次の小話を読んでみてください。




皆様はどんな風に感じられるでしょうか?




「ある薬局に処方箋を持って行ったお客様がいました。ところが、あいにくその薬は欠品してしまっていて、お客様は後日、入荷を待ってそのお店にいくことにしました。しかし、薬局の店主は、薬がないのは不安でお困りになるだろうと思って、取引先に電話して、緊急に薬を届けてもらい、その薬を持ってお客様のご自宅にうかがいました。お客様はこの店主の行動にとても喜び、感謝しました」。






いい話ですね。




お客様がお困りになっていることを解決するのが「商人」です。




眼前のお客様の満足に尽くすことは商人の第一義だと思います。




ところが、このお話、視点を変えると、もうひとつの顧客満足の方法があるということがわかります。




それは、この薬局が最初から必要な薬が欠品していなかったら・・ということです。




欠品していなければ、お客様は1回の訪問でほしいものが手に入り、「手に入らず不安」な気持ちを起こすこともなかったわけです。どうしても必要な薬なら、あちらこちらの店舗も訪ねたでしょう。




ちなみに取引先も店主も、お届けの間、ほかのお客様を待たしたりすることはありません。




実は、欠品しないという「当たり前」の中にも「顧客満足」はあるのです。




そして欠品させないことによってサプライチェーンの全体最適をはかる(*この場合は、手に入らなかったお客様の不安を取り除き、お取引先、店主の作業を減らす。減らすことによって、ほかの満足を増やす)ということに心を配り、そのための細心の注意と、最新の技術を適用する「顧客満足」です。




マーケティング用語でいえば、




前者のお届けすることによって実現される「顧客満足」はLTV(ライフタイムバリュー:生涯顧客価値)という言い方ができます。




一人のお客様の満足を継続的な関係によって醸成し、信頼を築き、これがビジネスの上でも大きな「価値」=利益になるということです。




いっときの損失は長いスパンで見れば、それは損失ではないということです。




この考え方ももちろん重要です。




ですが、前者のエンタメ性と比較すれば地味な、後者の意外と見えない「当たり前」に潜む「顧客満足」も大切ではないかと思います。




「患者にとって必要な薬を社会コストが増大することなく欠品させない方法はあるか」




地味だけど、これも社会にとってはとても重要なソリューションだと思います。




あえてわければ、




前者は、個人に、後者は社会にフォーカスしているかもしれません。




わたしは、前者も重要だと思いますが、志向的には後者のほうに惹かれます。




坂本龍馬がなぜ人気があるのでしょう。




それは土佐藩の利益を考えるのではなくて「日本」全体の利益を考えて行動したところに拠る部分が大きいのではないでしょうか?




龍馬にはとてもなれませんが、龍馬的志向はやはり持ち続けたいなと考えています。