これよく聞かれる質問なんですが、
「完売」と「欠品」をどう考えるか。
シンプルに答えれば、チェーンストアであれば、「完売=欠品=機会損失」です。
ふつう「完売」ときけば人気商品なんだなあと思いますね。
でも、いま熱中症対策のクール関連商品がいくつか完売していますが、こういう商品になると、
「なんでこんな重要な商品をきらすんだよ」となってしまい、実はメーカーさんじゃなくて揃えられない「店舗」が「悪」となってしまうのです。
これ重要です。
お客様は、
メーカーさんが「完売」ですというと「すごい人気なんだなあ」と思いますが、
店舗が「完売」ですというと、「品揃えが悪い」「商品調達力のない」→「使えない」というマイナスイメージになります。
でもですね、メーカーさんの中には、テレビのインタビューで、
「おかげさまで人気がありまして完売です。いま増産計画中です」とニコニコ顔を答えているのですが、
ある大手家電メーカーに勤める友人によると、これはいわゆるマスコミ向けの顔で、
社内では評価が低くなってしまうそうです。*私の知っている人は左遷を覚悟するほど大目玉をくらった・・
つまり、「販売予測」がはずれたわけで、「機会損失」だと考えるわけです。
まあ、工業製品ですからね。工業は生産ラインを遊ばせておくことがもっとも「悪」です。
これを大量生産、大量消費時代のあだ花と考えることもできるわけで、
機会損失をなくしつつ、効率的な生産体制、供給体制(サプライチェーン)をいかにつくるかということがこれからの「サステナブル(持続可能)社会」には重要な視点だと思います。
コンサルタントの先生方は、
お客様は、
「限定」が好き→(そのとおり)
「あなただけに」が弱い→(当然でしょ)
「予約受付」の先行優越感→(このじらしぐあいもたまらない(笑))。
と言う方がほとんどですが、
購買心理からすれば、これはたしかに真理。
ラーメン屋だって、お昼過ぎにはスープが切れて並んでも入れない可能性があるよ、と言われれば、11時のオープン前から並びますよね。*わたしよく並びます(笑)。
アップルが新機種を発売延期にするたびに、恋人に裏切られた気分になり、延期されるほどに思いが募る・・私じゃありませんが、そんな友人がいますよね。
でもいわゆるマスマーチャンダイジングに属する商品は、なかなかこれができません。*アップルは「ネクスト商品」に関しては「じらし」戦法を使っていますが、定番は世界中のアップルストアで途切れることなく売っています。
そこで大事なのが、
「店舗」というバッファです。
これは店舗在庫を抱えようという意味ではないんです。
マスマーチャンダイジング商品であっても、その商品の価値、捉え方は一律ではありません。
つまり、お客様の多様なニーズ、ウォンツを掴み、どこでもある商品の多面的な価値に光をあて、お伝えすることで、お客様にとってはその商品が、「あなただけ」になるのです。
店舗に商品が着くまでは、商品をきらさないような合理的かつ効率的なサプライチェーンを構築し、店舗では、それぞれのお客様に「あなただけ感」が演出される・・。
当たり前なんですが、それが構築できるチェーン店が、地域の信頼を勝ち取ります。
ある店舗を取材中、首に巻くクール商品がテレビではどこも品切れ状態ということを聞いて、どうせないですよねえと来たおばあちゃんが、
店員さんから「ございますよ」と言われて、
「テレビ見てたら、どこもないかと思ったわ、よかったあ」と喜んでお孫さん分と2つ購入されていきました。
いま多くの皆さんが絶対必要な商品はきらさない・・これがチェーンの矜持だと思います。