きのう、都心部の居抜きに入るドラッグストアさんが増えている例として、「クリエイト」さんをとりあげました。




読者の方からさっそく質問をいただきました。




「ドラッグストアは都心にあってコンビニに勝てるのでしょうか?その場合、『ドラッグストア&コンビニ』の業態がやはり一番いいのでしょうか?」




難しい質問です。いまドラッグストア各社が、この解を求めて実験を繰り返しているわけですからね。




ただはっきりとわかっているのは、




『ドラッグ&コンビニ』はコンビニより、あるいはドラッグストアよりも消費者にとって利便性が高くなる可能性があるということは間違いありません。




ただし、いまの状態ですと中途半端であり、




コンビニより不便で、ドラッグストアより品揃えが悪いという印象を持たれてしまう可能性もあるわけです。




たんにドラッグストアにコンビニ商材を置けばよいわけでなく、またコンビニにドラッグストア商材を置けばよいのではありません。




ここは注意が必要です。




これを考えるひとつの方法として、




「TPOS開発」という小売業の基本用語があります。




これは、




Time(時間)




Place(場所)




Occasion(場面、機会)




Style(ライフスタイル)




という4つの生活者の需要を切り取って、その需要に応えるというものです。




基本的には、生産者から商品仕入れて、並べて売ることが、小売業ですから(製造小売もありますが)、




小売業の消費者にとっての価値は、この「TPOS」をいかに読み取って店舗を開発できるかということで進化を遂げてきました。




例を挙げましょう。




商店街にはお肉屋さん、八百屋さん、魚屋さん、洋品店、家電屋さんなどがあり、これらを一か所でまとめて買うことができたら便利というTPOSを開発して、スーパーマーケット、GMS(総合スーパー:ゼネラルマーチャンダイジングストア)ができました。




次に、遠くにあったり、大型の店舗だと、ちょっと牛乳一本買うだけ、ビールとおつまみだけ、お弁当一個買うだけなのに不便だ・・ということで、コンビニが爆発的に進化しました。ドラッグストアは、コンビニとスーパーマーケットの中間地点で利便性を提供しています。




とくにコンビニは、コンビニエンスという名前のとおり、「利便性」というTPOS開発に全力を注ぎました。だから公共料金の支払いサービス、ATM、チケット販売、ファストフード導入、たばこ販売など「利便性」という軸で「商品構成」と「品揃え」が行われているのです。




ちなみに「商品構成」と「品揃え」は区別して使用しなければなりません。




「商品構成」とは、その店舗がターゲット顧客を想定して、カテゴリー、商品を揃える際の基準のことです。




コンビニであれば、「すぐ使うもの」「一緒にあると便利なもの」「大型店や遠くの店舗まで行って一個だけ買うのは嫌なもの」が商品構成の軸です。




「品揃え」は「商品構成」に基づいて、揃える具体的な商品名のことです。




だから、「この店は品揃えがいいなあ」という意味は、




たとえば、「ビール」で自分の好きな銘柄があった場合に使います。




「商品構成」は、アルコール飲料の中で、ビール、発泡酒、第三のビールをどの割合で置くかということの取り決めです。




これをたまにごちゃまぜにして使っている人がいるので注意が必要です。




集客の要になるのは、「商品構成」です。




コンビニは「商品構成」の軸がぶれていないからこそ、一定のコンビニニーズのあるお客様が繰り返し来店するのです。ゆえに小商圏で成立するのです。




そのうえで、コンビニは「品揃え」で他社、他店との差別化を図っているのです。




よく「こだわりの商品」という言葉をつかう人がいるのですが、




商品構成のことをよくわかっていない人が、あるカテゴリー、商品の「こだわり」にこだわってしまうと、だれに来てほしい店舗なのか、まったくわからなくなってしまう店舗になってしまう危険性があります。




この対極にある「売れるものならなんでも揃える」というものもあります。バラエティストアという言い方もできますが、これもターゲットがぼやけます。




日本では100円ショップが「バラエティストア」ですが、「100円」という価格軸のTPOSがあるゆえに成立しているのです。




実はドラッグストアは商品構成軸がぼやけてしまう危険性に陥る可能性が高い業態です。




これはドラッグストアがそもそも、どんなTPOSを開発してきたのかという根本問題にかかわっています。




スーパーマーケットのように夕飯の買物を一か所で済ませるニーズに応えたものでしょうか?コンビニのように「便利」に徹したものなのでしょうか?




ドラッグストアもまた、コンビニ、スーパーマーケットと異なる「TPOS」があるがゆえに、業態として生き残ってきたのです。そして都心の小型店舗ドラッグをコンビニ以上に価値を高めるのもまた「TPOS」が不可欠です。




つまり単に、コンビニ商材に医薬品と化粧品、ちょとコンビニにはない生活雑貨が置いてある・・でもスーパーほど歩き回らないという程度では、コンビニには勝てないということです。また同業のドラッグにも勝てません。




その「TPOS」とはなにか?




これは後程、あらためて、具体的に考えてみましょう。




ヒントは「ロキソニンS」にあります。




お楽しみに。