ライアーゲームでも、シーソーゲームでもなく、
昨日は午後から、麹町の研究開発研究センターにて東大の大澤幸生先生が主催する「イノベーションゲーム」に参加してきました。
大澤先生は、大学院工学系研究科システム創成学のシミュレーション・数理社会デザインコースの主任教授。
おなじシステム創成学の宮田秀明先生のご紹介で、この1年半ほど東大の産学連携本部の研究会に参加させていただいたご縁です。
この「イノベーションゲーム」というのは、キーワード、あるいはキー技術となるものの関係性を「キーグラフ」に落とし込み、キーワード(キー技術)の組み合わせから新たな潜在的文脈(チャンス)を見出します。
こんなふうに、キーワード(キー技術)を組み合わせて、新しい関係性を提示していきます。
これを行うのは、5人の起業家であり、投資家役が、その新しい関係性(ビジネスチャンス)の価値を評価し、起業家のアイデアを買います。ゲームは、起業家の最終手持ち金額の多寡で決まります。
いくつかバリエーションがあり、これに消費者役を加え、消費者がこの新しい関係性(ビジネスチャンス)を消費し、その満足度をプレゼンして、もっとも同意を得られたプレゼン者がゲームの勝者となるパターンもあります。
本日は、大澤先生の強い使命感もあり、時宜を得たテーマ設定で「ロバストシティの構築」。
これは災害に強い街づくりというテーマです。
震災下、震災後の社会、生活をいかに再構築していくかという問題意識です。
今回は、イノベーションゲームの新しいバリエーションで行われました。
「政策的課題の抽出」と「課題解決のための技術組み合わせ、あるいはビジネスモデル」
この2つのイノベーションゲームを同時に行い、
消費者が、たとえば、医師、一般市民、警察、原発関係者、交通業者、航空業界、農家、サービス業、新聞記者、政治家といった「ロール」の立場から、
「政策的課題の抽出」から課題を買い、さらに「課題解決のための技術の組み合わせ、あるいはビジネスモデル」を買うことで課題を解決、その解決内容をプレゼンし、参加者全員が評価するというものでした。
結果は今回「医師」ついで「交通業者」のプレゼンがもっとも評価される形になりました。
「政策的課題の抽出」では、たとえば、医師の場合は、高齢者の心的ストレスを軽減する医療の継続という課題、また航空業界からは訪日観光客をいかに安心させて日本に来てもらうかという課題、交通業者は、いかに被災地の渋滞をなくせるかという課題などが提出されました。
それを、「課題解決のための技術組み合わせ、ビジネスモデル」では、SNS、GPS、遠隔医療、電子カルテ、拡張現実、ウェアラブルコンピュータ、タンジブルユーザーインタフェースなど58枚の要素技術を組み合わせて、上記の課題を解決していきました。
わたしが面白かったのは、実は、このイノベーションゲームの本来の趣旨と異なるのですが、「解決できない」問題が抽出されたことでした。
たとえば、新聞記者の課題は、「どうしたら客観的かつ正確な情報を継続的につかみ、周囲へその情報を納得してもらうか」というものでしたが、起業家側の力がなかったのか、これに対しての有効なモデルは発見できませんでした。*これはかなりレベルが高い問題・・。
また警察の課題は、コストをかけずに、正確かつ迅速な緊急避難支援をおこない、なおかつ治安を維持するというものでしたが、技術のほうは先端テクノロジーの要素が多く、避難や治安というものには「アナログ的」「サバイバル的」要素のほうが重視されたために、こちらも有効なソリューションは見出されませんでした。まあこれも起業家側の力不足かもしれませんね。
わたしは今回「技術組み合わせ」の起業家のひとりとして参加しましたが、新聞記者の課題はある意味普遍的な課題と言えます。単なる技術論では解けない。
警察や消防の緊急避難支援については、「てんでんこ」もあれば「集団移動」もある。「まず自身の安全確保」もあれば「職務としての使命感」もある。これも技術論だけでは解けないでしょう。もっと深い議論が必要です。
しかしながら、5人の起業家のうち、私以外はたぶん学生さんなどお若い方ばかり。中には大澤先生のお弟子さんも含まれ、みなさん「さすが・・」と思うようなプレゼンを行っていました。
ときに学生さんのパワーに触れるような機会をつくることは大事だなあと思いました。大変刺激になりました。貴重な機会に感謝です。
「技術組み合わせ、ビジネスモデル」のイノベーションゲームの結果です。両手に花の大澤先生。右が研究室の代表のおひとりである西原先生。
この「イノベーションゲーム」、実は大澤先生とご縁ができて以来、小売、サービス業のマーケティング教育ツールに使えると思って、機会をうかがっています。
きょうのシナリオに当てはめると、
消費者の課題解決を抽出して、店舗の商品、あるいはサービスを組み合わせる、それを投資家ないし消費者が評価するというものです。
そうすると、小売、サービス業は、自分たちにどんな商品、カテゴリーが不足しているのか、どんなサービスが必要なのかわかるでしょう。
これをゲーム感覚でやるわけです。
小売ならバイヤー、店長がやるといいでしょう。
メーカーならマーケティング担当、販売営業、ブランドマネジャーが参加しても面白いです。
実際、大澤先生の研究室ではこの実績があります。
ラインが異なる職能、別セクション同士がやるとより効果があがるそうです。
ぜひ、小売、流通、サービス業の皆さん、チャレンジしてみませんか?
まさしく「課題とソリューションのチャンス発見」「未来の売れ筋発見」のツールになります。
*大澤先生のご著書に「未来の売れ筋発見学」がありますが、これはこのキーグラフをつかったイノベーションゲームの事例が出ています。
(おまけ)
帰り道の「市ヶ谷」駅。ここからの風景好きです。
名物の釣り堀は満杯でした!
薫風のたそがれ時、太公望呂尚の気分に浸りたかったなあ・・。