月刊MDは主として現在は、ドラッグストア企業と周辺のメーカー、ベンダーさんが読者ですが、
コンビニ、食品スーパー、ホームセンター、さまざまな業態の方の読者も増えています。
またメーカー、ベンダーでも、従来は医薬、化粧品、日用雑貨関連が主だったのですが、最近は食品関連の企業が増えました。
月刊MDにいくばくかのご関心をいただいていることはとてもありがたいことです。
ですが、ときどき、はじめてお会いする方で、
「この雑誌は、どんな方が読んでいるのですか?経営者ですか?店長ですか?」とお尋ねになるかたがいらっしゃいます。
わたしは、そのとき、こう答えるようにしています。
「経営者の視点を持った店長さんです。売場を一国一城として考える自立した商人の集合体を、どう生かしていくのか。その方法は経営者の志向によって異なりますが、自立した店長さんの自己育成をサポートする雑誌なので、結果的にさまざまな志向を持つ経営者の方が読まれています」
現場の創意工夫を積み上げて、総合的なブランド力として企業を輝かせる経営者もいれば、指示ひとつで部下が一斉に動き、瞬く間に「個」だけの力でできない事業を成し遂げる経営者もいます。
共通するのは、現場は自立した商人の集合体でなければならないという点です。
自立とは「指示待ち」ではなく「自ら問題のありかを考え、解決していくための方法を見出せる力」と定義しています。
前者は、よく理解できるのですが、後者は??という人も多いですね。わたしも最初はそう思いました。
「後者は軍隊組織だ。個々の意思を持たれたら一斉に動くことなんかできないだろう」
また、
「組織の歯車に意思を持たせるな」というのもあります。
古代の体育会系思考ですね。
わたしは、とある先生が主宰する大学の研究会ですこし軍事史をかじったのですが、
「軍隊=個々の意思を持たせない集団」というのは、大体第二次世界大戦以前の考えですね。
米国海兵隊の新兵訓練(ブートキャンプ)のイメージが強い人も多い。
でも、これは軍事組織思想全般を決定する要素ではありません。
むしろ、全体に及ぼす影響はほとんどありません。セレモニーみたいなものですね。
ときおり体育会系経営者やコンサルの中には、ここだけを取り出して強調する人がいるから困ったものです。
ちょっとずれました。
「経営者の指示のもと、一斉にひとつのベクトルにむかって動く」
これを旧式の軍事組織と一緒にしてはいけません。
経営者の指示はどんなビジョンに基づいて発せられているのか?
それは現場の個々に落とし込んだ場合、どう皆が動けばいいのか?
これを明らかにしたうえで、一斉に動くことは組織の力になります。
渥美先生は、いまでも「意思を持たせない組織の歯車論者」と誤解されていますが、
実は、こんな言葉を残しています。
「組織の歯車を非人間的だという人がいるが、スイスの人たちは、チェーンストア組織を時計をつかってうまく説明している。時計は、無数の歯車と部品の組み合わせだ。大きい歯車もあれば小さい歯車もある。また速いものもあれば遅いのもある。でもこれが一定の法則で動いているからこそ、目に見えない時を我々に教えてくれるのだ」
これって名言だなあと思います。
「目に見えない時をあらわす」→これが経営者のビジョン、社会的存在意義
「大きい歯車、小さな歯車」→個性的な役割を担う現場
「一定の法則」→組織の決め事、行動規範
わたしはラグビーが大好きですが、ほかのスポーツと違う最大の魅力は、
足が速い人も遅い人も、背が高い人も小さい人も、これらの個性を組み合わせ、まとめあげて、
チームをつくるという点です。
売場も、同じです。
カウンセリングが得意な人、陳列がうまい人、部下を教育するのがうまい人、計算がはやい人・・
メンタル面もさまざま、打たれ強い人、繊細な人・・
渥美先生は、さすがに機微に通じていて、
「仕事がはやい奴が『できる』とは限らない。仕事は遅いが『正確、確実』という人間もいる。こういうやつはあとで必ず伸びる。いっときの判断で、人をみるな」
「鈍いやつも、『事実に基づく判断力がある』『アイデアだけで突進しない』、こういう利点がある」
こういう渥美先生を知っている人は意外と少ない。
こんなのもありますよね。
上司にすぐたてつく人(笑)、いつもどこにいるかわからない人(これは困るけど・・)。
でも、
いろんな個性をビジョンと組織を貫く行動規範でまとめる。だから同じベクトルで一斉に動ける・・。
「個」の力では成し遂げられないことも「みんな=組織」だとできる。
ですから、やはり大事なのは自立した、個性的な一人ひとりの店長=商人の存在なのです。
月刊MDも自立した商人の皆様のお役にたつ雑誌づくりに励みます。