高校野球が終わりましたね。
これが終わると、ほんとにもう夏が終わるなあというイメージです。
優勝は日大三高。西東京代表は、この10年で3回夏を制覇しています。全国屈指の地方大会レベルと考えていいでしょう。
わたしの母校は、今回、西東京大会であっけなく1回戦で敗れましたが、破った相手は次に日大三高に敗れましたから、まあ、あきらめがつきました。(笑)
わたしは中学を卒業して、東京に出てきました。
もう20年以上も昔ですが、中学時代の野球部の仲間が二人、高3の夏、山口代表宇部商の先発メンバーとして甲子園で活躍してくれました。その年は、ベスト8か4だったかな?初出場の浦和学院に負けたような気がします。
ちょうど夏期講習中だったと思いますが、勝ち進む宇部商と友人たちの活躍に一喜一憂したものです。
「甲子園」は全国大会の代名詞ともなっていますが、最近では、俳句甲子園も紹介されていましたね。
俳句に限らず、短歌、書道など文科系のいくつかの世界にも「甲子園」があります。
甲子園ではありませんが、高校生クイズというのもありますね。これも全国の名門高校の戦いは見ていて面白いですよね。
「甲子園」に代表される全国レベルでの勝敗決定システムというのはどんな効用があるのでしょうか?
ひとつは、
さらに上の国際大会(オリンピック、ワールドカップなど)への選抜という要素もあります。
もちろん、就職や進学の要素もあります。
しかし、これらは、さらに絞られた少数のエリートのお話です。
少数のエリートをつくるためだけに、甲子園は存在するわけではありません。
私的な考えですがここには、「自分の力を客観視できる場」という視点が重要ではないかと思います。
どんな世界でもそうですが、日ごろの鍛錬がどのように自分に身についているのか。
これを試せる場所はなかなかありません。
「甲子園」をはじめとする全国大会の効用とは、やはりわたしはこれまでに培ってきた技術と精神のぶつかり合いが見せる「プロセス」の祭典という点にあるような気がします。
ビジネスでいう単に勝ち負けはプロ野球の世界です。
ここは「プロセス」ではなく「結果」の世界。
甲子園は敗者こそ美しい・・みたいな語られ方をすることが多いのですが、
これは、勝者のみを評価するのではない、日本的なプロセス評価の典型と言えるでしょう。
甲子園では、敗者にやさしい。これは日本が誇る寛容の美学でしょう。
サッカーでも野球でも、ひとたびプロの大会、国際大会の季節になれば、「結果」を求めます。
「結果」が出ないチームには容赦ない言葉が浴びせられます。
監督の解任、エースの放出、チームの再編成・・さまざまな対応をして、次に挑みます。
ビジネスの世界でも結果を出せなければ、本来社長は解任です。
そのかわりに社長には責任をとるだけの権限も与えられなければなりませんが。
本来ビジネスはそういう厳しいプロの掟がある世界です。
そう考えて、ふと「居酒屋甲子園」さんを思い出しました。
名古屋のかぶらやグループ出身の大島さんが創始したものですが、
いまはどういう状況になっているのか存じませんが、
主観的になりがちな「ホスピタリティ」や「商品・サービス」を客観的に競い合う「場」というのはリテールの世界ではあまり存在せず、ユニークな試みでした。
この居酒屋甲子園で共有されたノウハウ・・、
朝礼の方法、従業員モチベーションアップ術、販促、逸品づくりなどは、
賛否両論ありますが、これまで自店舗のみで培ってきた方法を外に出して、客観的な視点で評価され、それが個々の参加店舗に持ち帰られることによって、より高い次元に進化していくという動きをつくりだしました。
この点で、わたしはとても優れた取り組みだったと思います。
社内コンテストというのは、陳列や接客技術などそれこそリテールの世界では星の数ほど存在するのですが、
社外コンテスト、つまり「甲子園」をつくっていくことはなかなか難しいようです。
月刊MDでも、「売り方開発コンクール」という全国のドラッグストアさんが参加するコンクールがあります。
社外でノウハウを競い合うという点では、運営面で難しいところがあるのですが、一方で参加企業、店舗の皆さんからは、「社外のこんな機会はめったにないのでよかった」と言っていただけています。これは形を変えても続けていきたいなと考えています。
いわゆるメーカーさん主催の陳列コンクールも変わりつつあります。
どう商品を目立つように陳列したかではなくて、全薬工業さんの「アルージェ」ブランドのように、どう店舗でこの商品を解釈し、位置づけ、スタッフとビジョンとカウンセリング情報を共有して、リピーターを作り出したか・・というソフトの部分を重視したコンクールが行われつつあります。
ビジネス自体は「結果」が問われる厳しい世界です。
でも、その中に、「プロセス」による寛容的な評価装置をつくることはとても大切なことのように思います。
しかもそれは社内ではなく、社外であることが望ましいです。
なぜか。社内と社外では「楽しむ」という次元が異なるからです。
以前、ブログで書きましたが、アスリートたちの「楽しむ」は、
社内の仲間うちで主観的に褒めあうような「楽しむ」ではありません。
鍛錬の先にある真剣勝負の瞬間しか得られない緊張感のみによって得られる「楽しむ」です。
その意味でも、甲子園とは言わないまでも、社外における客観的なプロセス評価を可能にし、小売業のプロの人たちがアスリート的な「楽しさ」を感じられる装置をどうつくるか。
これが月刊MDの課題のひとつのように考えています。