小売マーケティングの世界では、


「大容量」VS「小分け」は普遍のテーマです。


よく食品スーパーさんで、独居のお年寄りの方のためにお弁当や惣菜を小分けにしました・・という話がありますが、別段珍しいわけではなく、


この領域は、1980年代のコンビニが確立したものです。


さらにコンビニは90年代に「個食」という領域を開発しました。


これは、核家族化が進んだ中、家族をさらに「個分け」したものです。


家族そろっての食事機会が減り、子供たちもいろんな事情でばらばらにとるわけで、主婦も、一人で食べることが多くなりました。


この「個分け」食は、2000年中ごろになって、「ぶんかじん」みたいな人たちが、「家族主義崩壊の後押し」と位置付けてコンビニ文化と揶揄しました。


まあ、わからなくもないですが、あまりに表層的。小売の世界は、人々の消費行動の変化に対応するのが原則なので、後付の評論に関しては、あまり与しないようにしています。


一方で、コンビニはオフィス街での「昼食」難民を減らすという役割もありました。


80年代後半まで、東京などのオフィス街は、いまのように外食チェーンや、ランチボックスカーなどは少なく、飲食店は軒並み行列。しかも一食だいたい700-1000円くらいしていました。


そこに500円前後のお弁当があまり並ばずに買えるようになったことで、オフィス街のコンビニの認知度がぐんと高まったのです。しかも夏にはそうめんやつけ麺まで、冬は鍋焼きうどんまで出てきて、バラエティを作り出しました。


いまは、セブンさんはじめ、コンビニはかつての団塊世代のやや下と団塊ジュニアターゲットから「お年寄りの方」たちがおいしいと満足してもらうお弁当、総菜開発に懸命ですね。


コンビニは、小商圏フォーマットですから、あまり行動範囲が広くない高齢者の方には非常にたすかる存在です。


さて、「小分け」の代表がコンビニなら、


「大容量」の代表はコストコに代表されるような、MWC(メンバーシップホールセールクラブ」ですね。


この米国的大容量主義、一回あたりの大量消費文化は、コストコが日本に入ってきたときは、どうかなーというかんじでしたが、いまでは大人気ですよね。


「Mart」の大給編集長などがずいぶん前から仕掛けて、大容量を複数家族や友人で「小分け」するという方法を定着させました。


MWCはユニットプライス(単位当たり単価」の最低価格を実現するものですから、たしかにみんなで買ってわければ一番お得です。


では、ドラッグストアではこの「大容量」と「小分け」についてどう考えるといいでしょうか?


ネット販売で消耗品を提供するなら、「大容量」提案が有望です。


トイレットペーパーやおむつ、お米、お酒など好きな銘柄がきまっているなら、一度に買った方が得です。


でも、ここがミソなのですが、ある企業では、お米などは、30キロ単位の注文を先に受けて、10キロずつ精米したてを送るというサービスを行っています。


これも大容量を小分けで売るという発想ですね。


かつての町のお米屋さんは昔からこんな配達をしていましたよね。


これを生産地契約含めて大規模で行っています。


なかなか買物に出かける時間のない主婦の皆さんは助かります。しかもクレジット決済が使えるので、可処分所得の少ない世帯では、キャッシュフロー上助かります。


英国のテスコというチェーンも、たとえばオーガニックのシリアルや牛乳なんかもこういう売り方をしているそうです。


テスコは、英国のシェアが高いですから、生産地を押さえているんですね。生産者も確実に売ってくれますから作り甲斐があります。


生産者も消費者も喜ぶような「売り方」をどうつくるか、これが小売業の大切な役割ですね。


さて、店舗はどうでしょう?


これは難しい。


たとえば、高額の栄養補助サプリメントなどは大容量であればあるほど、「お得」になるというのがいまの売り方です。


ですが、大容量パックは、一回の購買単価が高いんですね。


で、こういう大容量パックは、たいてい「小分け」のお試しセットを提案します。


すこし試してもらって、徐々に中容量、大容量にスイッチしてもらう。


大容量になれば安くなることがわかっているので、ここまでくればヘビーユーザー(ロイヤルカスタマー)ですから、安定して大容量(1回あたりの購買金額は高い)を購入いただけるというわけです。


これが育成のセオリーですね。


でも考えてみると、ロイヤルカスタマーなのに、利益がもっとも削られる(値引き率の高い)大容量パックユーザーというのは不思議なかんじがします。単価は高いですから、それなりに集めれば利益もありますが、ではそのロイヤルカスタマーは何人いらっしゃるのでしょう?


あるドラッグストアのID付POSを分析したところ、実は少量パックを継続的に買っていただくユーザーがもっとも利益をもたらしていたことがわかりました。


大容量を買えば、ユニットプライスは安くなるのですが、今月の予算はこれくらいだから、一回の支出は抑えようという意識が働いていると分析しています。


でも気に入ってくれているから繰り返し買う。


メーンユーザーがわかれば、その商品と同時に買ってくれている購買頻度の高い商品、ブランドのお得情報(クーポンなど)を提供してロイヤルティを高めることが可能です。


ようは、だれがお客様なのかということを突き詰めることが大切です。


最近では、マッコリの飲みきりサイズが売れていますね。これも同じかもしれません。


日本酒好きの30代女性も増えているそうですが、主婦であれば、冷蔵庫の在庫とも相談しなければなりませんもんね。一升瓶がどーんとあったら、旦那さんや彼はびっくりするでしょうね(笑)。


この商品を買うのはだれかを想定して、商品特性やニーズ変化によって「大容量」と「小分け」をうまく提供していく技術はもっと研究していきたいですね!