男性化粧品市場がいま大きくなっていますね。
ヘアケア(シャンプー・リンス)市場に限って見ても、
2008年の市場規模が約76億円なのですが、
2010年の市場規模は約112億円と、2年間で36億円も伸びています。
火をつけたのは、「薬用スカルプD」(アンファー)。
吉本の芸人さんたちをつかって、ネットチャネル販売に限定し(一部バラエティストアでも販売)、2010年には51億円のマーケットシェアを獲得しています。この2年では、39億円も伸びています。
ほかのブランドはほぼ横ばいですから、この「スカルプD」が圧倒的に市場をけん引していることは事実ですね。
「スカルプD」のユニークな販売戦略はじつに的を得ています。
本来は、ドラッグストアが、男性化粧品を伸ばしていかなければならないチャネルですが、
ドラッグストアは、
1)女性客が8割
2)男性新規客開拓の提案ノウハウ不足(とくに店頭)
というハンデがあります。
2)は月刊MDでもいろいろ提案してきたのですが、なかなか従来の考え方から抜け出せない部分もあります。またマーケットも地域格差があります。取材していると、男性スキンケアも伸びているというところもあれば、まったく動かないという声もよく聞きます。
その意味では、スキンケアよりもヘアケアのほうがマーケットボリュームは大きいですから、ここから開拓していく方法はありそうです。
育毛剤は第一類医薬品であり薬剤師が売りますから、育毛剤を購入する男性ターゲットは本来ドラッグストアに行くはずです。
もちろん、プレリアップ(大正製薬)などの育毛剤系薬用シャンプーもあるのですが、これらは潜在的な顧客をマーケットボリュームに顕在化していくことはできていませんでした。
また、ドラッグストアの店頭でも価格帯も育毛剤(5000円以上)、育毛シャンプーと普及品(1500円以下)の間がちょうど欠落していました。これも「スカルプD」の価格戦略の巧みな点です。
「スカルプD」は、
男性20-40代のヘアケアに関心の高い特定多数にターゲットを絞り、
価格帯を3000―4000円に設定しました。
ヘアケアに関心の高い層は、3000―4000円の価格帯をふつうに買います。
美容室専用商品のサロン系と呼ばれるブランドも大体、2500―4000円の価格帯です。
この欠落価格帯という考えも重要な考えです。
一時期、290円、390円など低価格弁当がオフィス街でも流行り、コンビニも追随しましたが、じつは一番売れていた価格帯は500―600円でした。
さて、この男性ヘアケア市場ですが、
先日も、豊川悦司さん、浅野忠信さん、松田龍平さんという濃いー人たちをメーンキャラにした「リガオス」(ラボーテ・ジャポン)、さらには秋口には「ウル・オス」(大塚製薬)もスカルプ系を投入してきます。また花王さん、サンスターさんロート製薬、ライオンさんなども続々とリニューアル、新規ブランドを仕掛けてくるでしょう。
これは市場が広がるセオリーです。
「スカルプD」が潜在顧客を顕在化させて、次に有力ブランドがいくつも投入されると、市場は安定拡大期に入ります。
その意味では、男性ヘアケア分野をいかに自店の武器にしていくかは各ドラッグストアの重要な戦略になっていきます。
しかしドラッグストアは、有名ブランドのマーケティング戦略にただのっかればいいというものではありません。まあテレビやネットでがんがん宣伝してくれるのですから、それを生かすのは当然ですが、マーケティングのただ乗りに甘えていると、「スカルプD」のように、ドラッグストアを有力な販売チャネルとして認識しないという戦略も出てくるのです。
月刊MD主幹の日野も、今月19日発売の9月号記事で、この部分を強調しています。
「ドラッグストアはこれでいいのか?」と。
これは、ドラッグストアの皆様も考えるべき共有テーマのように思います。
市場が広がってくると、
ドラッグストアの優位な点も出てきます。
それは「グレードアップ客」をつくる絶好の場であるということです。
つまり普及品を買いにくる男性客、または代理購買の奥様に対して、「グレードアップ」を提案できるということです。
いまドラッグストアの男性化粧品売場を見に行くと、多くがメーカーさん提供の販促物で売場づくりが行われています。
POPももっと、男性客のソリューションになるようなものがほしいものです。
いま店頭に行っても、自分はどんな商品があっているのか?どれを選べばいいのか?基準どころか選択のヒントすらあまり表示されておらず、わかりません。
なかには、佐々木希ちゃんファンだから、スキンケアはオキシ―、ガムはフィッツに決めているという人もいるかもしれませんが(笑)。
それよりもなによりも、シャンプーの仕方、コンディショナーのつけかた、どのような状態になったら効果を実感できるのか・・など、意外と基本的なことを知らなかったりするものです。
わたしがいままで一番どきっとしたPOPは、
「彼女はあなたの枕が嫌い!」
これは男性、とく40歳前後は効きますよー。
彼女、奥さん、娘さんに
「枕くさーい」って言われていませんか?
間違いなく男性はすぐドラッグストアに走りますよ(笑)。*奥様には洗剤や消臭剤訴求のチャンスです。
せっかく、育毛剤などは薬剤師さんが売っているのですから、ヘアケアの相談ができる売場になるととても有り難いですよね。
ヘアケアの相談は、「聞くと恥ずかしい」という分野になりますから、この恥ずかしい質問をいかに引き出せる環境、システムをつくるかも、ドラッグストアの知恵の見せ所です。
「スカルプD」や「柿渋系」がネットで売れたのは、この「恥ずかしさ」を解消するのがネットチャネルだったからです。
であれば、女性の化粧品でやっているように、店頭で「お肌チェック」ならぬ「無料ヘアチェック」などをおこなって、自然に、ヘアケアへの関心が高まるようにするのもリアルならではの手ですし、携帯メール会員という「コミュニケーションポイント」(CP)があれば、これを生かすのも重要です。
美容師さんと組めるともっといいと思います。
市販シャンプーの正しい選び方、また近所同士でコラボして、ヘッドスパ体験などしてもらうのも面白いですね。
そうやって、男性の潜在需要を掘り起こし、マーケットボリュームをつくる。
美容室だって、ヘッドスパだけやってくる男性客が増えてもいいですよね。
ヘッドスパをやったお客様はドラッグのスタイリング剤オフというコラボ企画もありです。
*美容室はサロン専用商品がありますから、難しいですが、それらとかち合わない組み合わせを考えたいですね。
新規客をつくり、リピーターを増やす、結果、マーケットボリュームを高める男性ヘアケア戦争、大いに歓迎です!