古くて新しいテーマです。
すこし前になりますが、東大の工学系大学院システム創成学の宮田秀明先生は、この分野でとても有益なサジェスチョンを発信され、わたしも勉強させていただきました。
有難いことに、その後、先生の紹介で東大のサービス領域における産学連携プロジェクトに関わることができました。これもとてもいい経験をさせていただきました。
東大の理系のしかもトップクラスの先生が流通、サービス分野に関わるのは珍しいかもしれません。
先生のご専門は船舶。かつてヨットレースの最高峰アメリカズカップで日本代表のテクニカルディレクターを務め、この分野ではまったく歯が立たなかった代表を2位まで押し上げた人です。
現在は、電気自動車普及のための日本版スマートグリッド、燃料電池研究の第一人者でもあります。
日経ビジネスオンラインで「理系の経営学」を連載されていますので、ご存じの方も多いでしょう。
書籍流通改革や大手飲料メーカーと組んだ自動販売機ロジスティクス改革などに取り組まれ、ある意味、いまだ「暗黒大陸」的な流通やサービスの世界に、IT、数理活用の新しい視点を導入しました。
そのひとつが「ネットと店舗の融合」と「顧客満足」の科学です。
数ある店舗でもカウンセリング機能や、コンシェルジュ機能を持つ流通いまだ少ないですね。
店舗は本来、来店するお客様の課題解決を提供するものですから、こちらの機能を磨きたいものです。
ですが、実際はなかなか間接業務(品出しやレジ打ちなど)に追われて、時間がとれません。*誤解のないように申し上げますが、レジも顧客満足を左右する重要な場所です。
そこで、コモディティに関わる部分はネットの利便性を生かし、店舗はコンシェルジュ機能を残す。これが一体になったサービスを目指す。
書店では本のコンシェルジュがいて、お茶も飲める。ただし買いすぎたら、ネット経由で家に届けてもらえる。本だけでなくて文具など書斎にかかわる商品もネットで補給すれば助かります。店舗でプリンターのインクだけ買うのは高くてばからしいですよね・・。
ドラッグストアでも、化粧品の新商品はカウンセラーと店舗でいろいろ相談し、試せる。お出かけ前にネイルもやってもらう。でもトイレットペーパーや牛乳など必需品は、あとで家に届けてもらう。
ネットスーパーとは全く異なる発想です。ようは店舗にどんな機能を残すか。ネット宅配になにを任せるか。
ここで知恵をつかうわけです。
精米したての10キロサイズのお米をむこう30キロ分予約する。しかも産地直結で。
こういう売り方はネットのほうがいいですよね。
でもいっぺんに届けると家庭内在庫が増えてしょうがない。だから都度、食べる分量だけ精米して配達してくれる方がありがたいですよね。そうなるとロジの設計(生産、流通)をどうするかということがとても重要になってきます。
最近家事手伝いサービスも増えています。これは家庭の消耗品(洗剤や電球など)の補充を担う物流とリンクしなければ意味がありません。
ネットとリアル店舗の融合は、まさしく文系の想像力と理系の制度設計力の融合です。*文系理系でくくるのもナンセンスですが、あえて・・。
アカデミズムと小売業のコラボはもっと進めていくべきです。
月刊MDにとっても大事なテーマのひとつです。