死者に鞭打つようなことはしてはならぬが、笹井芳樹氏の自殺はいろいろ考えさせられる。

世界的名声を得て、その天才を惜しむ声もあれば、公金横領疑惑追及に、不正出張暴露…ネット上の憶測も激しい。エリートのプライドからすれば生き恥を晒すよりは…と考えてもおかしくない。

ただ私が違和感をどうしても感じてしまうのは、遺書とされるものの中に記述された小保方氏へのメッセージ。

「あなたのせいではない」「STAP細胞を必ず再現してください」。この部分だけがなぜ抜き出されマスメディアにリークされたのか。ここに深い意図があるような気がする。

もう一つ、仮に意図があるとしても、その意図どおりに世間が受け取るかどうかわからないのがいまのよのなか。

はたまた、彼の遺書こそ虚構と判じる見方もある。このメッセージはかれが本当に発したものなのか。

そう感じたのはもちろん私だけではないが、ここに今回の事件の深い闇があるのではないか。

彼ひとりが背負いこんで、問題がフェードアウトすることは許されない。

聞けば、彼の心労の一因とされた後輩、部下たちの再就職は笹井研究室が存続することで安堵。本来責任が追及されるべきセンター長が研究室の長を兼任するという。

恩赦、特赦とも言うべきなのか、理研の伏魔殿を見るような気がする。

孤高の天才は組織が生き延びるために必要なスケープゴートとされたのか。既得権益とはかくも恐ろしい力を発揮することは歴史が示している。

このところ航空機や客船の不幸な事故事件が多い、ただその原因は不思議と特定されていない。ひとつ突っ込めば特定されているように誘導されている。

あれだけの人命が失われているのにもかかわらず…。

小さな意図は暴かれるが、大きな意図はなかなか暴かれない。異論も同情も巻き込み、清濁併せ呑むがゆえに。

ニーチェは「ツァラトゥストラはかく語りき」でこう暗喩した。

「悪の深淵を覗きこむものは、すでに悪魔に飲み込まれてしまっている自分に気づかない」と。





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