家計調査の消費支出分析の使い方です。
日経ビジネスオンラインなどでは、大学の先生やらエコノミストと言われる人たちが、マクロ分析をしていますが、
現場ではまったく使えません。
月刊MDはマクロ指標からミクロ(売場)の施策に落とし込む方法を提供しています。*まあこれはある意味、小売の世界では常識なのですが・・
今回の図表は、
栄養剤(栄養ドリンクなど)の世帯主年齢別動向が出ています。
ようは世代の平均消費支出金額が出ています。
これを見ますと、
栄養剤の平均消費支出金額は900円です。
ほぼ平均なのは、50―59歳、
平均より上なのは、60―69歳(1000円)、70歳以上(1200円)です。
まずは、地域商圏で自分の店舗が、どれだけ栄養剤に対するシェアを持っているか、算出します。
仮に、自店舗の商圏世帯が3000世帯であれば、
その商圏の栄養剤の消費支出金額は、270万円になります。
それで、自社の栄養剤の売上金額がシェアの何%とっているかが出ますね。
これはふつうの小売業ならどこでもやっています。
次に、顧客IDPOSデータを使っている企業なら、
自社に来る50歳以上の会員を抽出し、栄養剤購入の平均単価を出します。
これが、それぞれの年代で平均もしくは平均を上回っているようであれば、いいのですが、
下回っている場合は、商品の品揃えや既存扱い商品に不満があるのではないかということが仮説として立てられるでしょう。または主力商品がライバルによってターゲットディスカウンティングされている可能性もあります。
さらに上の右の図表をみれば、地方の特性も出ていますから、これも考え合わせるとより具体的になります。
昨年は、東北、ことしは東海の客単価が高くなっています。ハードルが高いですね。
自店舗は少なくとも平均以上に売っているか。あくまでも目安ですけど、見直すことができます。
また平均に達していても、たとえば、40―49歳代をもう平均購買単価を100円アップさせる方法はないか・・こんな風に考えることができます。
下の図表は、健康保持用摂取品の動向です。いわゆる健康サプリメントです。
これも年代でわかれる代表的商品です。
年代動向はほぼ栄養剤と一緒なのですが、平均支出金額3000円のところ、60―69歳は4000円、70歳以上は5000円ちかくになっています。
これを先ほどのように商圏シェアを出して対策をとることが重要ですが、
サプリメントは、多くのドラッグストアで、商圏シェアをとっていることは稀でしょう。
というのは、60歳以上でサプリメントを購入するチャネルで、通販が出てくるからです。
下の図表の右を見てみてください。
これは過去6年間の、医薬品とサプリメントの消費支出推移を示したものです。
これを見ると、サプリメントは概ね1000円付近にとどまっていますが、
医薬品は3年前から急速に伸びており、昨年は、医薬品とサプリメントはついに2対1になりました。
つまりドラッグストアはOTC、調剤に戦略的に力を入れざるを得ないことを示しています。
かといって、横ばいのサプリメントを通販チャネルにとられたままでいいのか。
ここにどのような戦略を講じるかが問われます。
ネット通販で火がついた男性用のシャンプー「薬用スカルプD」は、男性シャンプー、コンディショナー市場112億円(推定)のうち約半分の51億円を獲得するに至っています。
「薬用スカルプD」は、育毛用シャンプーと普及品の間の空白を埋めた商品です。平均単価は3000円。気に入ればリピーターになります。
30-40歳代のヘアケアに関心のある層に訴えた商品でした。
そういう視点で見ると、
サプリメントだって、40―49歳代は平均支出2000円にとどまっていますが、これを平均の3000円まで出してもいいと思わせるサプリメントをどう育てるか。30代も1500円です。「薬用スカルプD」のヒットを考えれば、ものすごい空白があります。
つまり、「30-40歳代の(男性用)3000円サプリ」、ここがポイントになってきます。
ドラッグストアで育てるのか、ネット通販で仕掛けるのか。
お互い競ってほしいものです。
当たり前のことなのですが、「だれ」に「なに」を売るか。
これを知らずして、これからの小売業は事業を継続することは不可能になっていくでしょう。