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9月開幕のラグビー ワールド カップ フランス大会に挑む日本代表を多角的に取り上げる連載「Our Team」(私たちのチーム)は、埼玉(旧パナソニック)-東京ベイ(旧クボタ)の顔合わせとなったリーグワン1部プレーオフ決勝(20日、国立競技場)を元日本代表WTB吉田義人氏(54)が展望する特別版。埼玉のV2か、東京ベイ悲願の初制覇か。そして、この戦いが4カ月後のワールドカップにどうつながるのかを探る。

決勝初進出の東京ベイは、FWの圧倒的な破壊力が武器だ。密集戦で優位に立ち、スクラムで反則を誘う。大きくて強いFWをSOフォーリー、CTB立川主将らがうまく機能させて勝ち進んできた。これまで通り、自分たちの強みであるFWを前に出し続けることに徹するべきだ。

埼玉はピッチに立つ15人全員が、どこで何をすべきか分かっているチーム。懐が深く、相手の隙を突くことにたけている。準決勝の横浜(旧キヤノン)戦でも、前半は先にトライを許しながらPGの3点を刻んで点差を離されず、後半にギアをトップに入れた。

一人一人のプレーの精度が高く、それを80分間やり続けられる。状況に応じてどんなプレーを選択するのがベストなのかを熟知する「ラグビーIQ」の高さも強みで、埼玉が優位に立つ。

東京ベイはFW戦で圧倒することが勝利の鍵。50−50では厳しい。70−30にすれば勝機がうかがえるはずだ。特にスクラムで何度も埼玉の反則を誘うことができれば、流れ一気にやってくるだろう。FW戦が50−50なら埼玉が15~20点差の勝利、70−30なら東京ベイの僅差の勝利と予想する。

この両チームには埼玉LOデヤハー、東京ベイマークスら、南アフリカ代表として2019年ワールドカップ日本大会を制したメンバーがいる。他のチームでも、外国のトップスターが多く活躍している。これはすなわち、リーグワンで国際経験を積めるということだ。東京ベイの新人王有力候補であるWTB木田ら若手の成長も、こういう環境が果たす部分は大きいと思う。

9月のワールドカップを念頭におくと、日本の司令塔の最有力候補である埼玉SO松田力也のゲームコントロールに注目したい。パスオプションの豊富さや安定したキックで、オーストラリア代表のフォーリーとどう張り合うか、ワールドカップのいいリハーサルになるだろう。(元日本代表WTB、7人制チーム「サムライセブン」代表、日本(スポーツ教育アカデミー理事長、明大OB)

★埼玉の〝15連勝〟中
2003年のトップリーグ(TL)創設後、両チームは22度対戦リーグ戦15 、マイクロソフトカップ2、TLカップ1、リーグワンリーグ戦3、リーグワンプレーオフ1)して埼玉の18勝4敗。このうち、昨季のリーグワン開幕戦は埼玉に新型コロナウイルス感染者が出て不戦敗となったため、試合をしての敗戦は2006年度のTLリーグ戦(●20−25)が最後。以降、埼玉は〝15連勝〟している。

★今季リーグ戦の埼玉―東京ベイ・VTR
3月4日に熊谷ラグビー場で対戦。埼玉が東京ベイをノートライに抑え、30−15で逆転勝ちした。前半は東京ベイがSOフォーリーの4PGで12−10とリードして折り返す。埼玉は50分、SO山沢拓也がこの日2つ目のトライを奪い、ゴールも決めて17−12と試合をひっくり返した。山沢拓也は68分にはDGも決めるなど、25点を挙げる活躍。東京ベイは後半、1PGの3点しか奪えなかった。