このブログでもたびたび取り上げる表題ですが、


小売業と製造業のちがい。


ちょうどユニクロ柳井社長の近著『現実を視よ』のなかに、


「現地になくてはならないブランドになれ」という


項目がありました。


駆け出しの編集記者のころ、イオンの名誉会長岡田卓也氏のインタビューで、


小売業の原体験として、


「アメリカである店舗が撤退やむなしという状況に陥ったとき、『撤退しないでくれ』という住民運動がおこった。これが本物の小売業だと思う」


という趣旨の発言をされました。


この発言はのちにいろいろなところでご講演でされているので、知っている方も多いでしょうが、


当時の私にはとても新鮮でした。


十数年後の、柳井さんの著書でこの言葉をみつけたとき、


やはり柳井さんは、製造小売業ではあるけれど「小売」、「商人」というものに重きを置いている人だなあと思いました。


先だって、かの国での暴動でユニクロは物議を醸しだしましたが、


製造業であれば、リスク回避のために、ちがう国への投資、進出を考えれば済むことですが、


小売業は、この暴動にあっても、


「なくてはならない」と地元の方に言ってもらえるレベルのブランドを目指す・・


この心意気が小売業の矜持だと思いました。


もちろん製造業の商品ブランドも「なくてはならない」レベルを常に目指しているでしょう。


ですが製品、商品というものはイノベーションの速度がはやく代替品や新商品が次々と出てくるのが宿命です。


小売業はその商品のもつブランドと人で「ブランド」をつくります。


小売業も多くは製造業の持つブランドやマーケティングというものに乗った商売をしているのが現実ですが、


それでも、店舗の機能的な価値(商品、サービス、立地、品ぞろえなど)と「人」がもたらす心理的な価値というものは、


地域の人々にとってとても重要な役割を持つのだろうと思います。


おなじく、かの国で手痛い被害を受けた企業の店長も、


以前、ブログでご紹介しましたが、


「このたびの暴動で木の葉や枝は落とされたけども、この地でしっかり根を張り、幹は育っています」


と言い切りました。


たとえ、国同士がいがみあっても、地域の人になくてはならない店舗をつくる・・


これが平和産業たる小売業の真骨頂でしょう。


ネット販売もそれ自体いくら便利でも、その利便性を超える「店頭価値」をどう高めるか。


そういう本質を考えながら商売をしていくことが、これからほんとうに大事になってくるのではないでしょうか?