先日、友人家族とイケアに出かけたのですが、
そのときに聞いたちょっといい話。
友人夫妻はすこし前、イケアでソファを買いました。
イケアはフラットパック家具であり、持ち帰りも、組み立ても自分で行わねばなりません。
既製品に慣れた日本ではこのフラットパック家具はなじまないだろうというのが、
日本の家具チェーンの皆さんの大方の意見でした。
たしかに現在でもフラットパック家具はすこしずつ伸びてきているというのが現状です。
友人夫妻には、小学校1年生の娘さんがいるのですが、
「イケアのソファはどう?」と聞いたところ、ちょっとはにかみながら、
「好き」と答えました。
「へえ、広々していて気持ちいいのかな」と理由をきくと意外な答えが返ってきました。
「だって、パパとママが日曜日に一生懸命つくってくれたから」
うーむ・・・ちょっと感動。
小さな子供ってこういうところをしっかり見てるんですね。
大人は、ソファの大きさやデザイン、色などを基準にしてみますが、
子供はそんなことよりも、二人が協力してつくったところが大切なのです。
そう考えると、このイケアのフラットパック、つまり最後のひと手間(作成)というのは、コストを安くするというイケアの考えもあるのですが、
消費者からすれば、このひと手間によって「モノ」が「コト」になるということです。
お父さんとお母さんが苦労して作ったシーンを知っているなら、ソファーも大事にします。
友人によると、いつも気づくとこのソファで眠ってしまっているとか。かわいいですねえ。
ブランドや素材もデザインもすぐれた高価で立派なソファも素敵ですが、
イケアのこの最後のひと手間がかかる方法、これは実はエンターテイメントではないかと思います。
小売業のエンターテイメントのことを造語で「リテールテイメント」と言いますが、消費者に生産から購入という一連のサイクルの中で、参加させるというのは、実は今後重要な意味を持ってくるのではないかと思います。
自分で作ったほうが美味しいとはよく言いますが、ぜんぶつくるのではなく、最後のひと手間に参加してもらう・・これは「リテールテイメント」の効用です。
むかし和菓子作りの名職人さんが教えてくれたのですが、
たとえばおはぎでも、最後は必ず素手でぎゅっと握るそうです。
衛生管理の厳しい時代ですから、通常はスーパーでもビニル手袋などをつかって握ります。
ですが伝統的な製法にこだわる和菓子職人さんは、素手をつかう。そしてこれは人によって味わいが異なるんだそうです。
深いですねえ。
最後のひと手間で「モノ」を「コト」にする・・。古くて新しいテーマですが、もっと研究してみたいですね。