「セニョーラ、お腹がすいたよ~(だから金をくれ)」
「セニョーラ、パンを買いたいんだよ~(だから金をくれ)」
これらは買い物に行った店先などで物乞いの子ども
または大人に言われる言葉である。
「セニョーラ、これ買わないかい?」
「うーん、今はいらないです」
「お腹がすいたからパンを買いたいんだよ~」
これは物売りの場合で、
まず商品を売る→売れないなら金だけくれという風にワンクッション入る。
だいたいを断るか、物(工芸品や貝殻)を買うのだけれど、
目の見えないお父さんと子どもの場合や、ここでは働くのが
難しいと思われる車いすの人たちには小銭を渡す時もある。
先日、車のアンテナの調子が悪く、外に出て調整していたところ、
両手に大きなシャコガイを持ったおじいさんが近づいてきた。
「セニョーラ、お腹がすいたからパンを買うので
10MT(約30円)くれないかい?」と言ってきた。
物売りなのに物を売る前に現金を乞うとは、
まったく商売をする気がない物売りである。
しかもかなり具体性のある論理的な依頼だ。
ただ現金を渡すのはあまり好きではないので(しかも物売りに)、
その手に持っているシャコガイはいくらか聞いてみた。
すると、50MT(約150円)だと言う。
ビーチで同じような貝を買おうとすれば200MT(約600円)はするものだ。
これはお得と思い、それを買うことにした。
おじさんにしても10MTを乞うたのに50MT手に入るのだから、
その方が良かろう。
しかし私の財布には、その時200MT紙幣しか入っていなかった。
10MT乞うぐらいなのだから、150MTもお釣りを持っているはずがないだろう。
少々面倒なことになったと思ったが、一応聞いてみた。
わたし:「ごめんなさい、今200MTしかないのだけれど、お釣りないよね?」
おじいさんは少々困惑した様子で私に背を向けた。
どうやら有り金を確認しているらしい。
そして片手に100MTと、もう一方の手のひらに小銭を
じゃらっと乗せて少し気まずそうな顔を見せた。
そりゃそうだ。
明らかにそこにはお釣り150MTがあり、
パン(1個2MT:約6円)を買う現金を充分に持っていたが、
現金を乞うたことが私にバレたのだから。
わたし:「お釣り、ありますね!じゃあ200MT払うから、150MTお釣りね」
するとおじいさんは私に100MT紙幣を渡した。
おじいさん:「外で買ったらもっと高いから、100MTでいいだろう?」
わたし:「なんで!?あなたが50MTって言ったんだから、あとお釣り50MTくださいね!」
おじいさん:「じゃあ、この貝2つでどうだい?」
わたし:「1つでいいです、はいッお釣りあと50MT!」
おじいさんは非常に名残惜しいようで、10MTコインを一枚ずつ
私の手のひらに乗せながら私の顔色を窺っていた。
わたし:「50MTでしょ!」
なぜだか私がおじいさんをいじめているみたいになった。
あまりにおじいさんが唾を飛び散らしながら一生懸命
喋るものだから、最後の10MTはおまけしてあげた。
それでもシャコガイが60MT(約180円)は破格だったので、
私は満足だった。
おじいさんはすぐ先で他の人にも売ろうとしていたが、
うまく売ることができず、数分で私のところに戻って来た。
おじいさん:「セニョーラ、これ40MTでいいから買ってくれよ~」
わたし:「いや、もういいです」
おじいさん:「じゃあ30MTにするから!」
わたし:「いや、本当に1つでいいんです、ごめんなさいね」
と、最後は30MT(約90円)にまで値下げしたのだった。
