きのうの続きです。
きのうは、都心型小型店舗における「コンビニ&ドラッグ」業態は、
中途半端な商品構成、品揃えになってしまうと、
コンビニにもドラッグにも劣る店舗になる危険性を示唆しました。
その考え方の根本は、TPOS開発にあります。
コンビニは「利便性」というTPOSを開発し、それを基準にした商品構成と品揃えを徹底しています。
この利便性の持つパワー(集客と売上)というのは絶大です。
単純計算すると、上場企業だけですが、
ドラッグストアの坪効率平均(年間)は、200万前後、
コンビニは450万円前後、
つまり2倍以上の違いがあるのです。
「コンビニ&ドラッグ」の坪効率の着地点が、どこを目指しているかわかりませんが、
2つの特性を合わせれば、効率が落ちることは明白です。
であれば、「コンビニ&ドラッグ」はどんなTPOSを開発すればいいのでしょうか?
結論を先に言いましょう。それは、やはり利便性です。
そして、これの実現には「購買頻度を合わせる」という小売技術が不可欠です。
そのきっかけとなるのが、きのうヒントを出した「ロキソニンS」です。
これは、薬剤師の対応が必要なOTC医薬品(第1類)ですが、
あるドラッグストアのPOSデータによると、「解熱鎮痛剤」部門では、2011年4-6月で金額1位、売れ個数2位になっています。
また「第1類医薬品」部門でも、圧倒的に強かったリアップ(育毛剤)を金額、個数で抜くことが予想されています。
この「ロキソニンS」という薬は、女性の生理痛向けの効き目の強い、即効性の高い鎮痛剤として、CMも流れ、店頭でも訴求されています。
元々、医師の処方箋が必要な薬だったので、「スイッチOTC」と呼ばれます。
この「ロキソニンS」は単価平均570円で12錠です。これは、解熱鎮痛剤の部門の中で、もっとも価格帯が低く、錠数が少なくなっています。
既存の解熱鎮痛剤部門で、
価格帯が低く、
錠数が少なく、
即効性が高い
医薬品は、実はなかったのです。
ちなみに、同POSで、解熱鎮痛剤部門の第2位は、「バファリンA40錠」、第3位は「イブA錠48錠」で、この上位3つだけが、4-6月の売れ個数1万8千個以上になっています。
4位以下は、売れ個数でいえば、8千以下になり、ほとんどの医薬品は、1000ー3000個台です。「イブ「糖衣」40T」(金額では7位)のみが11000個台になります。
つまり、「ロキソニンS」が発売される前は、
40錠ー50錠が平均であり、売価は600円前後の医薬品が主力だったことがわかります。
ちなみに、解熱鎮痛剤は大容量もあります。大容量ですと、1錠あたりの単価は安くなりますが、1回あたりの購買単価が高くなり、売れ個数は劇的に下がります。
わかりやすい例でいうと、「バファリンA 80錠」があります。
「バファリンA80錠」は1回あたり購買単価は、1214円、売れ個数は、2141個。
「バファリンA40錠」と比較すると、1回購買単価は約2倍、売れ個数は、10分の1になります。
加えて、バファリンシリーズは、SKUベースで7つあります。*小児用は外しています。
「ロキソニンS」は1SKUです。
さて、コンビニのTPOS開発に戻りましょう。
「ロキソニンS」は薬剤師さんの対応が必要な購買には少々時間を要する商品にもかかわらず、売れ個数と金額は上位です。しかも効き目は「即効性」であり、錠数も少ないので、買い置き用ではありません。
これは、まさしくコンビニのTPOSを満たしている医薬品です。
ほかにも緊急の下痢を抑える「ストッパ」という商品もありますね。
これもコンビニTPOS医薬品です。
つまり医薬品を「利便性」というTPOSで切り取るということです。
ドラッグストアは一見、なんでも揃っています。
小容量も大容量も。すべての銘柄もあります。
これがドラッグストアのいう専門性なのですが、
コンビニTPOSの観点からいうと「選びにくい」=「不便」なのです。
もちろん、女性は、解熱鎮痛剤といってもどの薬が自分にはあっているのかが分かっているはずですし、ばらばらでしょう。だからあれだけの銘柄があるんでしょうね。
でも、出先や携帯用では、一番効く単価の安い、小容量がひとつあればいい。買い置きは自分銘柄でいいのです。
もちろん、買い置きを携帯用ケースに入れて持ち歩く人もいますが、
それはお弁当を持って会社に行く人と一緒です。コンビニでは買いませんもんね。
コンビニのターゲットではないのです。
タイトルと逆になりますが、コンビニがドラッグ商材の医薬品、化粧品、日用品を利便性というTPOSで切り取って、「購買頻度=商品回転」を揃えたコーナーを展開されれば、もっとも脅威です。
薬剤師さんの人件費問題もありますが、これをクリアしていく方法をコンビニ各社が開発していくことは可能です。
水面下ではいろいろ進んでいるでしょう。
もちろん、ドラッグストアが、先手をとるべき分野だとも思います。
コンビニも構造的な弱点が、ありますから、特別に脅威に感じることはありません。ただ、既存のドラッグストアの商品開発、業態開発の方法からはずらす必要があります。またコンビニの方法にも真摯に学ぶ必要性があります。
これについては、また違う機会に。