「ディスカウント」は、




それが他社、取引先、生産者の利益を奪うのではなく、企業の努力、




それもスタッフの福利厚生の質を著しく落とすものではないという条件である限りにおいて、




わたしは正当な企業の差別化のためのビジネスモデルと考えています。




それは、




「同じ目的において、同じ商品の質であれば、安い方がいい」




というのはやはり大多数として存在するからです。




ただ、同じ商品で、価格がたいして変わらないなら、




「あなたから買いたい」。




これも小売業の大切な要素だと思います。




あらためてこんなことを言うのは、




先日取材でまわった店舗をみるにつけ、




「ディスカウント」というモデルは、




維持し続けることが、ほんとうに大変なのだと思ったからです。




「ディスカウントストア」は、ペガサス流に言えば、




「定番商品をずっとその値段で継続集荷できるか否か」でそのレベルが決まります。




安くなるものだけ、その都度ばらばらでスポット展開する集合体は、




「ディスカウントハウス」といいます。




つまりバッタ屋さんもの、返品ながれ商品、倒産品などが主力になると、




定番の継続集荷はできませんから、ディスカウントハウスにちかいと言っていいでしょう。




ですが、それはディスカウントストアになっていくプロセスの段階で必要不可欠のものです。




それこそ、ウォルマートも創業期はスポット商品の勝負でした。




しかし、そこからなにが継続集荷に必要で、なにがスポットでよいのか、仕組みから考えていくことで、




売れ筋の定番化を進め、「ディスカウントストア」へと進化を遂げました。




そして、スポットによる集客と定番化による固定客化によって、既存業態、他社に流れていたお客を奪っていきました。




これが、チェーンストアの用語で「ラインロビング」といいます。




ヤマダ電機やしまむら、ユニクロ、そしてドラッグストア各企業もまた、そのような歴史の中で、自社の存在価値を高めていきました。




「生鮮ディスカウント」のモデルは、




食品スーパーや食品に頼らざるを得なくなった総合スーパーの食品部門のラインロビングを狙ったものです。




地域の生産地は限定されていますから、




「売り切り」「旬のもの」というくくりで鮮度と安さを両立し、




生産者へは、既存流通チャネルよりも、




利益、キャッシュ払いによる手取り額増加によって、生産者開発、信頼関係の育成をおこない、




ラインロビングを進めました。




しかし、食品スーパーも総合スーパーも、やはり食品は「砦」です。




しだいに「生鮮ディスカウント」のラインロビング化を阻止するために同様の手法を導入し始めました。




つまり生鮮は、継続集荷しなくてもよいという割り切りも一部でおこなったのです。




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これまでは、この「地魚」も生鮮ディスカウントの差別化のひとつだったのですが、




いまでは、どのスーパーでもあります。




逆に、今回非常に興味深くもってみたのが、




「生鮮ディスカウント」が、




地域生産者限定仕入れの原則をはずし、




継続集荷の手法を導入し、総花的品揃え、売場づくりにシフトしてしまっていることです。







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これらのさんまは、いずれも「地産地消」をうたう地域生鮮ディスカウントのものです。




初冬のころでしたから、旬は過ぎていましたし、もちろん地域外集荷です。




価格のボトムはほぼ一緒なのですが、




これだとさんまが1匹多いか少ないか、それが選択の基準になります。




お客もだから「価格」しかみないわけです。




文字通り、価格競争、同質化競争というスパイラルに入ってしまっています。




「生鮮ディスカウント」は、




「地域生産者」の育成と共存共栄によって達成するという当初の理念が薄れ、




品揃えの同質化が進行しています。




その意味で、理念の継続とは、かくも難しいものなのかと痛感した次第です。




価格競争がし烈なのではない、




実は企業の組織能力の維持レベルアップ、そして継続こそが「し烈」をもたらしているのではないかと考えています。




これらを克服していく方法論確立をいまさまざまな方と議論中です。