本日は朝からあるメーカーさんの陳列コンクールの最終審査会でした。

審査会自体は20分足らずで終了しましたが、とても気づきの多い時間になりました。


それは店舗の「売り方」についてデータをとるという方法論があまり存在しないという事実。


VP(ビジュアルプレゼンテーション)、ISM(インストアマーチャンダイジング)など売場づくりの教科書はたくさんありますが、その効果を図る指標は、POSデータしかありません。*IDPOSもありますが、使いこなせる人はまだ少数です。


だから大量に陳列すればPOSが跳ね上がりますので、「売り方」といえば「大量陳列」ということになります。


もちろん「大量陳列」も重要な店舗のコミュニケーションポイント(CP)のひとつですが、


たとえばそれが「多箇所陳列」と比較した場合、どちらがトライアル率が高いか、リピート率が高いのかというデータ分析方法は確立していません。


先週からずっと読んでいるデータスタジアムの森本美行さんが書かれた『本田にパスの36%を集中せよ』にも、野球に比べてあまりにレベルの低かった「サッカーのデータ分析」が紹介されています。


たとえば、どの位置でボールを奪えば、シュートまでいく確率。相手からボールを奪ってからシュートまでかかる時間。


ワールドカップ南アフリカ大会優勝国スペインは美しいパス攻撃で知られますが、一試合平均600本のパスがあり、その成功率は80%以上。ではこのつなぐサッカーはシュートまで行く時間がかかるかといえば、そうではない。


ワールドカップ出場国の相手からボールを奪ってシュートし成功したときの平均時間(中央値)は16秒。スペインは出場32か国中で16秒以内にシュートした数は第6位。つまり華麗なパスつなぎは長いように見えてシュートまでの時間は短いということです。


森本さんは、見た目と実際のギャップをデータが立証するという例としてこの話を出されていましたが、


これは、売場でもまったくおんなじです。


大量陳列をすると、見た目のPOSは跳ね上がっているように見えますが、ほんとうに店全体の売上になっているのか、店舗とメーカー双方の利益が高まっているのか?


実は大量陳列ではない方法のほうが、利益が上がっているのではないのか?


こういう視点を持つことが今後はより大切になってきています。


「大量陳列」でも、


1)入口付近で展開する場合

2)プロモーションスペースで展開する場合

3)定番とクロスで展開する場合

4)昨年購入者にDMを展開した場合

5)昨年価格より5%下げた場合

6)昨年購入者にターゲットサンプリングをした場合

7)店頭で試飲をした場合

8)メーカー提供POPのみを使った場合

9)店舗のオリジナルPOPを組み合わせた場合

10)店長の個を出したPOPを組み合わせた場合

11)プレゼントキャンペーンを仕掛けた場合

12)ポイントキャンペーンを仕掛けた場合

13)アイテム数を2倍にした場合

14)他メーカー品を組み合わせた場合

15)アイテム数を2分の1にした場合

16)テレビCM投入時期に仕掛けた場合

17)テレビCM投入時に仕掛けなかった場合

18)デジタルサイネージをつかった場合




まだまだたくさんありますが、

これらの方法と比較検証をして、もっとも有効なCPの組み合わせはなにかを発見する。

組み合わせ比較は50くらいアイデアを出して、過去の経験から10パターンくらいに絞って比較検証すると有効です。


これが今後の売場活性化の武器になります。


ただスペインのパスサッカーは美しいと感じるだけで終わるのか、


美しいパスサッカーがなぜゴールにつながっているのか、そこに再現性(法則性)はあるのか、バリエーションはあるのか?


売場のプロフェッショナルを志向する人なら、当然後者を選びますよね。


月刊MDも当然、後者。


この商品に関して、テレビCM投入時期に大量陳列を行った時、


アイテム数を2倍にした場合と半分にした場合では、半分にした方が、1アイテムあたり販売数量が10%アップする。


あるいは、メーカーPOPのみの展開と店舗オリジナルPOPを組み合わせた場合の期間販売数量は、後者のほうが15%アップする。


以上は、たとえばの例ですが、こういうことがわかったら売場づくりが変わってきますね。


さまざまなデータと知恵を持ち寄って、ほんとうにお客様に支持される売場をつくってみませんか?


もうその動きは水面下で静かに激しくはじまっています。