月刊MD編集長(2代目)のブログ

きのうは夕方から早稲田大学で、単行本用対談の収録でした。

お相手は、今月上旬にもセミナーでお会いした、商学学術院教授の守口剛先生。


テーマは「リテールマーケティング」。


ショッパーマーケティングとかメーカーマーケティングという言葉はよく耳にしますが、リテールは少ない。


それもそのはず、リテール、とくにDg.S企業はメーカーマーケティングの戦略にそのままのっかるだけというパターンが多かったからです。


なので、小売企業で「マーケティング部」という部署を設置しているところもごくわずか。


もちろん人も育っていません。


ユニクロやニトリなど製造小売はありますが、集荷型小売はさらに絞られます。


でもこれからのマーケティングは、メーカーに加えて、リテールにおける体系づくり、評価方法の確立、人材育成、これらを行うことによって、経験値を蓄積していくことが不可欠。これが、守口先生の主張です。


そうでなければ、メーカー、リテールの協働で「ショッパー(消費者)」に対する提案をおこなう「ショッパーマーケティング」も画に描いた餅です。


ではメーカーと異なるリテールマーケティングの方法とはなんでしょう。


ひとつ例を挙げます。


たとえば、メーカーは高脂血症の消費者をターゲットに、脂肪分の少ない食用油を開発します。


メーカーはマスマーケティングをつかって、脂肪を気にする特定多数のターゲットに向けて情報を発信します。


消費者は、食品スーパーやそのほかチャネルで「そういえばCMしていた商品」「この前検査でひっかかったし・・」ということで購入します。もちろんその気づきを与えるためにPOPなど店内販促物も大規模に投入されます。


リテールは逆です。


たとえば、糖尿病や高脂血症の患者さんが処方箋をもって来店します。


その中で、薬剤師と管理栄養士が食生活の状況をきいて食用油のサンプルをあげます。


ついでにお客様の希望があれば、食事面と運動面で管理栄養士がプログラムをつくります。


メーカーマーケティングはさまざまなチャネル政策で、あるブランド、あるアイテムの販売数量最大化を図りますが、


リテールマーケティングは少量ながら「お客様」の満足を軸に、「売り方」を開発します。


でも、その企業との取引数は少量でも、高脂血病患者に対して自社のあるブランドの食用油が売れることがわかれば、そのメーカーは全国にその実例を広げるでしょう。


これはこれまでのメーカーとリテールの取引慣習をひっくり返す可能性もあります。


これまでは、店舗数、販売数量で原価が決まりました。


リテールマーケティングが機能する世界では、店舗数、販売数量が少なくても、こうやれば売れるという方法を提示することによって、原価設定に影響を及ぼすことができます。


本来は米国のようなロビンソン・パットマン法(規模や取引金額の多寡で原価を決めない)があれば、こんなことはないのですが、現状では、小が大に対抗していくやり方としてはベストです。


対談は、医療マーケティングの可能性にも及びました。


医師や看護師といった医療従事者は、あまりマーケティングという言葉になじみません。


やはり患者の命を救うという崇高な使命がありますから、こうやったら患者が増えるとか、もっとも客単価の高い患者は誰・・なんてやりだすと、許されない雰囲気があります。*まあけっこうやっていますけどね。


その中で、医療従事者のひとりとして、薬剤師はマーケティングに近い位置にいるのではないか。


マーケティングの役割は、


お客様がなにに困っていて、


どうやったら相手が喜び、


それをどう伝えるか。ということです。


先ほどの、高脂血症の処方箋をもってきた人への食生活改善の提案や運動方法の提示は、まさしくこれにあたります。


それで物販も動くし、バイタルチェックをおこなうことによって、状況によっては受診勧奨もおこなう。ある意味、医師へ患者を提供することになります。


サンキューの平野社長は、そういった互恵関係を地域で築くことによって薬剤師がインフルエンザの注射が打てるようにするといった職能開発の必要性を訴えています。


この医療マーケティングの分野は、未知のフロンティアです。


そのためにも、リテールマーケティングの分野に人材が必要。


守口先生のように、大学教育にかかわる方のお力も必要です。


(おまけ)


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きのう東京は春一番が吹きました。

暖かな1日でしたね。


大隈講堂がきれいだなあと思って、写真をとっていたら、そのうしろに


まったく私と同じ行動をしている平野社長が・・(笑)。


対談後は、打ち上げの一杯。


あっという間に時間は過ぎていきました。