一般の人向けの家やアパートも
立ち並んでいるが、市議会の議長の公邸や事務所、
軍関係者や各省庁の宿舎などがあるエリアである。
それをひとつひとつ車の中から丁寧に説明してくれた。
オバチャン:「はい、もうこれであなたもここら辺のことが分かったでしょ?」
オバチャンの旦那さんはナカラ基地で軍のパイロットをしているので、
彼女もその宿舎の一角に住んでいた。
オバチャン:「はい、ここがあたしの住むアパートよ、ここの2階なの」
わたし:「荷物運ぶの手伝いましょうか?」
オバチャン:「いいわ、大丈夫。手伝いを呼ぶから」
と言い、オバチャンは威勢よく階下から2階のベランダに向かって叫んだ。
するとまもなくお手伝いさんが来て、荷物を運び入れ、
オバチャンから夕飯の支度と週末のパーティー用の食事や
お菓子の準備の指示を受けていた。
オバチャン:「そうだ、うちにあがっていく?ちょっと見るだけ。ね?」
わたし:「あー、じゃ見るだけね」
と言ってオバチャンは家を案内してくれた。
アパートなのでこじんまりとしていたが、綺麗にしてあり、
家具などは立派な木製の飾り棚などをあつらえていた。
玄関を入るとまず炊事場があり、リビングまでの廊下部分に
また小さなキッチンとダイニング、その奥は3部屋に分かれており、
6畳程度のリビングと寝室、子ども部屋があった。
どこも清潔が保たれており、かつ整頓され、
とても居心地が良さそうだった。
オバチャン:「これで全部、小さい家でしょ?」
わたし:「いやそんなことないですよ。この飾り棚とかとっても素敵!」
オバチャン:「これね、来る人みんなに褒められるわ!
引っ越してきたとき、ここで作らせたのよ」
オバチャンはシモイオ(Chimoio)という中内陸部の出身で、
旦那さんの仕事の都合でここナカラに暮らしているという。
退職後はシモイオに帰る予定だと話してくれた。
曰く、ナカラは物価が高すぎるので到底暮らしていけないという。
2時間半ほどオバチャンと楽しい時間を過ごした後、
電話局まで彼女を送り届けた。
なんともてんこ盛りな半日であった。

