先日、ある研究会で、某メーカーさんより「歯間ブラシ」のクロスMD提案がありました。
クロスMDとは、一緒に買うと便利な商品、サービスと組み合わせて協働販促プロモーションなどを仕掛けることです。
あるデータでは、「歯間ブラシ」の使用率はなんと19%程度。
歯ブラシのブラッシングと「歯間ブラシ」「フロス」を組み合わせると、歯磨きカバー面積率90%を超えるというのに、使用率は低いままです。*歯ブラシだけだと6割ちょっとだそうです。
そのメーカーさんのプレゼンでは、毛先が細く、やわらかい、細かいところまで届き、歯茎を傷つけないというのが売りでした。
年代別の「オーラルケア」に対する意識に合わせたPOPの提案もあり、これはなかなかいいなあと思いました。
ですが、一点抜けているところが・・。
そのプレゼンでは、ユーザーアンケートの紹介もあって、「歯間ブラシ」をやめた理由というデータがありました。
断トツに多かった理由は、
「面倒くさいから」。
プレゼンを聞いていて思ったのは、たしかに、使用率が低いためにまずは試してもらうという啓蒙としてのクロスMDは重要なのですが、
この「面倒くさい」人を面倒くさく思わせないための仕掛け・・つまりリピーターをどうつくるかという方策が抜けていたのです。
今回は前者に力点があったので、これ自体のプレゼンはとてもよかったのですが、
実は今後のビジネスでもっとも大事なことは、後者のリピーターづくりという点です。
卑近な例ですが、
わたしも友人の歯医者にわざわざ通っているのですが(笑)、
ちょっと違和感が生じたり、ちょっとしみるなあと自覚症状がでたときにはじめていきます。
そこには美人の奥様もスタッフさんもいて、ときどき「この前の処置どうでした?、歯石落としだけでも来てくださいね」
という素敵なDMもいただくのですが、
なかなか行けないんですよね・・。
つまり、顔なじみであっても、予防や、メンテが重要だと頭では理解していても、なかなか平時に繰り返しに行くことは困難だということです。
歯間ブラシも、フロスも、洗口液も、まさしく「歯を磨くように」習慣化させるためにはどうすればよいのか。
ここにドラッグストアは知恵を絞らなければなりません。
リピーターをつくるということは、「新習慣」の提案であり、「新習慣」を定着させるということです。
そのための情報発信、サービス提供を考えることが重要です。
ちなみにドラッグストアでは、「オーラルケア」カテゴリーはロイヤルカスタマーをつくる起点の宝庫です。
一昨年は、「ポケットドルツ」などのヒット商品もありました。ヒット商品があれば、売場への立ち寄り率も増え、関連商品を展開しやすくなります。
なぜロイヤルカスタマーをつくれるのか?「オーラルケア」は、
「生活習慣病対策」と「カウンセリングポイント」になるからです。
とくに高齢者のドライマウスは、肺炎の原因となり、また歯周炎は動脈硬化や心臓病、骨粗鬆症につながるものとして注目されています。
「カウンセリングポイント」は相談やアドバイスのきっかけになるということです。
虫歯予防、歯周病予防はもちろんですが、口臭対策、美白対策も重要な購買モチベーションです。
口臭対策は、30代、40代男性は死活問題です(笑)。これで脅されると関連商品をいっぱい買ってしまいます。
20代もとても「見た目」や「清潔感」を気にします。
女性も肌はきれいなのに、「歯」が残念な人も・・。お顔や肌が美しい人はやはり「歯」もきれいですよね。
大昔流行った「芸能人は歯がいのち」とはよく言ったもんです。
とくに喫煙女子の皆さんはお手入れグッズに手を抜いていませんよね。一度、ポーチの中を見せてもらうといいですよ。たいてい見せてくれませんが、わたしは仕事と称して見せてもらっています(笑)。
ところが、ドラッグストアでは、意外とこういうソリューション目的が明確な世代、層をとりきれていません。
ちなみに、CCLさんの350万人顧客ID付POSデータでは、「虫歯予防」「口臭対策」「歯周予防」「美白」の4セグメント(歯磨き粉、歯ブラシ、洗口液)のうち、
20代男女のうち、対前年比で売上、販売個数をアップさせたのは男性の「美白」しかありません。
ほかはまだまだ意識が浸透していないということが考えられます。
一方で、20代男性の「美白」がとれているわけですから、男性化粧品とのクロスMDは今後さらなるベースアップのための販促ができそうですね。*これは間もなく発売の月刊MD6月号に詳細が載ります。
で、冒頭に戻りますが、
市場リサーチを行って、いままでなかったような使用価値の高い商品を開発するのはメーカーさんのマーケティングです。
そして、店頭にきたお客様のソリューション目的にあう商品をマッチングさせ、継続して買ってもらえるような意識付け情報の発信を行うのがリテール(小売)のマーケティングです。
マッチングさせる、啓蒙する、リピーターになってもらう・・そのために店頭のあらゆるコミュニケーションツールがどんな機能を持ち、成果をもたらすのか。これを把握することが、リテールマーケティングの最大の武器のひとつです。
この2つはどちらが欠けてもだめです。
これが本当の「製配販」の協働であり、ベースとなるのが、「情報の共有」です。
月刊MDではこの新しい協働のための方法論を随時提供していきます。